目次
ブラックオパール
ブラックオパールという石は、宝石市場において高い価値を誇ります。特に幾層にも重なる色あいは美しく洗練された印象です。この色の重なりを遊色といい、遊色が美しいほど高価になります。ジュエラーは、市場で最も価値のある石を手に入れるために、終わりなき探求を続けています。
オパールはサンスクリット語で「upālā[s](ウパラ)=貴石」という意味で、これがラテン語の「opalus」、ギリシャ語の「opalios」の語源となったと言われています。オパールは非晶質であるため厳密には鉱物ではありませんが、国際鉱物学連合は例外的にオパールを鉱物の一種としています。
オパールは、プレシャスオパールとコモンオパールに大別されます。コモンオパールは、実は反射がなく、色のバリエーションが豊富です。プレシャスオパールは、最も人気が高く、透明度の高いオパールです。プレシャスオパールは遊色効果と呼ばれる色鮮やかな虹色の光を反射します。基本的にブラックオパールは多色性で、かなり明るい輝度をもつ石です。しかし、強い光を浴びると暗い色になります。
遊色効果(プレイ オブ カラー)
ブラックオパールの魅力は、深い闇のような黒の中に燦然と煌めく遊色にあります。オパールの遊色効果は、色の形状や大きさにより見た目が異なります。
ハーレクイン
遊色パターンの中で、最も希少性が高いと評価される模様です。ハーレクインとは、中世イタリアの喜劇役者のことです。彼らが着ていたカラフルな衣装の模様に似ていることから、こう呼ばれるようになったといわれています。
フラッシュ
石を特定の角度から見た時、広い範囲に明るい閃光を見せます。石を手にもって動かすとパッと光るような鮮やかな色合いが放たれ、とても印象的です。
ローリングフラッシュ
オパールを特定の方向に向けることで、色が転がっているように見えるパターンです。鮮明な閃光がコロコロと動くことから、ローリングフラッシュと呼ばれています。猫の目のような一筋の線を見せるものはキャッツアイとも呼ばれ、高く評価されます。
リボン
様々な色が帯状に繋がり、石の上で平行に並んだものです。お互いに全く異なる色が並んでいたり、石全体で対照的に並んでいるものほど輝きが増し、評価も高くなります。
オパールにまつわるエピソード
オーストラリアのオパール伝説
オパールの名産地であるオーストラリアの伝説によると、神様が虹にのって降りてきて、道行く人に平和のメッセージを伝えました。地上に降りたったとき、神の足が石に触れました。すると石はまるで生きているかのように動き始め、オパールが誕生したというものがあります。オーストラリアでは、この話にちなんで、オパールを「虹の蛇」と呼ぶ部族がいたそうです。また、虹自体がオパール誕生のきっかけになったとも言われています。
ゼウスの涙
古代ギリシャでは、ゼウスがタイタンに勝利した後、喜びの涙を流したと言われています。その涙は地面に落ち、オパールになったといわます。ギリシャでは、この岩が透視能力や予言をもたらすと言われ、崇拝されていました。同じ時代、ローマ人はオパールを純潔と希望を象徴するパワーストーンとして扱い、市場で大量に売られました。
インドの女神
インドには虹の女神がいて、その美貌は有名でした。そのため、多くの求婚者が彼女を追いかけてきました。結婚を望まない彼女は、彼らから逃れるためにオパールに変身することにしたという逸話があります。
雷の石
アラビア文化では、ブラックオパールは雷によって形成されたとされています。遊色は雷光のような光が閉じ込められ輝きなのです。
中世の人々にとってのパワーストーン
中世ヨーロッパでは、オパールは「オフタルミオ」(目の石)と呼ばれており、パワーストーンを用いるヒーリングでは、視力回復に使われました。明るい色の髪を持つ女性は、白髪を防ぐためにオパール入りのジュエリーを身につけていたそうです。
ローマ皇帝も執着したブラックオパール
1世紀の医師プリニウスは、ある元老院議員が、マルクス・アウレリウス・アントニヌスにブラックオパールを販売してほしいと頼まれたが、それを拒否したことによって追放にされたことを、その著作の中で語っています。
マルクス・アウレリウス・アントニヌスはクレオパトラにこれを贈るつもりでした。時は流れ18世紀にアレクサンドリアで、元老院議員が所有するオパールと思われるものが発見され、あるフランス人が購入しました。しかし残念ながら、今ではその行方が分からなくなっています。
ナポレオンの妻のブラックオパール
ナポレオン最初の妻であるジョゼフィーヌ・ド・ボアルネは、"Incendie de Troie(トロイアの焔)"と呼ばれるファイアーオパールを所持していました。これもまた、今では行方しらずです。
ヴィクトリア女王の悲しみに寄り添ったブラックオパール
オパール好きで有名なヴィクトリア女王は、アルバート公崩御に際し、喪に服していたときにブラックオパールを着けていました。故人を偲んで作られるモーニンジュエリーは、ここから始まったともいわれます。
不運の石?
一方でブラックオパールはその色から、長い間、不運をもたらすと考えられてきました。これは、1829年に出版された小説が原因です。この本には、魔女として告発された若い女性が登場し、彼女は死ぬ前に、この石に聖水をかけたという内容です。その噂は瞬く間に広まりました。この影響でオパールの価値は数カ月で50%近く下落したといいます。
人工的な処理や人工オパールの存在
高価な天然オパールに比べ、安価にその美しさを楽しめるのが下記に紹介するようなオパールです。しかし、これらの加工物であるにもかかわらず天然オパールを偽って販売する悪徳業者も存在するので、注意が必要です。
エンハンスメント
そのオパールの色味や輝きを一層引き出す処理のことです。スモーク加熱処理や、砂糖と硫酸を使用して加熱する方法や、油による加熱処理などがあります。宝石自体の性質を変えているわけではないので、天然石とみなされますが、エンハンスメントされず本来の美しさを持っているオパールには、価値としては劣ります。
ダブレットオパール、トリプレットオパール
薄いオパールを大きく見せるための処理です。上部に天然オパール、下部にプラスチック板という二層構造の「ダブレットオパール」や、真ん中に天然オパールを置き、上下を人口素材で挟む三層構造の「トリプレットオパール」があります。
人工オパール
合成オパールとは人工的に作られたオパールですが、天然オパールと同じ化学組成、内部構造、物理的性質、外観をもっています。合成、人工、クリエイテッドなどと表記されます。ピエール・ギルソンが発明した「ギルソンオパール」や、京セラの「クリエイテッド・オパール」、ピンファイヤーの「オーロラオパール」などが有名です。
最後に
オパールはデリケートな宝石です。オパールは多孔質で、表面に目に見えない微細な孔がたくさんあります。そのため、湿気を吸収しやすいため、水気から遠ざける必要があります。また、熱や乾燥にも弱いので、直射日光の当たる場所や乾燥しやすい場所を避けて保管してください。また、衝撃にも弱く、激しい衝撃や落下による破損にも注意してください。