事業を行う上では、起業・開業時にも多くの資金が必要となります。
資金調達というと、銀行のような金融機関からの融資を連想する方が多いかもしれません。しかし、資金調達は、融資以外にもさまざまな方法があり、自社に合った方法を選ぶことが大切です。
そこで今回の記事では、起業・開業時や経営で役に立つ資金調達方法について解説します。
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起業・開業時の主な資金調達方法とは?
起業・開業時に利用できる資金調達方法には、融資以外にも出資や補助金・助成金、資産の現金化などがあります。
この中でどの資金調達方法が適しているかは、事業内容や規模によって異なります。
一例として、これから起業する個人や実績の少ない個人事業主であっても、制度融資や信用金庫であれば、融資を受けやすくおすすめです。
具体的な資金調達方法は後述するため、選ぶ際の参考にしてみてください。
起業・経営の資金調達方法【借入れ・融資】
借入れ・融資による資金調達は、銀行だけでなく制度や公庫など、複数の方法があります。
これらの資金調達方法について、詳しく解説します。
制度融資
制度融資は、地方自治体と金融機関、信用保証協会が連携して提供している融資制度です。
特に中小企業や個人事業主が利用しやすいようになっており、審査ハードルが比較的低く、低金利かつ最長10年の長期返済にも対応しているのが特徴です。
制度融資では、行政が支払利息・保証料の一部を補助してくれる場合もあります。創業前でも申し込みできるほか、経営相談に乗ってくれるケースもあり、これから事業を立ち上げる方には心強いでしょう。
しかし、複数の機関が関与する関係で融資決定が遅れやすいため、余裕を持って申請するようにしましょう。
銀行からの融資
銀行からの融資は、審査に通れば必要な資金を調達でき、多額のキャッシュを確保できます。
経営への介入がないほか、顧客・ビジネスパートナーの紹介や情報提供を受けられます。さらに、返済スケジュールが明確なため、資金計画を立てやすいこともメリットです。
しかし、銀行は借り手の信用情報や事業計画の内容を厳しく評価するため、起業直後の実績が少ない状態で融資を受けるのは容易ではありません。
もし、起業時に銀行から融資を受けたいのであれば、大手銀行ではなく地方銀行に相談した方が、融資を受けられる可能性が高くおすすめです。
信用金庫
信用金庫は地域密着型の金融機関で、中小企業を主な対象としてサービスを提供しています。
地域の方々で構成される信用金庫の会員から出資金を集め、それを元手として企業への融資を行います。
地域の活性化を目的として設立されたため、特に地域密着型の企業には、積極的に融資を実施する傾向です。
なお、信用金庫の融資は原則会員の方が対象ですが、700万円以内の小口融資は、会員以外に方も利用可能です。
公庫融資
公庫融資は、日本政策金融公庫が提供する融資制度のことで、創業支援や中小企業の事業支援などを重点的に実施しています。
日本政策金融公庫では、さまざまな融資を用意していますが、これから起業する場合は「新規開業・スタートアップ支援資金」の利用がおすすめです。
起業したばかりで銀行からの融資が難しい場合でも、事業を始めるための設備資金や事業運営に必要な運転資金の融資を受けられます。
限度額は、最大で7,200万円(そのうち運転資金が4,800万円)で、返済期間は運転資金が最長10年、設備資金が最長20年と長く設定されています。
さらに金利は1~3割程度と低めに設定されているため、起業直後の資金繰りの負担を軽減できるでしょう。
なお、融資を受けるためには審査を通過しなければならず、事業計画書の作成や面談などの準備が必要です。
審査には約2週間程度の時間がかかるため、余裕をもって申請するようにしましょう。
出典:「新規開業・スタートアップ支援資金」(日本政策金融公庫)
マル経融資
マル経融資は、日本政策金融公庫が提供する、小規模事業者を対象とした無担保・無保証人の融資制度です。
正式名称は「小規模事業者経営改善資金」で、商工会議所や商工会の経営指導と推薦を受けている小規模事業者が利用できます。
融資限度額は最大2,000万円で、運転資金と設備資金の両方に使用でき、返済期間はどちらも10年以内と定められています。
しかしマル経融資は、同一会議所の地区内で1年以上事業を実施していなければ、融資を受けられません。
そのため、起業から1年が経過し、融資が必要になった際に検討しましょう。
起業・経営の資金調達方法【出資】
起業・経営の資金調達には、出資を受けるという方法もあります。ここでは、出資による資金調達方法について解説します。
従業員持株会
従業員持株会は、従業員が自社の株式を定期的に購入し、積み立てていく制度です。
従業員の福利厚生として導入されることが多いですが、企業側にとっても、安定的な資金調達の手段として活用できる利点があります。
しかし、業績悪化で株式が下落したり配当を維持できなくなったりすると、従業員のモチベーションが低下するおそれがあるため、制度導入には注意が必要です。
他企業からの出資受入
他企業からの出資受入は、外部の企業から出資を受ける資金調達方法です。資金を提供してもらう代わりに、資金相当の自社株式を譲渡します。
一般的に出資は、相乗効果が見込める企業や、自社の技術・ノウハウに興味を持つ企業から受けます。そのため、資金の確保だけでなく、経営資源の共有や販路拡大などの効果も期待できるでしょう。
しかし、株式の出資比率のうち自己資本が50%を超えると、経営権を取られるおそれがあります。そのため出資者とは、譲渡比率について十分に交渉しましょう。
ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタル(VC)とは、成長が期待される未上場のベンチャー企業や、スタートアップ企業への投資を専門とする企業のことです。
ベンチャーキャピタルからの出資は、事業の将来性によっては多額の資金調達が可能です。また、出資を受けることで社会的な信用が高まり、他の手段での資金調達がしやすくなる効果も期待できます。
資金提供以外にも、ベンチャーキャピタルによる成長支援をとおして、経営ノウハウを学べるのも利点です。
しかし、ベンチャーキャピタルは、出資先企業の迅速な成長を望むため、経営へ介入するおそれがあります。出資を受ける際に株式の一部を譲渡する必要もあるため、経営権に影響を与える可能性も考慮しなければいけません。
エンジェル投資家
エンジェル投資家は、将来性の高い企業やスタートアップ企業に対して資金を提供する、個人の投資家です。
出資額は数百万円から数千万円規模と幅広く、起業直後で実績が少ない状態でも、資金を調達できる可能性があります。
さらに、エンジェル投資家には、自らも経営者として成功した方が多く、投資時に優秀な人材や取引先などを紹介してもらえるかもしれません。
しかし、エンジェル投資家は、自らが得られるリターンを高めるため、経営に介入するおそれがあります。
どの程度経営に介入するかは、株式の取得割合が大きく影響します。そのため、エンジェル投資家から出資を受ける場合は、投資額や株式の取得割合、投資期間といった出資条件について慎重に決めることが重要です。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、実現したい事業をプロジェクトとして掲げ、WEB上で不特定多数の方から資金を調達する方法です。
クラウドファンディングを活用することで、金融機関からの融資や投資家からの出資を受けにくい初期段階でも、事業資金を調達できる可能性があります。
さらにクラウドファンディングは、テストマーケティングの手段としても有効です。プロジェクトへの支援状況や支援者からのフィードバックを通じて、商品の改善点を見つけたり、顧客のニーズを把握したりできます。
しかし、クラウドファンディングは、支援金が集まらず資金調達に失敗するおそれもあります。そのため確実な資金調達方法とはいえませんが、選択肢の1つとして検討するのも良いでしょう。
起業・経営の資金調達方法【補助金・助成金などの制度】
補助金・助成金などの制度を活用することで、起業したてでも資金調達が可能です。
具体的にどのような制度があるのか、詳しく解説します。
創業向けの補助金・助成金
創業向けの補助金・助成金を使うことも、資金調達の方法の1つです。これから起業する場合は、以下のような補助金・助成金を利用できます。
・ものづくり補助金
・中小企業新事業進出補助金
・小規模事業者持続化補助金
・事業継承・M&A補助金
・キャリアアップ助成金
いずれも雇用促進や職場改善などの活動を支援するために支給されるもので、融資と違い返済は不要です。
また、東京都中小企業振興公社が実施している「創業助成事業」のように、各都道府県ごとに設けられている創業者向けの補助金・給付金もあります。
そのため、起業しようとしている地域で利用できる制度はないか、調べてみると良いでしょう。
再就職手当
再就職手当は、雇用保険で設けられている「就業促進手当」の1つで、ハローワークに問い合わせることで手続きできます。
実は再就職手当は、これから起業する方も受け取れます。「待機期間の満了後に、就職もしくは事業を開始したこと」が条件の1つであるため、起業する場合も条件を満たせば受給可能です。
起業資金として直接利用することはできませんが、起業の準備資金として活用することは問題ありません。
しかし、自己都合の退職である場合は、待期期間の7日とその後1ヶ月を過ぎなければ、再就職手当の対象にならない点に注意しましょう。
出典:「再就職手当のご案内」(厚生労働省)(https://www.lcgjapan.com/pdf/lb05414.pdf)
起業・経営の資金調達方法【資産の現金化】
資産の現金化は、経営維持や事業の転換に有効な資金調達方法です。ここでは、資産の現金化の具体的な方法について、詳しく解説します。
自己資金
自己資金は、起業や経営において最も基本的な資金調達方法で、事業を始める上での基盤となるものです。返済義務や金利がなく、資金調達先とのトラブルも発生しないというメリットがあります。
金融機関からの融資や投資家からの出資を受ける際にも、自己資金の額は信用力を測る上で重要な指標です。
しかし、自己資金には限りがあるため、事業計画を慎重に策定し、資金を効率的に活用する必要があります。
手形割引
手形割引は、約束手形(※)を銀行に買い取ってもらい、期日前に現金化する手続きのことです。
一般的に約束手形の期日は、3~4ヶ月後に設定されていることが多数です。通常、期日までは現金化できませんが、手形割引を行うことで、期日より早く資金を得られます。
しかし、手形割引には手数料(割引料)が発生するため、約束手形の額面金額よりも少ない金額しか受け取れません。
そのため、急な資金需要が発生した場合や、支払いに必要な資金を早めに確保したい場合などに活用すると良いでしょう。
※期日までの所定金額の支払いを約束する有価証券を指します。
資産の売却
資産の売却は、企業が保有する不要な資産を売却し、現金化する資金調達方法です。機械設備や土地など、さまざまな資産が売却対象で、市場価値の高い資産ほど、多くの資金を調達できます。
また、資産の売却は、財務状況の改善や経営効率の向上にもつながります。一例として不要な不動産を売却した場合、維持費や管理費などを削減可能です。
しかし、資産を希望の金額で売却できなかったり、買い手が見つからず売却に時間がかかるおそれがあるため、注意が必要です。
ファクタリング(売掛債権)
ファクタリングは、企業が保有する売掛金をファクタリング会社に譲渡し、期日前に現金化する資金調達方法です。売掛金の額面金額から、手数料を差し引いた金額を企業に支払い、売掛金を現金化します。
一般的に売掛金の入金には、約30~60日かかるため、売上はあっても資金繰りがうまくいかないケースも多い傾向です。
しかし、ファクタリングを使うと売掛金を早期現金化できるため、資金繰りが安定し経営の健全化が期待できます。
M&A・事業譲渡
M&Aは企業の合併・買収、事業譲渡は一部の事業を売却によって、資金を調達する方法です。
一度に多くの資金を得られるほか、獲得した資金をもとに事業拡張を図ったり新事業を立ち上げたりできます。
しかし、M&Aや事業譲渡は、非常に複雑な手続きを伴うため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進める必要があります。
また、従業員の雇用維持や取引先との関係維持など、さまざまな調整が必要となることも念頭に置いておきましょう。
リースバック
リースバックは、所有している不動産を売却した後、同じ不動産を賃貸契約で利用するサービスです。
資産を売却することでまとまった資金を調達しつつ、事業に必要な資産として継続して利用できます。
また、法人が利用する場合、資産の買い戻し(バック)が可能なケースが多数です。例えば業績が回復した段階で、賃貸契約していた物件を買い戻すこともできます。
リースバックを利用する際には、資金調達のメリットだけでなく、将来的な資産価値の変化なども考慮し、慎重に検討しましょう。
起業・開業時の資金調達における注意点
起業・開業時の資金調達には、重視しなければ失敗につながる注意点があります。
どのような点に注意すべきなのか、詳しく解説します。
事業の信頼性
金融機関や投資家は、事業計画や返済能力などを厳しく審査し、事業が成功するかを見極めようとします。そのため、資金調達を行う上で、事業の信頼性が非常に重要となります。
信頼性を高めるためには「綿密な事業計画の作成」「競合の状況把握と分析」などが必要です。客観的なデータに基づき、事業の将来性を説明できますと、事業の信頼性が高まるでしょう。
また、経営者の過去の実績も重要な判断材料です。事業経験が豊富な経営者や、業界知識を持つ経営者は、高い信頼を得られるでしょう。
自社に合った方法の選択
自社の状況や事業計画に合った方法を選択することが、資金調達を成功させるための重要なポイントです。
例として起業・開業時は、補助金・助成金や日本政策金融公庫から融資が受けやすく向いています。一方起業から一定期間経過し成長段階にある企業は、銀行融資やベンチャーキャピタルからの出資での資金調達も1つの手です。
自社の状況を客観的に分析した上で、最適な資金調達方法を選択しましょう。
資金調達額を明確にする
資金調達を実施する前に、必要な金額を明確にしておくことが重要です。
過剰な資金調達は、融資であれば返済負担を増やし、出資であれば経営の自由度を低下させるなど、経営を圧迫する要因になりかねません。
逆に資金が不足していますと、事業計画の実行が困難になったり、経営危機に陥ったりするおそれもあります。
効率的な経営を実現するため、必要な資金調達額は慎重に検討しましょう。
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まとめ
今回は、起業・経営において有効な資金調達方法について解説しました。
資金調達にはさまざまな方法があり、どの方法が合うかは、事業内容や規模などによって異なります。
過剰な資金調達や資金不足を防ぐには、事業計画をしっかり立て、必要な費用を見積もることが重要です。
今回の記事を参考にした上で、自社に合った資金調達方法を選択しましょう。