パールの種類について
まずパールといっても一括りではなく、産地や生産方法、形状によって様々です。パールとは主に、アコヤ貝などから作られる宝石の総称です。冠婚葬祭で使う場合やファッションアイテムとして使う場合、はたまたプレゼントに考えている場合など、それぞれ利用用途によって選べるのも特徴の一つと言えます。それでは、それぞれのパールの特徴をいくつかご紹介します。
◆アコヤ真珠
アコヤ貝から産出される、最も親しみのあるパールです。こちらは主に海水域でつくられ、
日本では養殖も盛んに行われています。今ではアコヤ真珠の大半が日本で製造されています。また色味は基本的にはホワイト系がメインですが、国内の市場ではピンク系のフォーマルな場で利用できるものが人気な傾向にあります。また、サイズについては10mmに満たないものが多く、9mmを超えるものでもアコヤ真珠の中では大振りなサイズと言われています。
◆黒真珠(ブラックパール)
黒蝶貝から産出されるもので、つくられるようになってまだ50年ほど比較的新しい品種と言えます。主な生産地はタヒチ近海となっています。
カラーはブラックだけではなく、緑やグレー、赤みのあるものなど様々な色味をもっています。その中でも希少価値のあるブラックパールは「ピーコックグリーン」と呼ばれています。あくまでも天然ものにのみつけられる名前で、人工的に着色したものとは全く別物です。
◆白蝶真珠
白蝶貝から採れる、サイズもアコヤ真珠に比べておおぶりなものが多いパールです。
主にオーストラリア近海であったり、インドネシアやフィリピン沖など海外での生産が盛んです。産地によってカラーが異なり、青みがかった「シルバーリップ」と呼ばれるカラーもありますが、特に希少価値が高いのは黄みがかったものや金色がかかった「ゴールドリップ」と呼ばれるカラーのものです。
◆半球真珠(半形真珠)
通常のパールとは対照的に、半球の形をしたパールです。日本では奄美大島近海での養殖が盛んに行われています。マベ貝に直接半球の核を挿入することで真珠層を重ねていき、生まれるものになります。また、日本で初めて半球パールの養殖に成功したのはパールジュエリーではお馴染みの「ミキモト」創設者の御木本幸吉さんです。
マベ貝の真珠層は他の貝に比べて極めて薄い結晶からなることから、独特な虹色に輝く半球パールが誕生します。その美しさから評価も高いのが特徴です。
◆淡水パール
その名の通り、海水域ではなく淡水域でつくられるパールの総称です。日本では主に琵琶湖などで養殖が行われており、イケチョウ貝から作られます。また、生成される形状は主に楕円形のものが多く、中には涙型(ティアドロップ型)や細長いスティック型など、真円よりも変わった形状が多いのが特徴です。
海水域でつくられるパールに比べて、数もたくさん作ることができることや、高品質なものが生まれる確率も低かったことから、最近まではあまり評価されてきませんでした。最近では養殖技術も向上した為、真円の淡水パールもつくられることがあり、その評価も高まっています。
パール購入時のポイント
パールを初めて購入するとき、何を基準に選びますか?それは人によって様々だと思いますが、金額で選ぶのか?デザインなのか、お店やブランドなのか、何を参考にしたらいいかわからない、そういった方に購入時のポイントをいくつかご紹介します。
●デパートでの価格を目安に
真珠は個体差やカラーも様々ありますので、決まった金額がありません。なので、展示会や即売会などで本来は高値なものがこのお値段です!と謳われているものは、大体が通常価格よりも割高なケースがあります。また即売会などでは、即決をしないことが重要なポイントになります。
また真珠の専門店は数多くありますが、海外の方や旅行客向けのお店も割高になるケースが多いので、注意が必要です。
「今だけ〇〇%オフでご購入いただけます!」「今日だけ特別な価格です」「購入いただけるならさらに割り引きますよ」と言われたら、つい…ということもありますが、そういう割引商法こそ要注意です。
デパートで販売されている価格が標準的な価格になりますので、その場で即決はせず見極めることも重要です。強引に売りつけてくるお店ほど要注意と言えるでしょう。
●いろいろなお店を見て決める
先ほど即決しないことにも触れましたが、真珠には定価がないことからお店によって価格も様々です。1つのお店でたくさんの真珠をみて決めるよりも、同じものでもお店によってはお買得なケースもあります。いくつかお店を回ってみることで、価格はもちろんですがデザインや品質も比較して、より素敵な真珠に出会うことも可能となります。
●鑑定書やブランドで決める
パールは国内外でつくらていて、それぞれ品質やデザイン、ブランドも多種多様です。これ!と決めたブランドで選ぶのはもちろんですが、パール専門店などでどれがいいものかわからないとき、参考にできるのは鑑定書です。鑑定書とは販売店ではなく鑑定に特化した第三者機関が認めたものにのみ発行されるものです。ただし、鑑定機関も様々ありますので、どこの鑑定機関が発行しているものか、そこが重要なポイントになります。
主に真珠の鑑定機関で有名なところですと、真珠化学研究所や真珠総合研究所などが挙げられます。しっかり信頼のおける鑑定機関の発行している鑑定書がついているかどうか、見極めるのもポイントです。
お店からもらう鑑別書や保証書では、意味がありませんので必ず鑑定書の有無は確認する必要があります。
パールの見分け方
さて、パールの種類をいくつかご紹介しましたが、実際に手元にあるものがどのパールなのか?もらったパールが本物なのか?どうやったら見分けられるのか、簡単なポイントをいくつか集めてみました。見ているだけでは分からなかったものも、いくつかのポイントを押さえると見分けることが可能になるかと思います。
●イミテーションパール、フェイクパールとは
イミテーションやフェイクって言葉は聞いたことがあるかもしれません。いわゆる「偽物」ですとか模造品と呼ばれるものです。代表的なものに、コットンパールや貝パール、ガラスパールなどがあります。
真珠とは全く異なる方法で製造され、似たようにつくられたものの総称です。
●本物の真珠とイミテーションパールの見分け方
よくある見分け方では、真珠同士をすり合わせるとザラザラするのが本物、ツルツルするのは偽物、と調べても出てきますよね。また、持ってみると偽物は重い。であったり、使われている金具で判断する、など。でも、熟練の鑑定士でなければどのくらい擦り合わせるのか分からなかったり、程度によっては傷つけてしまう可能性もあります。
そこでより簡単なポイントとしては、真珠ひとつひとつの穴の「断面」をじっくり見ることです。本物はきれいに処理された断面になっていますが、イミテーションパールは加工時のバリが残っていたり、ボコボコしていることがあります。
●確実な判断はプロに任せる
上記で案内した方法はあくまでも参考になるため、せっかく本物でも誤ってぞんざいに扱ってしまってはもったいないので、購入したお店であったり、ジュエリークリーニングのお店など、プロの方に確認するのも一つの方法です。ただし、いくらプロの方であってもお客様側から依頼がなければ、イミテーションかそうでないか伝えることはしないとのことですので、気になる方はそっと教えてもらうことが得策でしょう。また、ご依頼があればお店を通じて鑑定機関で鑑定していただくことも可能である場合がありますので、気になる方は確認してみるのも一つの手段と言えます。
パールの評価基準
ひとくちにパールといっても、一体どのようなパールが価値があるのか、どういったものが高く評価されるのか、よりよいパールを選ぶにはどこに気を付けたらいいのか。たくさんの条件がある中で、代表的なポイントをいくつかご紹介します。
このポイントをふまえると、知らなかった頃よりもさらに魅力的なパールに出会えるかもしれません。
●パールの大きさ
やはりパールの重要なポイント、サイズ。大きくて真円であればあるほど高価とされています。アコヤ真珠はあまり大きく育たないことが特徴なため、7mmや8mmのサイズで構成されたネックレスなどが高値になることもあります。天然や養殖どちらも貝の中で長い月日をかけて生成されるため、より大きく美しいものが評価が高くなります。貝を開けるまできちんと育っているか分からないため、カラーや大きさなど条件が揃うのは稀です。
●パールの形状
パールといえば、やはり美しい真円のもの。半球状のものなどもありますが、美しい真円であればあるほど、価値は高くなります。人の手で丸くつくるものではなく、何層も組織が重なり合ってできるものなので、真円はまさにパールの真髄と言えます。しかし、近年のファッションアイテムの一つにもなっている淡水パールやバロックパールなどは真円ではなく、あえて不揃いであったり形状の異なるパールが魅力として販売されることもあり、真円で評価されるものはあくまでも鑑定書がつくような品物が多いといえます。
●パールのキズの有無
自然がおりなす産物なので、取り出す際にも細心の注意が必要ですが取り出す前からキズがついているものもあります。サイズがいかに大きく真円であっても、層が剥がれていたり、少しでもキズがあるものは評価が下がってしまいます。いかに見た目が美しいものであるか、キズ一つないものを世に出す必要がありますので、キズがあるもの、ないものでは評価もグンと変わります。通常のジュエリーと一緒にしまっていると、ジュエリー同士で干渉してキズがついてしまうことも少なくありません。保管状態もパールへのキズに影響があるため、細心の注意が必要です。
●パールの輝き(テリ)
最後に、パールはやはりどの角度からみても美しい輝きがあることが重要です。中でも虹色に輝きを放つものほど希少価値も高くなります。また、アコヤ真珠の中でも高評価とされているのは「花珠真珠」と呼ばれています。鑑定機関にもよって評価基準も異なるため、花珠だからすべてが高評価になるものでもないので、注意が必要です。
パールは何層にも組織が重なってつくられており、その層がより厚くよりいい品質で仕上がっているか、この2点の条件がそろって初めて美しい輝きが生まれます。
輝きにはそれぞれ名称もあり、アコヤ真珠の花珠にも2種類ありホワイト系の輝きのものには、オーロラ花珠という名称があります。また、オーロラ花珠の中でもさらに輝きの強い一級品には「オーロラ天女」とつけられます。オーロラ花珠として鑑定されるためには、輝きの測定値などからなる厳しい審査基準をクリアする必要があり、その基準を満たすものは非常に稀なため、最高品質ともいえます。
上記以外にもポイントはありますが、代表的な要素をご紹介しました。より素敵な真珠選びの参考にしていただければと思います。
パールのお手入れ方法
素敵なパールジュエリーを手にしたら、やはり気になるのはそのお手入れ方法や保管方法ですよね。せっかくいいものを購入しても、ぞんざいに扱ってしまってはパールを傷めてしまうことも、、、。そうならない為に、大切なポイントをご紹介します。
●使わないときの保管方法
購入時についてきた専用のジュエリーボックスに保管しましょう。その際は、高温多湿な空間は避けて、タンスなどでそっと保管しましょう。真珠は非常にデリケートなアクセサリーなので、保管時の劣化やキズを防ぐためにも一つにつき一つの場所を与えて保管しましょう。タンスなどでの保管の際は、防虫剤などの近くにはおかないように注意しましょう。防虫剤の成分が真珠に影響することがあります。
●使用後のお手入れ
真珠は非常にデリケートな性質をもっていますので、使用後は清潔な柔らかい布で優しく拭いてあげましょう。あくまでも「柔らかい布」が重要です。ティッシュなどでは傷がついてしまう可能性があります。強くこすらず、一粒ずつ丁寧にお手入れすることで、購入時の綺麗な状態を保つことが可能になります。パールの仕立てた方法にもよりますが、早くても2年に一度、長くても4年に一度は糸を交換しましょう。糸を交換するだけでも
パールが美しくよみがえります。また、人の汗や皮脂にも弱いのはもちろんですが、水分も真珠にとっては天敵になりますので、水洗いは避けて汗をかいたときはより一層お手入れを丁寧に行うことが重要です。
最後に
今回はパールにはどのような価値があり、どういうものがあるのかご紹介しました。ご自宅にあるものやこれから買うものをどのように選ぶべきか、少しでも参考になればと思います。今ではパールは日本だけでなく、国内外で長年親しまれています。価格帯が決まっていないことから、購入時は即決しないことやカラーや形状で価値が変わることもあります。お値段も気軽に手に入るものから一級品まで様々です。このようにパールの価値は様々な条件から決まっています。今まで何気なく使っていたものが何の真珠なのか、どの国でつくられているのか、どのように誕生したのか、気になっている方も多いかと思います。ご家庭に一つあれば冠婚葬祭どちらも使えるジュエリーとしては珍しいとも言えます。少し奮発していいものを長く使う、ファッションの一環でイミテーションパールでいい、といった多様な選択ができるようになったのも、養殖などの技術の進歩のおかげと言えるでしょう。