環境問題への意識の高まりや商品に対する低価格志向により、近年はリサイクル市場が活発化しています。非常に伸びしろのある業界であるため、転職や起業を検討している方も多いでしょう。
しかし、いくら魅力的な業界といわれても、特徴や業界の内情がわからなければなかなか踏み出せないものです。そこで、今回はリサイクル業界の動向やビジネススキーム、業務内容について解説します。
目次
「リサイクル業界」とは
リサイクル業界とは、不用品の買取や再販売を通して利益を得る産業のことです。
厳密には、不用品を原材料として新しい製品を作り出すことを指します。一方、不用品をそのままの形で安価に販売するのは「リユース事業」に該当します。
多くのリサイクルショップは「リサイクル」という名前を使っているものの、実際にはリユース事業を行っていることがほとんどです。しかし、リサイクル事業とリユース事業の区別は曖昧で、両者を合わせて「リサイクル業界」と呼ぶことも少なくありません。
この業界の形態は大きくわけて「不用品回収業者」と「リサイクルショップ」の2つがあります。それぞれの事業内容には違いがありますが、どちらも不用品を取り扱い、新たな価値を生み出すことを目的としています。
リサイクル業界は比較的新しい業界ですが、近年の環境問題への関心の高まりやエコブームの影響を受け、市場規模は拡大を続けています。将来性のある産業として注目されているのです。
リサイクル業界の現状と将来性
リサイクル業界の現状と将来性について興味がある方も多いでしょう。
前述の通り、業界全体は好調であるとされていますが、今後の就職や転職、起業を考えているなら、具体的なデータや背景を理解しておくことが重要です。以下では、第三者機関の客観的なデータに基づき、リサイクル業界が好調である理由を解説します。
将来性がある!リサイクル業界の市場規模と動向
リサイクル業界の市場規模の動向と将来性については、特に「中古市場業界」の拡大と「素材リサイクル事業」に注目が集まっています。ここでは、この2つの要素について詳しく説明します。
・中古品市場
環境省が発表した『令和3年度 リユース市場規模調査 報告書』によると、2016年の中古品における年間商品販売額は4兆1,275億円に達しました。
そのうち、中古自動車小売業が82.7%を占め、圧倒的なシェアを誇っています。次いで、骨とう品を除く中古品小売業が10.9%、古本小売業が3.1%、中古電気製品小売業が1.8%となっています。
参考元:環境省「令和3年度 リユース市場規模調査 報告書 3)データの概要(市場全体) ① 年間商品販売額 」p9
特に中古自動車小売業は、2014年の2兆4,935億円から2016年には3兆4,142億円へと右肩上がりで成長しており、古本小売業も2014年の871億円から2016年には1,274億円に増加しました。また、中古品小売業(骨とう品を除く)も、2012年には2,435億円でしたが、2016年には4,490億円へと急成長を遂げています。
品目ごとに規模の差はあるものの、リユース市場全体が着実に拡大していることは明らかです。
参考元:環境省「令和3年度 リユース市場規模調査 報告書 4)データの概要(業種別)」p14~p15
・素材リサイクル
鉄くずやレアメタルなどの素材リサイクルや太陽光発電などの再生可能エネルギーもリサイクル事業の一環として注目されています。
特に素材リサイクル市場は、国内外で資源としての重要性が一層高まっています。
環境省が2018年に公表した『海外展開戦略(リサイクル)』によれば、国内のリサイクル素材市場は2015年の時点で約8.5兆円に上り、2050年にはその市場規模が約15兆円にまで拡大すると予測されています。
このデータからも、素材リサイクル業界が今後も大きな成長を遂げる見込みがあることは明らかであり、その将来性は非常に高いと言えるでしょう。
参考元:環境省「海外展開戦略(リサイクル) 1(3)我が国のリサイクル市場の動向」p3
不況に強く安定性も高い!
リサイクル業界は、不況にも強い産業として広く知られています。
一般的な業界では、世界的な不況が起こると業績が急激に落ち込みます。たとえば、2008年のリーマンショックや、2020年のコロナショックでは、多くの業界が大きなダメージを受けました。
しかし、リサイクル業界はその影響を比較的軽微に抑え、倒産に追い込まれる企業は少数にとどまりました。この理由として、不況時には消費者が経済的に節約を意識し、手持ちの不要品を売却したり、中古品の購入を選んだりする傾向が強まることが挙げられます。
新品よりも安価で品質に問題のない中古品が求められるため、リサイクル業界の需要が安定し、ときには増加します。
そのため、リサイクル業界は景気に左右されにくく、特に不況時にその力を発揮する業界と言えるでしょう。
下記の記事ではコロナ禍における買取市場の成長について詳しく説明しています。
リサイクル業界が好調の理由
リサイクル業界が好調である理由として、以下の2つの要素が挙げられます。
・フリマアプリなどによる個人間取引の増加
・「エコ」や「SDGs」といったトレンドの影響
オークションサイトやフリマアプリの普及により、手軽に中古品を取引できるようになりました。また、政府主導のエコ活動が進むことで、再利用への意識が非常に高まっています。ここでは、これらの2つの理由について詳しく解説します。
フリマアプリなどによる個人間取引の増加
リサイクル業界の市場拡大には、フリマアプリやネットオークションの普及も重要な要因として挙げられます。
2023年に経済産業省が発表した『電子商取引に関する市場調査』によると、CtoC-EC(消費者間取引)市場の規模は、2021年の2兆2,121億円から2022年には2兆3,630億円に成長しています。この成長を牽引した主な要因が、フリマアプリの市場拡大です。
参考元:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書 第5章国内 CtoC-EC 市場実態 」p71
フリマアプリが初めて登場したのは2012年頃で、その後、個人間取引が急増し、現在の巨大な市場が形成されました。特に、エコ志向や低価格志向の高まりにより、中古品の売買に対する抵抗感が薄れ、多くの人々が気軽に中古品を購入・販売できるようになっています。
また、フリマアプリやネットオークションでは、自動車や電化製品、ファッションアイテムまで幅広い商品が取引されており、これがリサイクル業界全体の市場拡大に大きく貢献しています。
「エコ」「SDGs」というトレンド
リサイクル市場の好調が続く背景には、「エコ」や「SDGs」といった取り組みが大きく関係しています。
「エコ(エコロジー運動)」を通して自然環境保全への意識が高まり、持続可能な発展が重要視されています。また、国連(国際連合)が採択した「SDGs(持続可能な開発目標)」で、12番目に掲げられる「つくる責任・つかう責任」は、持続可能な生産と消費を推進することを目的としています。
こうした取り組みや意識の高まりは、日本でも政府主導で進められており、消費者の間では「もったいない精神」や「再利用を重視する意識」が広がっています。これにより、リサイクル業界は環境保全と持続可能な消費の理念に合致し、社会的な重要性が高まっているのです。
世界的な環境問題への取り組みが今後も続くと予想される中、リサイクル市場はその公共性と需要を背景に、引き続き成長が期待されています。
リサイクル業界へ参入したい!リサイクル業の種類
リサイクル業界に参入したい方におすすめの業種は以下の4つです。
・不用品回収
・リサイクルショップ
・素材リサイクル
・発電
これらの業種はそれぞれ異なるビジネスモデルを持っており、参入を検討する際には自身の状況や目指す方向性に合った業種を選ぶことが重要です。ここでは、この4つの特徴について詳しく解説します。
不用品回収
不用品回収は、破損や故障により使用できなくなった品物を再利用目的で回収し、売買や交換を通じて利益を得る仕事です。
故障した家電製品でも、一部は海外で販売されることがあり、十分な利益が期待できることもあります。
しかし、事業を行うには許可が必要です。まず、「古物商許可」を各都道府県から取得する必要があります。不用品などをビジネス目的で売買・交換する際にはこの許可が必須で、無許可で行うと処罰されるため、必ず取得しましょう。
また、一般家庭から出るゴミや家電などの不用品は「廃棄物」として扱われ、「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要になります。
この許可は取得が難しいため、まずは古物商許可を取得し、そこから事業を始めるのが現実的なステップです。許可なしで廃棄物を回収して処分することは、廃棄物処理法に違反するため、適切に対応しましょう。
リサイクルショップ
リサイクルショップは、中古品の買取と再販売を行うビジネスモデルで、ネットショップや実店舗の形態で運営できます。
古物商許可を取得すれば、誰でも始められる点が魅力的です。特にネットショップは開業費用が少額で済むため、低コストでスタートできる利点があります。
一方で、実店舗を構える場合はテナント費用や設備投資、さらにはエリア調査や広告宣伝費用も考慮する必要があり、事業計画をしっかりと立てることが重要です。
競争の激しい今日では、フリマアプリやネットオークションの拡大に対応しながら、安定した利益を生み出すために、効率的な仕入れと販売ルートを確立することが成功のポイントになります。また、競合との差別化をはかるための工夫も必要です。
素材リサイクル
素材リサイクルとは、廃車になった自動車や使用済みのプラスチック製品などから、再利用可能な素材を回収し、新たな製品として再商品化する事業を指します。
特に自動車に多く含まれる金属素材は、さまざまな業界から注目を集める素材です。レアメタルなどの金属素材を取り扱うリサイクル業界には多くの大手企業が参入しており、特許を取得している企業も少なくありません。
日本のリサイクル技術は非常に高く評価されており、今後もさらなる成長が期待されています。また、工場を持つ中小製造業者にとっては、ビジネスモデルが確立している企業と提携することで、新規参入のハードルが下がりやすくなるでしょう。
発電
一般的に、個人が参入しやすい発電事業として「太陽光発電」が挙げられます。太陽光発電は、所有している土地や不動産の屋根に太陽光パネルを設置することで、売電収入を得ることが可能です。
一度パネルを設置してしまえば、継続的な人件費がかからないため、企業の副業としても適した事業モデルです。ただし、日照条件や天候の影響を受けるため、設置場所の選定は慎重に行う必要があります。
また、参入前には専門業者に将来的な利益をシミュレーションしてもらい、事業計画を立てた上で戦略的に進めることが重要になります。
リサイクル業の必要な資格とは?
リサイクル業者になるために必要な許可として以下の3つが挙げられます。
・古物商許可
・金属くず商
・産業廃棄物収集運搬業許可
ここでは、これらの許可の特徴や大まかな取得手順について詳しく解説します。
① 古物商許可申請
買取業者やリサイクルショップとして、中古品を売買する際には、「古物商許可」の申請が必須となります。申請方法は以下の通りです。
・申請場所:営業所がある地域の警察署
・申請費用:19,000円
・申請書類:許可申請書、略歴書、住民票、誓約書、身分証明書など
法人として開業する場合、さらに法人定款や登記事項証明書も提出が求められます。
また、事業に使用する営業所の住所も登録が必要で、店舗を利用するのか、自宅を営業所にするのか、事前に方向性を決めておくことが重要になります。申請から許可までに時間がかかる場合もあるため、早めに手続きを済ませておきましょう。
② 金属くず商
一部の都道府県では、スクラップ業などの金属くずを取り扱う事業に「金属くず商」の申請が必要です。そのため、古物商許可と併せて申請を行うことが推奨されます。申請の詳細は以下の通りです。
・申請場所:営業所がある地域の警察署
・手数料:0円〜10,000円程度(都道府県によって異なる)
・申請書類:申請書、履歴書、住民票など(都道府県によって異なる)
金属くず商の許可証を取得するためには、地域の警察署に手数料と申請書類を提出します。都道府県ごとに指示内容が異なるため、事前にホームページなどで確認することが重要です。
また、金属くず商は更新制であるため、3年ごとに更新手続きが必要です。手続きを怠ると効力を失うため、注意が必要です。
③ 産業廃棄物収集運搬業許可
産業廃棄物の収集や運搬を行う際には、「産業廃棄物収集運搬業許可」が必要です。
たとえば、企業が排出した金属類や機械類などのスクラップを回収する場合、この許可を得ることが求められます。
申請の流れは以下の通りです。
①講習会の空き状況の確認・申し込み
②講習会の修了証を受領
③産廃許可申請に必要な書類の収集・作成
④産廃許可申請の予約
➄申請手続き
⑥不備があれば訂正
⑦許可証の受領
新規申請の法定手数料は、自治体ごとに81,000円です。また、講習会の費用は31,000円で、申請時には修了証の提示が必要です。
しかし、自治体によっては産業廃棄物の運搬・処分が十分に行われている場合、新たな許可が下りにくいこともあります。特に産廃業者が多い地域では、新規取得の枠が埋まっていることが多く、すぐに許可を得られるとは限らないため注意しましょう。
リサイクル業を始めるにあたって考えるべき環境とは
リサイクル業界の中でも特に産業廃棄物に関わるビジネスを始めたい方は、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
・人材問題
・騒音
・異臭・衛生
ここでは、この3つのポイントについて詳しく解説します。
人材問題
リサイクル業界、特に産業廃棄物処理業者において、人材確保が大きな課題となっています。その背景には、「賃金問題」や「業界イメージ」などが挙げられます。
まず、賃金の低さが人材確保を難しくしている大きな要因です。環境省が公表したデータによると、最低賃金が1,000円未満の事業者が約64%を占めており、この低賃金が業界全体での雇用条件を悪化させています。
また、処理量の増加に対応している企業もあれば、減少している企業もあり、業界内での二極化が進行中です。競争が激化しているなかで、十分な賃金を提供できないことが多く、これが人材確保の難しさに繋がっています。
加えて、夜間勤務や「危険・汚い・きつい(3K)」とされる業務内容も、働くことへのハードルを高めています。環境省の調査では、約38%の産廃業者が「人材確保が困難」と回答しており、約10%の事業者が「業界のイメージや商慣行の変化がないこと」が問題であると指摘しています。
このように、賃金の増加や業界イメージの払拭が進まない限り、今後も人材不足の状況が続くと予想されます。
参考元:経済産業省「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言(概要版)」p21
騒音
リサイクル業界では、騒音問題も深刻になっています。
特に、大きな騒音は近隣住民の健康や気分に悪影響を与える可能性があるため、法令による規制が設けられています。以下の機器を有する企業は、特定施設として法令の対象となります。
・金属加工機械
・空気圧縮機、送風機
・粉砕機、摩砕機、分級機
・織機
・建設用資材製造機械
・穀物用製粉機
・木材加工機械
・抄紙機
・印刷機械
・合成樹脂用射出成型機
・鋳型造型機
これらの機器を使用する企業は、工場の所在地によって日中、朝夕、夜間に発生できる騒音の大きさが規定されています。そのため、法令を遵守することが求められます。
法令の基準を逸脱する機器を使用している場合や、できるだけ音を抑えたい場合は、専門のメーカーに相談して、適切な対策を講じることをおすすめします。
異臭・衛生
素材リサイクルにおいて、完成した製品の再利用時には異臭や衛生面の問題が懸念されることがあります。
特に、臭気の感じ方には個人差があるため、従業員への配慮だけでなく、周辺住民からの苦情を防ぐための管理体制をしっかりと整えることが求められます。
懸念点は、同じ環境で作業をしている従業員が臭いに慣れてしまい、感覚が鈍っている可能性があることです。
このような状況では、人の感覚だけに頼るのではなく、臭気を客観的に測定できる計測機器を導入することが推奨されます。これにより、臭気を数値で評価できるため、管理がより正確に行えます。
さらに、計測機器を活用すれば、風向きや風速などの環境要因による臭いの分布を把握できるため、周辺への影響を効果的にコントロールでき、臭気管理の強化が期待できます。
まとめ
今回は、リサイクル業界についてご紹介しました。
政府が主導するリサイクル推進の動きもあり、今後も成長が期待される将来性の高い業界です。
実際、第三者機関のデータでも、リサイクル業界は右肩上がりに成長していることが示されています。そのため、この業界への参入は非常におすすめです。
ただし、リサイクル業界と一口に言っても、さまざまな業種が存在します。
・買取専門店
・リサイクルショップ
・不用品回収業者
その他にも多くのビジネスモデルがありますが、最も手軽に始められるのは「買取店」でしょう。
たとえば、不用品回収業者の場合、許可申請の難易度や労働環境に関する問題などにより、参入のハードルが高い傾向があります。一方、買取専門店であれば、古物商許可を取得するだけで比較的簡単に開業できるため、未経験でも始めやすい業種です。
リサイクル業界に興味がある方は、まずはこうした参入しやすい業種から挑戦してみるのはいかがでしょうか。
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