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ローズカット
このカットは約24面のファセット(断面)から構成されます。バラのつぼみのような見た目となることから、この名がつきました。ローズカットは歴史あるカット方法で、ダイヤモンドのカットが可能になった当初より存在します。世界一硬いといわれるダイヤモンドは割ることはできても、15世紀までカット(研磨)することは不可能と考えられていました。しかし、15世紀にベルギーで、ベルケム(ベルケン)という宝石職人が、ダイヤモンドでダイヤモンドを磨くという方法を発見し、ダイヤモンドが様々なカットで磨かれるようになります。当時、フランスを凌ぐ勢いを誇ったブルゴーニュ公国のシャルル豪胆公はダイヤモンドを愛し、彼の所有した「フロランタン」と「ボーサンシー」という2つの大きなダイヤモンドはダブルローズカットと呼ばれるカットを施されました。インドで特に人気の高いカットといわれ、アンティーク感のあるジュエリーに仕上がります。
ラウンドブリリアントカット
ダイヤモンドリングにおいて、最もポピュラーといえるカットです。57~58面体で構成されたファセット(断面)は、「Brightness(明るさ)、Fire(虹色の光)、Scintillation(煌めき)」というダイヤモンドの輝きの要素を最大限に引き出し、光学的・数学的にもっとも効率的にダイヤモンドの輝きを映すカットと言われています。このカットはマルセル・トルコウスキーが発明しました。彼はダイヤモンド加工職人の名家、トルコウスキー家に生まれた宝石職人で、数学にも秀でていたためダイヤモンドカットを数学的に分析し、このカットの理論を大成することができたのです。ラウンドブリリアントは結婚指輪やエンゲージリングの定番カットです。
オーバルカット
1960年代に登場し、ラウンドブリリアントカットを楕円形にしたようなカットです。そのため、型にはまらない新しい形として、個性派な結婚指輪やエンゲージリングとして選ばれる傾向にあります。
ペアシェイプ(ティアドロップ)カット
オーバルカットの一端を尖らせた、洋ナシや涙のような形状のカットです。指輪にもあしらわれますが、ペンダントとして人気です。
マーキーズカット
オーバルの両端を尖らせた、ラグビーボールのような形状のカットです。マーキーズ(Marquise)とは侯爵夫人の意味で、フランス国王ルイ15世の愛妾であった、ポンパドゥール夫人のためにカットされたダイヤモンドのカット方法だったことに由来します。
テーブルカット
テーブルカットも15世紀のダイヤモンドのカットが確立した初期から存在するカット方法です。菱形の八面体を形成しているダイヤモンドの原石を二つにカットし、断面に「テーブル」と呼ばれる平面を形成したシンプルな長方形のカットです。エメラルドカットやバゲットカットに発展していきます。
ロゼンジ(ローゼンツ)カット
テーブルカットが上から見たときに長方形であるのに対して、ロゼンジカットは上から見たときに菱形にみえるカットです。こちらもシンプルなカットで、ダイヤモンドのカットが可能になった初めのころから存在しました。宝石にシャープな印象をもたらし、透明感を引き立てます。
バゲットカット
バゲットカットは長方形にカットするカッティング方法です。フランス語で棒を意味するBaguetteに由来し、20世紀初頭にカルティエが初めてこのカットを行ったと言われています。カルティエはジュエリー界において、いち早くアールデコの芸術様式を取り入れたメゾンで、このバゲットカットも直線的なデザインコードを特徴とする、アールデコの潮流を汲んでいるといえます。
エメラルドカット
その名の通りエメラルドによく適用されるカット方法です。長方形のテーブルで四隅を切り落としたような形状のカットです。天然のエメラルドは傷が多くダイヤモンドやコランダム(ルビー・サファイア)に比べると硬度も劣るため、加工中に欠損する可能性があります。そのため、四隅をわずかに切り落とすことで研磨時の圧力を分散させ、欠損のリスクを減らすという配慮がデザインに帰結しています。
アッシャーカット
20世紀の初めにジョセフ&アブラハム・アッシャーによって考案されたカットです。彼らは腕利きのダイヤモンドカッターとして知られ、3100カラットにも及ぶ史上最大のダイヤモンド原石「カリナン」をカットしたことでも知られます。エメラルドカットに近い8角形のフォルムをしていますがダイヤモンドに特有のカットで、74のファセットをもち洗練された高貴な輝きを放ちます。
ラディアントカット
1970年代にダイヤモンド研磨士のヘンリー・グロスバードによって開発された比較的新しいカット方法です。簡単に言うと、エメラルドカットとラウンドブリリアントカットを掛け合わせたようなカットで、四隅を切り落とした正方形に近いスクエアフォルムにブリリアントカットを施した、直線美とダイヤモンドの輝きを両立されたカットです。
プリンセスカット
ラディアントカットを発展させたカットがプリンセスカットです。1980年代に登場しました。74面にもなるファセットをもち、プリンセスの名に相応しい精緻で絢爛な輝きを放ちます。
クッションカット
ピローカットとも呼ばれ、その名の通りクッションや枕を彷彿される角の丸いスクエアフォルムが特徴です。19世紀によくみられるカット方法で、原石が丸みを帯びていることが多かったこと、なるべく原石のロスを押さえたカットを目指したことが、このカットに行き着いたと言われています。ヴィンテージやアンティークのジュエリーに多くみられるため、骨董品やクラシックなスタイルを好む人に人気があります。
まとめ
宝石の様々なカットの種類について紹介しました。用途やスタイル、石の個性に合わせたカットを選ぶことで、よりそのジュエリーの魅力を一層引き出すことができます。