ルビーの意味
ルビーという言葉は英語のRubyをカタカナ読みしているわけですが、Rubyという言葉自体は古いフランス語のRubiに由来しており、さらにこれは「赤」を意味するラテン語のRubeusに由来しています。
ルビーはサファイアと同じ「コランダム」と呼ばれる鉱物です。ルビーとサファイアを区別する唯一の要素は“色”です。宝石として美しい赤色をもつコランダムは「ルビー」、それ以外の色で美しいコランダムは「サファイア」と区別されます。なお、宝石の美しさを持たない黒ずんだコランダムは「エメリー」と呼ばれ、工業用の研磨剤として使われます。
コランダムは酸化アルミニウムでできており、ルビーの場合、そこに微量の酸化クロムが含有されることで美しい赤色を備えます。ルビーは酸に溶けず、鉱物の硬度を示すモース硬度では9と、ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つ鉱物です。
ルビーは特にジュエリーで人気の高い石で、ダイヤモンドに次いで高価な宝石といわれます。世界最硬の宝石であるダイヤモンドを研磨できるようになる以前は、最も高貴な宝石として評価されてきました。
また歴史的に、深紅色が血の色を彷彿させることから心身の健康を司ると考えられてきました。それは現代のパワーストーンとしての観点における、ルビーの効能にもあらわれています。パワーストーンとしてのルビーは血流循環の正常化や感情を高める作用があると言われ、健康促進や子孫繫栄、恋愛成就などに効果があるとされます。そしてルビーは結婚35周年を記念する宝石であり、7月の誕生石でもあります。
ルビーにまつわる歴史や伝説
ヨーロッパには紀元前500年頃、ギリシャ人とエトルリア人によって紹介されたといわれています。中世ヨーロッパでは、ルビーは血と火を連想させ、勇気と情熱に関連付けられます。また不幸や悪霊を追い払うとも信じられました。そのため王冠や兜に王室の記章として表示されます。騎士を怪我や病から守るとされました。
キリスト教徒にとって、ルビーはキリストの血を象徴しています。特に、第二バチカン公会議まで枢機卿の指輪を飾っていました。また、出エジプト記に登場する司祭のエポデ(胸掛け)は12の宝石で飾られ、その中の一つがルビーです。
中国では紀元前200年には、シルクロードでルビーを取引していたと言われ、中国の戦士たちは、お守りとして剣をルビーで飾りました。これは、ルビーの色が血を彷彿させるためであり、赤色の宝石や色石を護符とすることはあらゆる文化でみられます。
ミャンマー(ビルマ)では、戦士たちは護符としてルビーを身に着けていました。ミャンマーは現在でも最高品質のルビーを産する名産地として知られています。
インドでは、ルビーは数ある宝石の中でも特に高く評価され、認められてきました。サンスクリット語では「ratnaraj」つまり「宝石の王」と呼ばれています。その色は、消えることのない火が燃え続けていると考えられていました。ヒンドゥー教徒もまた、ルビーを守護の宝石と見なしていました。ルビーががクリシュナ神に捧げられた場合、捧げた者は来世において高い地位を保証されると言われました。
ヒンドゥー教の伝説で語られる「カルパ・ツリー」という神聖な木は、サファイア、ダイヤモンド、トパーズ、エメラルドなどの様々な宝石で構成された、ヒンドゥー教の神々への供物です。この木はルビーを実として実らせるとされました。
有名なルビー
モンテスパン侯爵夫人の指輪
モンテスパン夫人は、絶対王政を敷いて絶大な権力を誇ったフランス王ルイ14世の公妾です。指輪は18世紀初頭のものです。モンテスパン夫人を象った彫刻が施されたルビーがイエローゴールドの地金に嵌め込まれました。
アレキサンダー大王の印章
現存はしておらず、伝説的な逸話ですが、アレキサンダー大王の肖像を象った15カラット程のルビーでできた印章は、初代ローマ帝国皇帝アウグストゥスの印章として使われていました。その後も代々皇帝の印章として使われたと言われています。
聖ヴァーツラフの王冠
聖ヴァーツラフの王冠は、1347年に作られたボヘミアの戴冠用の王冠です。1346年に神聖ローマ皇帝カール4世が、チェコ人の守護聖人である聖王ヴァーツラフの頭蓋骨の聖遺物箱を飾るように依頼しました。この王冠は、19個のサファイア、30個のエメラルド、20個の真珠、44個のスピネル、そして中央に象徴的にあしらわれているのが、ルビーです。
サンライズ・ルビー
サンライズ・ルビーは、ミャンマー原産で25.60カラットのピジョンブラッド ルビーで、カルティエのダイヤモンドをあしらったリングに取り付けられています。2015年にスイス・ジュネーヴで開催された、サザビーズのオークションで2,825万スイスフラン(約36億4500万円)で落札されました。
カルメン ルシア ルビー
ピーター・バック博士が愛妻カルメン ルシアへ贈ったルビーの指輪です。ルビーは23.10カラットで、ミャンマー産最上級ルビーに特徴的な鳩の血のような赤、「ピジョンブラッド」を呈しています。博士よりスミソニアン国立自然史博物館へ寄贈され、同館で展示されています。
まとめ
ルビーについて紹介しました。現代においても非常に価値の高い宝石としてしられていますが、歴史的にみても世界中で珍重されてきたようですね。このような歴史やエピソードをしると、自分の持っている宝石にあらたな視点が芽生えて、より愛着が湧いてきます。