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なぜ偽物を購入してしまうのか
近年、インターネットの普及で実際にお店に出向かなくても簡単に買い物ができるようになりました。人の心理として、できるだけ安く買い物をしたいと思うものです。ブランド品を購入するときも同じように考え、欲しい商品が安く売られているサイトを探そうとします。この心理が安いブランド品を購入してしまうことにつながるのです。
ブランドの偽物はどこで売られている?
偽物と分かっていながら商品を販売するのは違法行為なので、コピー品が販売されているのはインターネットがほとんどです。多くのブランド品の偽物は海外から送られてきます。偽物が海外から届く時、税関で止められることがあるので、最近では国内に工場を構えて偽物を製造して国内から発送するケースも多くなってきています。また、近年ではフリマアプリやオークションにブランド品の偽物が出品されていることも多くなっています。
インターネットでは商品を手に取って確かめることができません。フリマアプリやオークションで明らかに正規品より安い値段で販売している場合は、偽物だと疑っていいでしょう。
偽ブランド品に関する法律について
偽ブランド品を製造・販売した場合に問われる罪
(1)商標法違反
まず考えられるのは商標法違反です。企業やブランドのロゴや文字などには商標権が認められています。これは、その企業が努力して築いてきた商品への信頼そのものであり、その信頼やブランド性を守ることで、商標の権利者である会社業務上の信用を維持し、さらには、その商標を信用して商品を買い求める消費者や市場を保護することも目的としています(商標法1条)。
長年の努力と時間やお金をかけて築いてきた「ブランドの価値」を、第三者がただ乗り(フリーライド)することは許されないというわけです。具体的に問題となるのは、他人の商標を利用した偽ブランド品やレプリカ品、そっくりなコピー商品を作成して販売する行為が対象となります。
なお、ブランドのロゴそのものではなく、一部をもじった商品の販売や、別の商品の包装紙にブランドの商標を付ける行為も、「みなし侵害行為」として違法になります。商標法違反の刑罰は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方です(商標法78条)。
みなし侵害行為の場合でも、5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金またはその両方が併科されます(同78条)。さらに、上記は個人が商法表違反を犯した場合の罪です。
個人ではなく、法人の業務に関し、法人代表者やその従業者等が商標権侵害行為をした場合は、行為者自身に個人としての上記の刑罰が科されることに加え、さらに、法人に対しては3億円以下の罰金刑が科されます(商標法80条)。法人にはかなり重い刑罰が予定されていることがわかります。
(2)不正競争防止法違反
偽ブランド品の販売は、不正競争防止法違反に該当する可能性もあります。同法は、一般に広く認知された他人の商品等を模倣することで、消費者に対して他の商品と混同させることを禁止する目的の法律です。商標登録していない商品についても処罰の対象となる点が特徴で、5年以下の懲役または500万円以下の罰金刑あるいはその併科が予定されています。
(3)詐欺罪
、偽ブランド品の販売は、購入者に対する詐欺罪(刑法246条)に該当します。偽ブランド品を正規品であると偽り、本物に見せかけて顧客をだまして対価を払わせると詐欺罪が成立します。刑罰は10年以下の懲役で、罰金刑はありません。このように、偽ブランド品の販売は、さまざまな犯罪に該当するリスクの高い行為です。
偽ブランド品を購入・所持だけであれば逮捕されない?
(1)偽ブランド品を購入する行為は違法になる?
偽のブランド品だと知らずに買った場合は、もちろん罪にはなりません。むしろ、だまされたわけですから、詐欺の被害者ということになります。また、偽物だと知りつつ購入したという場合でも、個人でその商品を使用するだけなら商標法違反とはなりません。
ただし、その購入の目的が、それを第三者に売りつけて利益を得るための「仕入れ」である場合には、譲渡等目的での所持行為となり、商標法違反に該当します。
(2)偽ブランド品を所持している場合は?
偽ブランド品を手元に持っているだけでは他人の商標の侵害には至りません。自分で使っていても問題はありません。ただし、偽ブランド品を、フリマアプリやネットオークションで販売するために、所持しているのならば、他人の商標権を侵害する準備行為にあたり、商標法違反に該当します(商標法37条6号)。
この場合、5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(同法78条の2)。
偽ブランド品だと知らずに販売してしまった場合は?
偽ブランド品を売る場合にはいくつかのケースがあります。ケースごとに違法行為に当たるかどうかを検討しましょう。
(1)偽ブランド品だと知らずに販売してしまった場合
商標法違反、不正競争防止法違反、詐欺行為のいずれの場合も、偽ブランド品を販売したために刑罰の対象になるには、故意があること、つまり偽ブランド品だと知りながらあえてそれを販売するなどして侵害したことが条件となります。
したがって、その商品が偽ブランドであると知らずに本物だと信じて販売した場合は、故意が認められず、犯罪が成立しません。とはいえ、偽ブランドだとは知らなかったという主張が通ることはそう簡単ではありません。それなりの証拠や説得的な経緯が必要となりますので、無罪主張をする場合は、必ず弁護士に相談したほうがいいでしょう。
(2)偽ブランド品だと知っていたが偽ブランド品であることを隠して売った場合
偽ブランド品であることを隠して消費者に売りつける行為は、相手をだまして商品を売ることと同じです。消費者は、有名ブランドの正規商品だと信じて、それに応じた対価を支払うわけですから、実際には偽造品だとわかっていたら購入しなかった可能性が十分にあります。
この場合は、消費者に対する詐欺行為として、民法上の詐欺行為にあたり、また、刑法の詐欺罪にも該当します。もちろん、商標法、不正競争防止法にも違反するれっきとした犯罪行為です。
まとめ
ブランド品の偽物を知らずに購入しないようにするためには、インターネットで格安でブランド品を販売している店には偽物が売られている可能性が高いことを知ることです。偽物のブランドを所持していることは、資産価値の問題や人としての信頼の崩壊にもつながります。
老舗ブランドが長い時間をかけて開発してきた本物のブランド品は、使えば使うほど味が出て所有者に馴染み、価値が深まるものでもあります。偽物が出回るのは、そのブランドや商品が人気である証拠でもありますが、やはりそのような商品をうっかり購入してしまわないように、ブランド品購入の際は細心の注意を払う必要があります。