副業で一定額以上の収入を得ると、確定申告が必要になります。
しかし、副業を始めたばかりの方の中には、「どのくらい稼いだら確定申告が必要になるのか?」や「申告はどうすればいいのか?」といった疑問を抱えている方も多いことでしょう。
そこで、今回は、副業を行う際に知っておくべき確定申告の必要性や申告方法について、詳しく解説いたします。
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副業の所得は確定申告が必要?
会社員やアルバイト、パートタイムなどの「給与所得者」が、副業で年間20万円を超える所得がある場合、確定申告が必要です。
本業の勤務先で年末調整を受けていても、副業の所得については別途確定申告を行う必要があります。
確定申告を忘れると、納めるべき税金に加えて、加算税や延滞税が課されることがあるため、注意が必要です。
副業所得が20万以下でも確定申告が必要なケース
副業所得が20万円以下であっても、確定申告が必要となる場合があります。
例えば、住宅ローン控除や医療控除を受ける場合、税金の還付を受ける場合、またはインボイス登録をしている場合などが該当します。
ここでは、これらの3つのケースについて詳しく解説します。
1.住宅ローン控除・医療費控除などを受ける場合
住宅ローン控除や医療費控除を受ける場合、確定申告を行うことで納めすぎた税金が戻ることがあります。
まず、住宅ローン控除についてですが、住宅ローンを利用してマイホームを購入またはリフォームした場合、一定の条件を満たすと所得税が減額される制度です。
さらに、前年分の所得税で控除しきれなかった分については、翌年の住民税で控除を受けることができる場合もあります。
2年目以降は勤務先の年末調整で手続きが可能ですが、初年度は確定申告を行う必要があります。
次に、医療費控除は、1年間(1月1日から12月31日まで)の医療費が一定額を超えた場合に適用される所得控除です。
この控除は、本人だけでなく、同一生計の配偶者や子どもが支払った医療費も対象になります。
医療費控除は年末調整では手続きできないため、副業で得た所得の有無に関わらず、確定申告を行う必要があります。
2.税金の還付を受ける場合
確定申告を行うことで、税金が還付を受けられる場合があります。
例えば、副業がパートやアルバイトで、給与所得を得ている場合、副業先で年末調整が行われていないと、実際に納めるべき税金よりも多く税金を払っている可能性があります。
そのため、確定申告をすることで、納めすぎた税金が戻ってくることがあります。
3.インボイス登録をしている場合
インボイス制度に登録している場合、副業の所得額に関係なく、消費税の確定申告が必要です。
通常、所得が1,000万円以下であれば消費税の納税義務は免除されますが、インボイス制度に対応するために「適格請求書発行事業者」として登録すると、課税事業者となり、消費税を納めることになります。
そのため、インボイスに登録している場合は、所得税の確定申告に加えて、消費税の確定申告も行う必要があることに注意しましょう。
副業所得の確定申告時の所得区分
副業でフリーランスや自営業を行う場合、確定申告が必要です。この場合、確定申告の区分は「雑所得」または「事業所得」になります。
一見すると似ているように思えますが、実際には大きな違いがあります。ここでは、この2つの所得区分について詳しく解説します。
雑所得・事業所得
雑所得とは、ほかの9種類の所得に該当しない所得から必要経費を引いた金額のことです。在宅ワークなど、多くの副業は雑所得に分類されることが一般的です。
一方で、事業所得は、農業や製造業、卸売業、小売業など、事業主自身が独立して行う事業から得た収入から必要経費を引いた金額です。
雑所得と事業所得の違いは、事業の継続性や費やす時間などを総合的に判断して決まります。副業が「事業所得」とみなされるかどうかは、この基準に基づいて判断されます。
副業で必要経費として計上できるもの
収入を得るためにかかった経費、またその年に生じた販売費や一般管理費などが計上できます。
具体的には、以下のような費用が該当します。
雑所得で計上できる経費の例
・集客のために使用した広告宣伝費
・事業で使用するパソコンやソフトウェアの購入費、インターネット回線などの通信費
・水道光熱費や家賃の一部
・セミナーで利用する貸会議室の使用料
帳簿への保存がない場合は雑所得になる
年間収入が300万円以下で事業所得として申告する場合、帳簿や書類を作成し、保存しておく必要があります。(※)
つまり、本来事業所得に該当する場合でも、請求書や領収書などを整理して帳簿を保存していないと、雑所得とみなされることがあります。
さらに、事業所得は雑所得とは異なり、青色申告特別控除を利用できるため、節税効果を得られるメリットもあります。
雑所得の場合でも、売上から経費などを差し引いて所得を計算する必要があるため、帳簿をつけておくことで確定申告がスムーズになります。
そのため、毎月の経費や収支を帳簿に記録し、きちんと保存しておくことをおすすめします。
※2022年以降は副業所得が年間300万円を超える場合は雑所得でも帳簿の保存が義務化されています。
副業所得が20万超えてるのに確定申告しないとどうなる?
副業所得が20万円を超えているにもかかわらず確定申告をしない場合、ペナルティを受けるリスクがあります。
無申告加算税が課せられると、本来支払うべき金額よりも多く支払うことになり、延滞税が発生すると、支払う金額が延滞の日数だけ増加していきます。
ここでは、これら2つのペナルティについて詳しく解説します。
無申告加算税に該当すると税額が15~20%加算
無申告加算税とは、納付すべき税額に対して科されるペナルティです。原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分には20%の割合で課税されます。
なお、確定申告の期限(例年3月15日)を過ぎても、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告を行った場合、無申告加算税の割合は5%に軽減されます。
ただし、2017年以降に法定申告期限が到来したものについては、調査の事前通知後に申告すると、無申告加算税の割合が増加するため注意が必要です。
また、申告期限から1か月以内に申告し、納付すべき税額の全額を法定納期限(税金を納めるべき期限)までに納付した場合、無申告加算税は課されません。
法定納期限については、国税庁のWebページで確認できます。
延滞税に該当すると日数に応じて税額が加算
確定申告を行わず、税金が定められた期限内に納付されない場合、無申告加算税に加えて、延滞税が課されることにも注意が必要です。
延滞税は、法定納期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じて、所定の割合で課税されます。つまり、納付が遅れるほど、延滞税が高額になるため、早めに対応することが重要です。
延滞税の具体的な割合については、国税庁のWebページで確認できます。
副業以外で確定申告が必要なケース
副業以外でも確定申告が必要な場合があります。ここでは、年収が2,000万円を超える人と、ふるさと納税を利用して寄附金控除を受ける人の2つのケースについて解説します。
1.年収が2000万円を超えている
会社員としての年収が2,000万円を超える場合、年末調整を個人で行う必要があります。
これは、会社が年収2,000万円を超える人に対して年末調整を行えないためです。そのため、確定申告を自分で行うことが所得税法により義務付けられています。
国税庁のWebページにも、確定申告が必要な会社員として「給与の年間収入金額が2,000万円を超える人」と明記されています。
2.ふるさと納税後の寄附金控除を受け取る場合
ふるさと納税を行った後、寄附金控除を受けるには確定申告またはワンストップ特例制度の申請が必要です。
ただし、ワンストップ特例を利用できるのは、すべての人ではなく、条件を満たさない場合もあります。その場合、寄附金控除を受けるためには、確定申告が必要となります。
国税庁のWebページにも、ふるさと納税の寄付控除について詳細な手順が解説されています。
副業所得が20万超えの場合は青色申告?
副業所得が20万円を超えた場合、確定申告は必要ですが、青色申告を行う義務はありません。
ただし、青色申告には白色申告と比較して多くのメリットがあります。そこで、ここでは青色申告のメリットや事前準備について詳しく解説します。
青色申告のメリットとは
青色申告とは、事業に関するすべての支出と収入を正確に記帳し、その内容を基に申告する方法です。この方法では帳簿の信頼性が高いため、日本政府も青色申告を推奨し、以下のような特典を提供しています。
青色申告のメリット
・青色申告特別控除が受けられる
・青色事業専従者給与を経費として計上できる
・純損失の繰越控除や繰戻し還付が受けられる
・少額減価償却資産の特例が利用できる
中でも、青色申告特別控除は最大65万円の節税効果を期待できるため、非常に大きなメリットです。
さらに、1年のうち6ヶ月以上青色申告者の事業に従事していれば、生計を共にする15歳以上の親族に支払う給与を経費に計上することができます。
また、所得が赤字だった年には、その赤字を翌年以降の3年間にわたって黒字から控除することができるため、節税効果が大きいと言えます。
最近では、会計ソフトと連携できる個人事業主用の銀行口座も登場し、帳簿作成が以前よりも簡単になっています。
青色申告は青色申告承認申請書の提出が必要
事業開始時から青色申告を行いたい場合は、「開業届」と「青色申告承認申請書」の両方を提出する必要があります。
開業届は、個人事業主として事業を始めたことを税務署に知らせるための書類です。
青色申告承認申請書は、青色申告を希望することを税務署に申し出るための書類で、その年の3月15日までに管轄の税務署に提出しなければなりません。ただし、その年の1月16日以降に開業した場合は、開業日から2か月以内に提出すれば問題ありません。
また、最近では専用のクラウドサービスを利用して、開業届や青色申告承認申請書を簡単に作成することができます。
これらのサービスを活用すれば、申請手続きがスムーズに進みますので、ぜひ利用を検討してみてください。
副業の確定申告に関するよくある質問
ここでは、副業で確定申告を行う際によくある質問をまとめました。
副業でいくら稼いだら確定申告が必要になりますか?
副業で確定申告が必要になるのは、副業で得た所得が年間20万円を超えた場合です。
副業の種類によって異なりますが、アルバイトなどの給与所得でも、フリーランスのような報酬形態でも、いずれも20万円を超えた場合は確定申告が必要です。
例えば、本業の会社以外でアルバイトなどの給与所得を得ている場合、その年間所得が20万円を超えると確定申告を行う必要があります。
一方で、副業でフリーランスとして報酬を得ている場合、経費を差し引いた後の所得金額が年間20万円を超えた場合に確定申告が必要です。
また、医療費控除や寄付金控除など、副業以外の控除を受けたい場合も、年末調整では対応できないため、確定申告が必要となります。
副業で青色申告を行うメリットとデメリットとは?
副業で青色申告を行う最大のメリットは、65万円の青色申告控除が受けられることです。
その他にも、青色事業専従者給与を必要経費として計上できる、貸倒引当金の計上、損失の繰越控除や繰戻しによる還付を受けることができるなどのメリットがあります。
一方で、デメリットとしては、帳簿作成や事前申請に手間がかかることが挙げられます。
青色申告をするためには、複式簿記による帳簿の作成や、優良な電子帳簿保存を満たす必要があり、また、「開業届」や「所得税の青色申告承認申請書」の事前提出が必須となります。
出来れば副業が会社にバレたくないのですが...
フリーランスなど雑所得の副業であれば、確定申告の際に「自分で納付する」を選ぶと、住民税の納付書が自宅に届くため、会社にバレにくくなります。
一方、給与所得者の場合は納付方法を選べず、住民税は会社が納付します。このため、住民税の金額が変動していることが発覚すると、会社に副業がバレる可能性が高くなります。
とはいえ、内緒で副業を行うことはあまり好ましくありません。特に、会社と良好な関係を維持したいのであれば、まずは上司や担当部署に相談することをおすすめします。
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※2023年10月~2024年9月のデータです。
まとめ
今回は確定申告について詳しく解説しました。
副業で年間20万円を超える所得がある場合、基本的には確定申告が必要です。
業種によっては白色申告のほうが手軽ですが、青色申告には最大65万円の控除など、多くのメリットがあり、国も青色申告を推奨しています。
また、確定申告で青色申告を行う場合、事前の申請や個人事業主用の口座の準備、会計ソフトの連携などを行うと、申告作業が非常に楽になります。
これから確定申告を考えている方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。