大正の浮世絵師
竹久 夢二(たけひさ ゆめじ、1884年 - 1934年)は大正ロマンを代表する画家です。「大正の浮世絵師」などと呼ばれたこともあります。また、児童雑誌や詩文の挿絵も描いています。文筆の分野でも、詩、歌謡、童話など創作しており、中でも、詩『宵待草』には曲が付けられて大衆歌として受け、全国的な愛唱曲となりました。また、多くの書籍の装幀、広告宣伝物、日用雑貨のほか、浴衣などのデザインも手がけており、日本の近代グラフィック・デザインの草分けのひとりともいえる画家です。
代表作【黒船屋】
竹久夢二の代表作の一つが、この「黒船屋」です。構図はエコール・ド・パリの画家ヴァン・ドンゲンの「黒猫を抱ける女」を参考にしたといわれ、そのモデルは夢二と恋仲だった彦乃か、あるいはお葉か、今でもわかっていません。彦乃は日本橋の紙問屋の娘。女子美術学校の学生で、夢二のファンでした。二人は同棲しますが、結核になってしまい、御茶ノ水順天堂医院に入院したものの、そのままなくなってしまいます。
この彦乃は、夢二最愛の人だったといわれ、「彦乃日記」という本を残しています。お葉は、東京美術学校でモデルをしていました。そのうち、夢二と恋仲になり、同棲。二人の間には子供ができますが、溶接してしまいます。その後お葉は自殺を図りますが、一命を取り留め、後には医師と結婚をしました。さて、このどちらが「黒船屋」のモデルなのか見る人の考察によって見方が変わりますね。
夢二式美人画
竹久夢二の作品といえば、浮世絵的な色使いや日本画の技法で書かれた美人画が有名です。華奢で儚げな体つきに、どことなく憂いを帯びた表情の女性は独特の世界観を持っていることから「大正の浮世絵」「夢二式美人画」と呼ばれ親しまれました。しかし、絵画の世界だけではなく雑誌の挿絵や書籍の表紙、商業広告など様々な分野の作品を製作していた夢二の美人画は当時の画壇には受け入れられず、雑誌購読者である少女を中心とした大衆に人気がある作家だったようで、画家として評価されるようになったのは死後のようです。
竹久夢二の代表作といえば、黒猫を抱く女性を描いた美人画「黒船屋」ではないでしょうか。しなやかな毛並みの黒猫を胸に抱いた着物姿の女性は、口元に微笑みを浮かべてはいるものの目はどことなく悲しげな印象があり、まさに竹久夢二らしい作品といえるでしょう。
まとめ
大正ロマンを代表する竹久夢二。数ある名作品の背景には見る人を魅了する様々なバックボーンが存在しました。ぜひ他の作品も背景を一緒に読み解き対象ロマンの世界に思いをはせてはいかがでしょうか?