NIGO®とヴァージル・アブロー
2019年12月、ルイ・ヴィトン(LouisVuitton)のメンズアーティスティック・ディレクターを務めるヴァージル・アブローがデザイナーでストリートウェアのパイオニア、NIGO®とのコラボレーション「ルイ・ヴィトンLVスクエアードコレクション(以下LV2)」を発表しました。
ヴァージルのLV2への想い
ヴァージルは、以前より親交のあるNIGO®について以下のように語っています。
「今、僕がルイ・ヴィトンにいるのは、NIGO®が築き上げてきた歴史があるからなんだ。このコラボレーションは、彼のこれまでの仕事に改めて焦点を当てたプロジェクトなんだ。」
「NIGO®は、僕のファッション界でのメンターの一人。彼は、ヒューマン・メイド(HUMANMADE)というブランドを手がけていて、一つのビル内でブランドのデザインから写真撮影、製造まで、すべてが完結していた。そのプロセスを目の当たりにして、感銘を受けたよ。」
LV2がカタチになるまで
LV2の打ち合わせはパリにあるヴァージルのスタジオで行われ、「ストリートウェアで有名な2人のコラボがあえて真逆の空気感だったら、面白いのでは?」そんな思いつきが出発点となったようです。
「NIGO®、ヴァージル・アブロー、そしてルイ・ヴィトン。この3つの名前を並べれば、皆がストリート感に溢れたコレクションを想像するかもしれない。だけど、ファッションには、旅に誘ってくれるような物語と驚きが必要なんだ。
日本はアメリカ文化に対するリスペクトを持っていて、クオリティの高いアメリカンファッションのアーカイブも多く存在する。なかでも、NIGO®は素晴らしいデニムのコレクションを所有していて、製造初期のリー(LEE)やリーバイス(LEVI'S)など、希少なデニムも持っているんだ。
スーツもたくさんあって、その多くはロンドンのサヴィル・ロウで購入したもの。彼はビスポークというラグジュアリーな経験やファッションが辿ったストーリーに価値を置いている。誰にも真似ができない、唯一無二のスタイルの持ち主なんだ。だから、ストーリー性のあるコレクションを作るにあたって、NIGO®をミューズとして起用することが最も自然で信頼できる思った。」とヴァージルは言います。
このコレクションは落ち着いた雰囲気を醸していて、ストリート感が漂うアイテムはさほど多くはないのだ。予想外のところを攻めたかった。とヴァージルはコラボの意図を語っています。
特筆すべきアイテム達
NIGO®らしさ全開のバッグ
バッグには特にNIGO®の影響が伺え、アイスクリーム(ICECREAM)という彼のブランドのシグネチャーモチーフのプレイフルな感覚をルイ・ヴィトンの洗練された世界観に落とし込んだものとなっています。
ヴァージルの想いこもった、富士山モチーフジャケット
富士山モチーフのジャケットは、NIGO®とヴァージルのストリートな感覚をそのまま表現した、数少ないアイテムのひとつです。「期待を裏切る」ことを目標に掲げていたからこそあからさまな「彼ららしさ」を避けたというヴァージル、逆に重要視したのが、「父から息子へ引き継げるかどうか」だといいます。
「LV2」のロゴ
「LV2」のロゴはNIGO®とのヴァージルのカプセルコレクションに限られたロゴで、二人の「ラップデュオ名みたいなもの」のようです。「かつて僕らは、ファッション業界の枠の外だと言われていた。でも時代が変わって、今では業界の中心で、デザインを発信し、自由にスタイリングができる立場になったんだ。そんな関係性をこのロゴで表したんだ。」とヴァージルは言います。
ヴァージルは2021年11月28日、41歳という若さで癌によりこの世を去ります。2019年に既に癌と診断されていましたが、生前はその情報を本人の希望によって非公表にしていたことが明らかにされました。重病と闘いながら手掛けたこのコレクションは、彼の遺作としてもファッション史に刻まれました。