ペリドット~8月の誕生石
ジュエリーショップなどでよく目にする誕生石。時代によっては誕生石を婚約指輪として贈ったりしたので、身近な言葉としてよく耳にしていると思います。ペリドットは8月の誕生石として有名ですが、そもそも誕生石とは一体何なのか簡単にご説明いたします。
●誕生石
1月から12月までの1ヶ月単位で定められた宝石の事で、自分の生まれた月の宝石を身に着けていると宝石にその身を守られる、という慣習を示します。古くは旧約聖書に出てくる祭司の胸当てにはめられていた12種の宝石という説や、新約聖書に出てくる神殿の土台に使われた12種の宝石という説など様々です。18世紀頃には誕生石をお守りとして身に着ける習慣が始まったようです。1912年にはアメリカのジュエラーズ・オブ・アメリカ(宝石商組合)によって広められ、日本でもそれを基準に全国宝石卸商協同組合が独自に制定しました。しかし業界での統一が難しかった事から改めて2021年に改訂を行い、全部で29種類の宝石が誕生石として制定されました。ここでは各月の誕生石を簡単に説明いたします。
●1月:ガーネット
「ガーネット」和名は柘榴石。ラテン語で種を意味するグラナタスにちなんで名づけられました。ガーネットは色の多様性が特徴的で、色によって名前が追加され、アルマンディン、パイロープ、スペサルティン、グロッシュラーなどがあります。代表的な色は赤。
●2月:アメシスト、クリソベリル・キャッツアイ
「アメシスト」紫水晶と呼ばれるクオーツ系の宝石。聖書に出てくる12の宝石の1つで、熱を加えるとシトリンに変化します。紫の濃淡があり、ジュエリーだけでなく球状などの置物としても人気があり、かなり大きなサイズで産出されます。
●3月:アクアマリン、サンゴ、ブラッドストーン、アイオライト
「アクアマリン」青色のベリルで名前はラテン語で海水を意味します。その名のとおり昔から水場に生きる人や海運関係の人のお守り石としても愛されてきました。透明度が高くまさに海の水を宝石にしたようなアクアマリンは古代エジプトの時代からジュエリーとして重宝され、その色もパステルブルーからライトグリーンとまるで春の海のような瑞々しい宝石です。
●4月:ダイヤモンド、モルガナイト
「ダイヤモンド」言わずと知れた宝石の王者。世界で最も有名な宝石です。ギリシャ語で「征服されざる」「無敵」というアダマスが名前の由来で、和名では「金剛石」と呼ばれています。宝石の中でも最も硬いモース硬度10を誇り、石言葉は「洗浄無垢」。また最近ではカラーダイヤモンドが注目され、その色によっては価格が高騰します。
●5月:エメラルド、ジェイダイト(ヒスイ)
「エメラルド」サンスクリット語で「緑色の石」という語源を持つエメラルド。和名は翠玉などとも言われ、鮮やかな色合いそのものを指し示します。エメラルドは上質なものが古代インカ帝国で産出され、装飾などに多くを使われていました。
●6月:真珠、ムーンストーン
「真珠」有機質の宝石の代表格とも言える真珠。一般的に天然真珠と養殖真珠の2種類がありますが、市場にあるもののほとんどが養殖真珠です。種類もアコヤ、白蝶、黒蝶、マベ、淡水と豊富です。養殖真珠の父とも言われているのが真珠ブランドミキモトの創業者である御木本幸吉である事はあまりにも有名な話です。現在の美しい真珠が宝石として楽しめるのも養殖真珠の発展に支えられている事は間違いありません。
●7月:ルビー、スフェーン
「ルビー」鉱物コランダムの一種で主に赤色のコランダムがルビーとされます。ルビーの由来はラテン語で赤という意味を持つ「ルフス」です。希少性も高く、特に2ctを超えるルビーは価格も高騰します。そして最も評価が高いルビーはミャンマー産のものです。ルビーの赤は太陽であり生命そのもの。ただ美しいだけでなく、命とも言える存在感こそルビーの真骨頂です。
●8月:ペリドット、サードオニックス、スピネル
「ペリドット」別称参照
●9月:サファイア、クンツァイト
「サファイア」鉱物名コランダムの宝石名で赤のルビー以外はほとんどサファイアと呼ばれます。その多色性から「サファイアに無い色はない」とまで言われます。またダイヤモンドの次いで硬い宝石でもあり、ジュエリーとしての永続性から見ても大変好まれる宝石です。誕生石の観点から見るとこの場合のサファイアは「ブルーサファイア」にあたり、濃く透明度が高いものが最高級品と言われます。
●10月:オパール、トルマリン
「オパール」種類が豊富な事でも有名なオパール。特に「プレイオブカラー(遊色効果)」と言われる色の変化が特徴的な、その色合いに価値が決まります。特に最高品質のブラックオパールは市場でもなかなか目にする機会がなく、希少価値が高いと言えます。他にも母岩がついた状態のボルダーオパールや炎のような赤色を持つファイヤーオパール、乳白色のホワイトオパールなどは手軽に購入できるものが多いです。また遊色効果を持たないコモンオパールもあるのでその多様性が魅力の1つと言えます。
●11月:トパーズ、シトリン
「トパーズ」石英より少し硬いケイ酸塩鉱物で和名は黄玉。フッ素やアルミニウムを含むことから様々な色の種類を持ち、宝石としては淡褐色のものが良いとされています。加熱処理や放射線照射で色に変化を持たし、宝石としてのバリエーションが豊富です。モース硬度は8ですが強い衝撃に弱く、亀裂が入る事もあるので取り扱いにも注意が必要です。
●12月:トルコ石、ラピスラズリ、タンザナイト、ジルコン
「トルコ石」別名ターコイズとも呼ばれ、不透明な宝石として代表格にあたります。宝石としての歴史も深く、数千年以上も昔から装飾品の1つとして人々の身を飾ってきました。ちなみにトルコ(国)からトルコ石の産出はありません。ではなぜその名がついたのか、諸説がいろいろるので断定は難しいですが、ヨーロッパ諸国に持ち運ばれる際、トルコを経由した事が一つの理由と言われてもいます。
ペリドットという宝石とは?
古代エジプトにはペリドットという宝石が存在していたと言われています。それだけ長い歴史の中で愛されてきたペリドットという宝石は一体どんな宝石なのでしょうか。ペリドットは古代太陽神に繋がる宝石として奉じられていました。独特の爽やかなグリーンカラーは透明感があり、瑞々しい葉の煌めきが感じられます。また昼だけに留まらず夜にもその美しい煌めきを確認する事ができるので、古代ローマ人からは「夜会のエメラルド」「夜のダイヤモンド」などと呼ばれてきた宝石です。
●ペリドットの性質
鉱物学的には「カンラン石」の一種で、その中でも宝石としての価値があるものを「ペリドット」と呼ばれています。モース硬度は6.5-7.0。元々は紅海の中にあるセントジョンズ島から採掘されていましたが、現在は既に鉱脈は枯渇し、採掘そのものが禁じられています。現在はアメリカのハワイやアリゾナ州、中国やミャンマーなどが産地となっています。特にミャンマーは良質なペリドットが産出する事でも有名です。ペリドットはマグネシウムを含む苦土橄欖石と鉄を含む鉄橄欖石が混ざりあって出来ており、含まれる割合によって黄緑色や褐色、黒色になります。宝石として珍重されるペリドットは苦土橄欖石を90%以上占めているものです。
●ペリドットの石言葉
宝石にも花言葉のようにその石に込められた意味があります。記念に贈る宝石にはその石言葉を強く意識したものをセレクトする人もいるので、家族や恋人、友人などに贈る場合に参考にするのも楽しいかもしれません。ペリドットの石言葉は「夫婦の幸福、平和、安心」と言われています。直向きな心を示すなどといった意味もあるので、夫婦で持つペアジュエリーにペリドットを使うのも良いかもしれません。
ペリドットの値段
ペリドットは世界中に産地が広がり、その産出量も決して少なくありません。なので比較的気軽に手に入れる事ができる宝石です。しかし中には透明度が高くその色も深いオリーブグリーンになると価格に変化が出ます。ペリドットは火山の噴火などの溶岩に含まれる事が多く、急激な温度変化で結晶が割れてしまう事が多い宝石です。その為ひび割れの無いノンクラックペリドットで、かつ大粒のペリドットは市場でも高い価格になる事も珍しくありません。また産地によって価格が異なります。アメリカのアリゾナ州で採れるペリドットは深くて綺麗なグリーン色のものが多く採れますがその価格は決して高くありません。
やはりペリドットの最高ブランドはミャンマー産でしょう。色石は透明度が重要になるので、ミャンマー産で透明度の高いペリドットが人気となります。あまり目にする機会が無いノルウェー産のペリドットもそのレア度によって値段が高くなる事もあります。また、ペリドットはダイヤモンドといった他の宝石や、貴金属で金やプラチナ枠のジュエリーで楽しむ事が多い宝石です。よって値段の価格帯はそれらの総合ポイントによって変化したり、価格が決まったりします。もちろん宝石としてのペリドットは大きさや色、透明度やカットデザインにも左右されるので、まずはご自身の気に入るペリドットを見つける事から始めてみましょう。
ペリドットの保管方法
値段の高いペリドットを手にしたとしても、その保管方法や取り扱い方を間違ってしまうと、宝石の魅力が損なわれてしまう事があります。まずはその保管方法や取り扱い方を知った上で美しいペリドットを手に入れてください。
●ペリドット扱い方との保管方法
ペリドットは他の繊細な宝石に比べると紫外線や水などに強い性質を持ちます。宝石の中でも比較的扱いやすい宝石です。しかしその産出方法からもわかるようにクラックというひび割れが入っている物が多いので、外からの強い衝撃などには弱い性質があります。その点は十分にご注意ください。また光や水には強いですが、酸性のものには強くありません。酸性の特徴的なものは「汗」です。使用した際に汗が付くのであれば、使い終わった後に必ずお手入れをしてから保管しましょう。お手入れ方法はまず乾いた布(ジュエリー用)で優しく汗を拭く採ります。その際に汚れなどが見られた場合はぬるま湯などに中性洗剤を少し入れ、優しく擦ります。そのあとはぬるま湯でですすいでください。乾いた布で水気もしっかり拭きましょう。
ペリドットの種類
ペリドットそのものに多くの種類があるわけではありません。色の多様性という観点から見てもトパーズやサファイアなどとは一線を画します。一般的には黄色味がかかったオリーブグリーンが最高品質と言われており、濃い緑色でかつ透明度の高いものに価値があるとされます。ではちょっと珍しいペリドットをご紹介しましょう。
●ペリドットキャッツアイ
キャッツアイ効果が見られるペリドットです。キャッツアイ効果とは猫目石と呼ばれるキャッツアイ(宝石)のように中央に光のラインが入る事です。これは別名シャトヤンシー硬貨とも言われ、様々な宝石で見る事ができます。その光のラインがペリドットでも見える場合があり、その宝石をペリドットキャッツアイと呼びます。宝石の内包物とカット面によって見られる効果ですが、宝石によってはかなり高額になる場合があります。ただペリドットの場合はそれほど価値が付きません。一種のコレクターストーンとして楽しんでほしい一品です。
●パラサイト隕石
ペリドットは実は地球以外にも存在するのはご存じでしょうか。こちらは大変珍しい鉱石です。宝石として宇宙に存在すると言われているのはペリドットとモルダバイトくらいでしょうか。隕石は流れ星として地球に落ちますが、大気圏に入ると通常は燃え尽きてしまいます。しかしまれに巨大な隕石が落ちてくる事もあり、それらは世界各国で確認されています。そしてその隕石の中に緑色の鉱物がついているのが確認されました。1972年のロシアです。これが初めて確認された宇宙からのペリドットです。ただ滅多に見かける事はありませんので、くれぐれも偽物にはご注意ください。地球のパワーで誕生するペリドットが宇宙にも同じように存在するのかもしれないと考えるだけで少しわくわくしますね。
まとめ
ペリドットは誕生石に選ばれるくらい、歴史や知名度がある宝石です。またその輝きも大変美しく、まさに人々を魅了するだけの理由がある宝石です。しかし産出量などの観点からダイヤモンドや貴石と呼ばれる宝石に比べると大変お求めやすい価格帯になっています。リングやネックレスはもちろん、イヤリング・ピアスやブレスレットといった普段から愛用したいと思うジュエリーの際に選ぶと大変重宝する宝石です。また8月生まれの方であれば様々なジュエリーで所有しても良いかもしれません。お守りとして、精神的にサポートをしてくれる事でしょう。