「ダイヤモンド」、永遠を映す純潔の象徴
地球上で最も硬い物質であるダイヤモンド。Diamondという言葉はギリシャ語の「Adamas=征服されない、壊れない」という言葉に因みます。ダイヤモンドは炭素を元素にもつ鉱物で、この炭素が共有結合と呼ばれる強い結びつきで結びついているため、比類なき硬さを備えているのです。ダイヤモンドは特定の方向に割れやすい性質(へき開性)があるため、かち割ることはできても、研磨をするということは不可能と思われていました。
・地球と人智のコラボレーション
しかし、15世紀にベルギーでベルケムという職人が「ダイヤモンドをダイヤモンドで研磨する」という方法で、ダイヤモンドの研磨を発明すると、高貴に光るダイヤモンドは王侯貴族など時の権力者に愛される宝石となります。
また、ダイヤモンドが眩い輝きを放つのは、高い屈折率を持っているためであり、ダイヤモンドにおける光の屈折を最大限に引き出すのが、マルセル・トルコウスキーが発明した「ラウンドブリリアントカット」です。これは現在私たちがダイヤモンドといわれてパッとイメージする、丸みをおびた形状のカットで、57面にもなる断面(ファセット)が、光学上もっともダイヤモンドの輝きを効果的に引き出します。
現在、ダイヤモンドには4Cと呼ばれる世界共通の評価基準があります。これはColor(色)、Carat(カラット:重量)、Clarity(透明度)、Cut(カット)という4つのCの観点からダイヤモンドを鑑定し、総合的にグレーディングするというものです。世界共通の価値基準なので、4Cによって高い基準をもつ石は、世界どこでも高い価値があるものと認められます。また、ダイヤモンドは4月の誕生石で、結婚10周年と60周年の宝石です。
愛のお守り「ルビー」と誠意の象徴「サファイア」
燃えるような赤い輝きをもつルビー。Rubyという言葉は、ラテン語の「rubens/ruber=赤い」という言葉に因みます。一方、天空のような鮮やかな紺碧色の印象が強く、語源的にもラテン語の「sapphirus=青い」という言葉に因んでいるサファイア(Sapphire)ですが、サファイアには青以外の色合いのものも存在します。
ルビーもサファイアも、実は鉱物学的には同じ「コランダム」と呼ばれる鉱物に分類されます。ではルビーとサファイアはどのように区別されるかというと、実はシンプルに色の違いにより分けられています。深紅の赤色を持つものはルビー、それ以外の色のものはサファイアと呼ばれます。コランダムは酸化アルミニウムを元素に持つ鉱物で、これに酸化クロムが混入すると赤いルビーとなり、鉄やチタンが混入すると青味を帯びたサファイアとなります。コランダムは非常に硬い鉱物としても知られており、鉱物の硬度を示すモース硬度においては9と非常に高く、ダイヤモンドの10に次ぐ硬さです。
愛を象徴するルビーは、いつの時代もロマンティックな宝石として愛され、カラージェムストーンとしては、常に最も高価な石の一つです。サファイアは聖書にもたびたび出てくる神聖な石で、イギリス王室では代々王や女王が着用しています。ルビーは6月の誕生石で、15回目と40回目の結婚記念日の宝石で、サファイアは9月の誕生石であり、結婚5周年と45周年の宝石でもあります。
・自然が描き出すインクルージョン
自然界から産出される宝石にはインクルージョンと呼ばれる不純物が内包されています。通常宝石は、不純物が少なく透明度が高いものほど価値が高いとされますが、インクルージョンは時として奇跡的な美しい模様を描き出します。針状のインクルージョンが星状に広がっているものは「スター効果(アステリズム)」と呼ばれ、絹織物のような繊維状のインクルージョンが広がるものは「シルクインクルージョン」と呼ばれ、ルビーやサファイアに付加価値を与えます。
再生や希望を宿す「エメラルド」
エメラルドは、その豊かな緑色の色合いと希少性で知られ、再生と希望を象徴する宝石です。Emeraldの語源はギリシャ語の「smaragdos=緑の宝石」に由来し、時とともに発音が変化してEmeraldとなったといわれます。エメラルドは、何世紀にもわたって王族の間で愛された宝石で、特にエジプトの女王であるクレオパトラが、エメラルドを愛したことで知られています。ケイ素やベリリウム、アルミニウムを構成元素にもつ鉱物で、美しい緑色はクロムやバナジウムを含むことによって生まれます。エメラルドは5月の誕生石で、55回目の結婚記念日の宝石です。
・エメラルドカットはその繊細さゆえ
エメラルドというと四角いカットに仕立てられることが多いです。このカットは、その名もエメラルドカットと呼ばれます。エメラルドはダイヤモンドやルビー、サファイアに比べて硬度が低く、カットによってフラクチャー(ひび割れ)が生じる可能性が高い宝石です。
また、緑の中に広がるインクルージョンは「ジャルダン(庭園)」と呼ばれ、インクルージョンが多い宝石としても知られています。こういった脆弱性やインクルージョンの多さといった課題を克服して、エメラルドの美しさを際立たせるのに理想的とされるのが、スクエアフォルムに仕立てるエメラルドカットなのです。
まとめ
ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドという四大宝石について紹介しました。それぞれ個性や歴史、象徴性があるので、持つ人のパーソナリティに合わせて選ぶ楽しさがあります。