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「モアサナイト」の基本情報
別名 | モアッサナイト、モアッサン石 |
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英名 | Moissanite |
化学式 | SiC |
色 | ブラック、イエロー、グリーンなど |
モース硬度 | 9.25~9.5 |
劈開性 | 無し |
比重 | 3.218~3.22 |
屈折率 | 2.654~2.697 |
分散率 | 0.104 |
以上がモアサナイトの基本情報です。専門用語について解説しますと、モース硬度と劈開性は、主に宝石の耐久性を測る尺度の一つです。比重は1立方センチメートルあたりの重さ(グラム換算)を示し、屈折率や分散率は、宝石の輝きの強さを表します。
なお、表に記載されているモアサナイトの色は、天然のモアサナイトに基づいています。合成モアサナイトにはカラーレス(透明)をはじめ、レッドやブラウン、ライトイエロー、ブルーなども存在します。これらの色は、一般的に放射線を用いて着色されます。
モアサナイトの特徴
モアサナイトは、ダイヤモンドを超える輝きを持つとも称される宝石です。過去には、ダイヤモンドテスターで調べても、その正体を見抜けなかったともいわれています。また、モアサナイトにもダイヤモンドと同様に、「4C」と呼ばれるグレードがあります。
4Cは、ダイヤモンドの品質を、GIAが定めた基準に基づいて評価したものです。しかし、ダイヤモンドの4Cが、国際的に通用する基準である一方で、モアサナイトの4Cは非公式な基準であり、信憑性や信頼性には注意が必要とされています。
モアサナイトのモース硬度
鉱物が持つ、ひっかき傷への耐性はモース硬度と呼ばれます。天然石の中で、最も硬いとされるダイヤモンドのモース硬度は10であるのに対し、モアサナイトのモース硬度は、9.25~9.5です。
モース硬度9のコランダム(ルビーやサファイア)が、天然石の中ではダイヤモンドに次いで硬いとされるため、モアサナイトはダイヤモンドに次に硬い宝石と言えます。また、その硬度と人工的に量産が可能である点から、工業用の研磨剤としても使用されています。
モアサナイトの由来
モアサナイトの名前は、フランスの科学者アンリ・モアサンから名付けられました。アンリ・モアサンは、1893年にモアサナイトを発見した人物で、1906年にはノーベル化学賞を受賞しています。
当初は彼も、モアサナイトをダイヤモンドだと認識していたようですが、調査の結果、この鉱物は炭化ケイ素でできた、新鉱物であることが判明しました。
モアサナイトの歴史
モアサナイトは、自然界ではほとんど発見されない鉱物として知られています。最初に発見されたのも、アメリカのアリゾナ州に激突した隕石からでした。当初は、その強い輝きからダイヤモンドだと誤認されていましたが、アンリ・モアサンの調査によって、炭化ケイ素からなる、新しい鉱物であることがわかりました。
アンリ・モアサンの発見と研究が称えられ、彼の名前からモアサナイトと名付けられます。1998年頃、アメリカで合成モアサナイトの製造が確立すると、ジュエリー品としても使用されるようになりました。現在も欧米を中心に、強い輝きを持つ宝石として知られています。
今のモアサナイトは人工石
初めてモアサナイトが発見された場所が隕石だったことからもわかるように、天然のモアサナイトは地球上で滅多に見つかりません。1893年以降も、隕石や岩石から天然モアサナイトが発見されましたが、いずれも少量であったといわれています。
そのため、世界市場で流通しているモアサナイトは、人工的に作られた合成石です。ノースカロライナ州のチャールズ&コルバード(Charles & Colvard)が初めてその製造に成功し、販売を開始しました。
モアサナイトの価値
一般的に、耐久性の高く、輝きの強い宝石は価値が高いとされています。モアサナイトは、ダイヤモンドに次ぐ硬度と、ダイヤモンドを超える輝きを持ち、カラット数に応じてその輝きは増加します。さらに、人工的に作られたモアサナイトには、クリーンなイメージがあります。
最近では商品の背景も重要視される傾向があるため、モアサナイトはそのようなニーズにも適しています。これらの特徴を持ちながら、天然ダイヤモンドよりも安価で購入が可能です。コストパフォーマンスにも優れた、唯一無二の宝石と言えるでしょう。
モアサナイトの意味や宝石言葉・効果
モアサナイトにはっきりとした宝石言葉はありませんが、その特性から「愛」や「不屈」、「成功」などとよく結び付けられます。
この宝石を身に着けることで、パートナーとの愛情や絆がより強固になることでしょう。また、モアサナイトは不安や恐怖に屈することなく困難を乗り越え、目的を達成できるといわれています。
このように、モアサナイトは強いパワーを持つ宝石だと考えられているのです。
モアサナイトは安っぽい?ダイヤモンドとの比較
モアサナイトは、ダイヤモンド以上の輝きを持つとも言われており、決して安っぽくありません。おそらく、ダイヤモンドに似た外観をしていながら、お手軽な価格で購入できることから、ダイヤモンドの偽物・代替品という誤った認識が広がったためと考えられます。また、モアサナイトの天然石は、市場でほとんど取引されていないため、ここでは人工モアサナイトであることを前提に解説します。
モアサナイトと天然ダイヤモンドの比較
モアサナイトと天然ダイヤモンドは原子構造が異なり、ダイヤモンドは炭素、モアサナイトは炭化ケイ素で構成されています。この違いにより、ダイヤモンドのモース硬度は10、モアサナイトは9.25から9.5と、僅かながらに違いがあります。
また、光の分散度はモアサナイトがダイヤモンドの約2.5倍で、ダイヤモンドより輝きが強いといわれています。そして、モアサナイトは熱や油脂に強く、普段使いに適しています。最後に、モアサナイトは人工石のためリーズナブルな価格で提供されています。
モアサナイトと人工ダイヤモンドの比較
モアサナイトと人工ダイヤモンドは、どちらも人工的に作られた宝石ですが、原子構造やモース硬度、耐久性、輝きの強さなどに違いがあります。
酷似した見た目に反して、異なる点が多い一方で、共通点もあります。天然宝石には、採掘に伴う環境問題や倫理的問題があるのに対し、人工石にはそのような問題がないことです。
コストパフォーマンス
モアサナイトはコストパフォーマンスが高いことでも知られています。一般的に、人工ダイヤモンドの価格相場は、同カラットの天然ダイヤモンドと比較して、およそ半分程度であるといわれています。
しかし、モアサナイトは同じグレードの天然ダイヤモンドの10分の1程度で購入が可能です。これは、さまざまな理由で、ジュエリー品への出費を減らしたい人にとって、魅力的な選択肢となるでしょう。
エネルギー消費量
人工ダイヤモンドを製造する時、1カラットあたりのエネルギー消費は、天然ダイヤモンドを採掘する時の約2分の1とされています。一方で、モアサナイトはそのエネルギー消費を大幅に抑えており、1カラットあたりのエネルギー消費は、人工ダイヤモンドの100分の1以下です。
つまり、モアサナイトは天然ダイヤモンドと比べると、エネルギー消費が200分の1以下に抑えられています。このことから、モアサナイトは環境に優しく、サスティナブルな宝石であると言えるでしょう。
モアサナイトは見た目でバレる?
モアサナイトとダイヤモンドは、どちらも無色透明で虹色に輝く宝石です。酷似した見た目を持つため、素人が目視で違いを見極めるのは非常に困難でしょう。
ただし、モアサナイトはダイヤモンドより虹色の輝きが強く、カラット数が増すほどこの特性が顕著にあらわれます。したがって、輝きの違いに敏感な人や、宝石に詳しい人には見分けられる可能性があります。
モアサナイトの優れている点
その見た目から、モアサナイトはよくダイヤモンドと比較されます。では、モアサナイトがダイヤモンドよりも優れている点とは何なのでしょうか。今回は、代表的なモアサナイトの魅力を5つ、ご紹介します。
耐久力
モアサナイトのモース硬度は9.25〜9.5と、ダイヤモンドに次いで硬い宝石です。ダイヤモンドは油分に弱いため、日常的な手入れを怠ると輝きが曇りやすいことが一般的です。
一方で、モアサナイトは油分に強く、美しい輝きが長持ちしやすいという長所があります。完全にメンテナンスフリーではありませんが、ダイヤモンドよりも簡単な手入れだけで、その状態を保つことができます。
価格
お手頃な価格も大きな利点の一つです。モアサナイトは、同じカラット(重さ)のダイヤモンドと比べて、その10分の1の価格で購入できます。
例えば、結婚指輪の場合、結婚式や新婚旅行にお金をかけたい方に最適でしょう。また、自分や他人への贈り物の場合、品質にこだわりながらも他の費用のために節約したい方などにぴったりです。このように、さまざまな人にお勧めできる宝石と言えます。
虹色の輝き
モアサナイトは、光の屈折率(RI values)と虹色の光の分散(Fire)の両面で、ダイヤモンドよりも高い数値を誇ります。特にファイアは、ダイヤモンドの約2.5倍と、その差は歴然です。
光がさまざまな波長で宝石を透過するため、宝石全体に美しい虹色の輝きが生まれます。これらの性質により、モアサナイトはダイヤモンドを超える輝きを持つといわれています。
衝撃耐性と熱耐性
モアサナイトを構成している炭化ケイ素は、化学的に非常に安定した物質です。ダイヤモンドは、特定の方向へ割れやすい劈開性があります。しかし、モアサナイトに劈開性はなく、衝撃への耐性に優れています。
また、ダイヤモンドよりも高い熱耐性を持ち、約1800度の高熱にも耐えられるとされています。ダイヤモンドが耐えられる温度は約800度であることを考えると、その差が歴然であることがわかります。
環境への配慮
一部のダイヤモンドは、採掘過程で悪質な労働環境や大規模な環境破壊、さらには戦争や紛争の資金源として取引される問題をはらむことがあります。
一方で、モアサナイトは人工的に作られるため、これらの問題に直面せず、ダイヤモンドよりも環境に配慮された選択肢と見なされることも珍しくありません。そのため、商品の背景に関心を持つ人々は、天然ダイヤモンドよりも、モアサナイトを選ぶ傾向があるようです。
モアサナイトの欠点
ダイヤモンドであれば高価で手に入りにくい、真珠であれば水に晒せないなど、どのような宝石にも欠点があります。ここでは、モアサナイトの欠点を3つ、ご紹介します。
人工石であること
今まで発見された天然のモアサナイトは、隕石などから採取されることが多く、宝石として使用できないほど少量であるといわれています。その希少さは、「宇宙(星)からの贈り物」といわれるほど、地球上で見つかることは滅多にありません。
そのため、現在流通しているモアサナイトは、人工的に作られた合成石です。天然石であることにこだわりのある方には、この事実が欠点として映るでしょう。
ダイヤモンドに見えづらいこと
モアサナイトとダイヤモンドは、非常に酷似した見た目をしていますが、モアサナイトにはカラット数が増すほど(つまり大きくなるほど)、虹色に輝く光が顕著にあらわれる性質があります。
そのため、大きなモアサナイトがあしらわれた宝飾品の場合、ダイヤモンドだと見られにくい可能性があります。また、宝石の知識に豊富な人や、輝きの変化に敏感な人にも、見抜かれる可能性があるでしょう。これらは、ダイヤモンドの代替品として使用したい方には、欠点になると考えられます。
認知度が低い
アメリカを中心に、海外では結婚指輪に選ばれるほど、モアサナイトは高い人気をほこります。しかし、残念ながら日本での知名度は高くありません。
過去にはダイヤモンドと誤認され、一部の質屋などで混乱を招いたこともあり、モアサナイトはダイヤモンドの偽物と見なされることもあります。そのため、モアサナイトの本来の良さが伝わらず、誤解が広まってしまう可能性があることは、好ましいとは言えません。
モアサナイトの価格相場
1カラットあたりのモアサナイトの価格相場は、アクセサリーに加工される前の状態(ルース)で、約1万円前後とされています。この価格は仕入れ先によって変動することがありますが、宝石を購入する時には、ルースではなく指輪やネックレスなどに加工された状態であることが一般的です。
ジュエリー品にモアサナイトが装飾であしらわれている場合、使用される金属の素材に応じて、価格に差が表れます。例えば、リングの素材にはゴールドやプラチナ、シルバーなどが使用されますが、それぞれの素材によってジュエリーの価格も異なります。
モアサナイトジュエリーを選ぶ時のポイント
ジュエリーを購入する際、長く愛用したいと考える人がほとんどだと思います。そのためには、どのポイントに注目すれば良いのでしょうか。購入後に後悔しないためのポイントを3つご紹介しますので、ジュエリー選びの際には、ぜひ参考にしてみてください。
4C評価を確認する
ダイヤモンドの品質を確かめる方法として、まず4Cの評価を確認することが挙げられます。モアサナイトも同様に、その品質を4項目のグレートで評価した4Cが存在します。
ただし、モアサナイトの4CはGIAのような国際機関が基準を設けているわけではなく、販売店の裁量に一任されているため、確かな信憑性があるとは言えません。
品質保証書があるか確認する
品質保証書は、名前の通り宝石の品質を保証する書類のことです。一般的に、4Cの評価が記載された証明書は鑑定書と呼ばれ、品質保証書とは区別されます。
品質保証書があると、品質の保証だけでなく、返品やクリーニングなどのアフターサービスを利用できる場合もあるため、保証書を発行してくれるジュエリー店を選びましょう。もし品質保証書を発行してくれない場合は、品質を重視していない販売店であると考えられます。
意匠を確認する
ジュエリー品で重視されるポイントは、宝石や素材だけではありません。例えば、純度の低い金であっても、デザインを重視し、多くの人に愛されているロイヤルゴールドと呼ばれるジュエリー品があります。
モアサナイトでも同じように、愛着を持って、長い期間身に着けられるよう、細部にまでこだわったジュエリー品を選ぶと良いでしょう。
モアサナイトのお手入れ方法
モアサナイトは油脂が付着しにくいため、頻繁にクリーニングをしなくても輝きが曇らず、綺麗な状態を維持しやすい特徴があります。他の宝石と比べると、管理が簡単な宝石と言えるでしょう。
もしモアサナイトが汚れてしまった場合は、中性洗剤を溶かしたぬるま湯に浸し、柔らかいブラシで優しく洗いましょう。また、モアサナイトは衝撃にも強いため、超音波洗浄機を使っても問題ありません。
まとめ
ダイヤモンドに似た特性を持ちながらも、モアサナイトには独自の魅力があります。その強い輝きは、あなたの人生を一層華やかに彩ってくれることでしょう。機会があれば、特別な一品として、ぜひモアサナイトを選んでみてください。