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限りある資源ダイヤモンドの成り立ち
天然のダイヤモンドが生成される上で、3種類の異なる生成過程があります。過程は異なりますが、いずれも共通して特異な現象だといえるでしょう。現代において私たちが目にするダイヤモンドは、これらの過程の中のいずれかで生成されたものです。
地球の深部マントルで生成される
ダイヤモンドは純粋な炭素のみでできている鉱物です。地球内部のマントルにある高温高圧の環境下で、押さえつけられた炭素が結晶化することで誕生しました。
そして噴火によりマグマ(溶岩)と共に一気に地表近くまで押し上げられ、急激に冷えることでダイヤモンドが生成されます。地表で急速に冷却されたマグマは、キンバーライト岩石に変化します。そして、このキンバーライト岩石内にダイヤモンドが含まれており、それを採掘するのです。
地殻の変動で生成される
地殻変動により地下の岩石が動くことで、ダイヤモンドが地表に運ばれたと考えられています。またサブダクション帯(沈み込み帯)と呼ばれる、2つの地殻プレートが相互に衝突し、片方のプレートがもう片方のプレート下に沈み込む地域があります。この過程で炭素がマントルに戻され、高温高圧の条件下により、ダイヤモンドとして結晶化する場合があります。
隕石の衝突で生成される
地球に巨大な隕石が衝突すると、その衝撃でダイヤモンドの生成に必要な、高温高圧の環境が作り出されました。しかし隕石の衝突により生まれたダイヤモンドは、サイズが小さく低品質であるようです。
新しいダイヤモンドの誕生は自然界では難しい
地球上にある天然資源の一つであるダイヤモンドは、限りがある資源です。何故なら、新たなダイヤモンドが自然の力で生成されるには、数百万年から数十億年かかるからです。またダイヤモンドを地表まで押し上げていた火山活動は、すでに数千万年前に終わっています。
その希少性から天然ダイヤモンドの価値は増すばかりです。
ではどうやって採掘されるのか
ダイヤモンドの採掘方法は、鉱床の位置や性質、地域の規制に応じて選択されます。高度な技術と環境への配慮が必要です。
地下鉱山採掘
地下に存在する鉱床を掘削して採掘する方法です。主な地下鉱山採掘方法は「シャフト鉱山」と「斜坑鉱山」の2つです。
シャフト鉱山は、鉱床に到達するために、垂直または斜めにシャフト(坑道)を建設し、深い鉱床でダイヤモンドを採掘します。シャフトは地下深くに建設され、鉱床に向かって延びています。鉱夫や鉱石を運ぶためのエレベーターまたは斜面が、シャフト内に設置されます。
斜坑鉱山は、水平または斜めに斜坑(坑道)を掘り、浅い鉱床でダイヤモンドを採掘します。この方法は、地下深くまで掘る必要がないため、比較的浅い鉱床に適しており、坑道の建設や鉱石の運搬が容易です。
パイプ鉱山採掘
地面に大きなクレーター(穴)を開けて採掘する方法です。噴火の際に地層を押しひろげた溶岩が、冷え固まると円柱状のパイプ状になります。溶岩の中にはダイヤモンドを含むキンバーライト岩石があり、そのため「パイプ鉱山」と呼ばれるようになりました。パイプ鉱山は、地下鉱山よりも比較的浅い深さに存在しています。
ダイヤモンド鉱床は、地層や土壌に覆われているため、最初にこれらの覆いを剥がす作業が行われます。地表の土壌や岩石を削り取り、露出した鉱床の周りに巨大なクレーターを形成します。このクレーター内でダイヤモンドを採掘します。
漂砂鉱床採掘
水底で発生する漂砂鉱床から採掘する方法です。自然による風化や浸食によって岩石が砕かれ、河川や海に流れ出し堆積した場所を「漂砂鉱床」と呼びます。ダイヤモンドを含むキンバーライト岩石も混ざっているため、そこから回収することでダイヤモンドを分離、選別します。
漂砂鉱床は天然の水流によって形成されるため、鉱床の位置は変動することがあり、採掘の効率に影響を与えることがあります。
天然ダイヤモンドが発掘される国
ダイヤモンドは多くの国で採掘されています。その中でも特に高名な生産国をご紹介しましょう。
異次元の輝きロシアンブルー「ロシア」
世界最大のダイヤモンド生産国といえばロシアです。その採掘量は群を抜いています。国内にはミール鉱山(Mir mine)を初めとした多くの大規模な鉱山が存在し、10年連続世界第1位をキープしています。ブルーを含んだブルーダイヤモンド、通称「ロシアンブルー」など、高品質のダイヤモンドが多く産出されています。
美しいものはアフリカから「ボツワナ」
ボツワナ共和国はアフリカ大陸で最大のダイヤモンド生産国であり、特に「光の王子」と名高いジュワネング鉱山(Jwaneng)は世界で最も大きなダイヤモンド鉱山として広く知られています。
アフリカ産のダイヤモンドは、その原石は高品質で大きく、研磨された際に最も美しく仕上がるとされています。ダイヤモンドの専門家たちの間で、「美しいものはアフリカから」という格言が生まれるほど、その品質に対する信頼は厚いのです。
アイスロードの彼方へ「カナダ」
カナダで産出されるダイヤモンドは実に高品質で、特に透明度とカット品質に優れています。
極北の地にあるダイアヴィック鉱山(Diavik)へと至るアイスロード(氷の道)は、一年のうちほんの約2ケ月間しか利用できません。足を踏み入れるには過酷な環境だといえるでしょう。
紛争ダイヤモンド「コンゴ」
アフリカ中央部に位置するコンゴ共和国は、豊富な地下資源を持っています。産出地としてムブジマイ鉱山(Mbuji-Mayi)が有名で、工業用途に使われる比較的低価格のダイヤモンドが、豊富に採掘されることで知られています。
一方、内戦が続くアフリカでは紛争の資金源となってしまい「紛争ダイヤモンド(コンフリクト ダイヤモンド)」と呼ばれ問題視されていました。現在はキンバリー プロセス(紛争ダイヤモンドではないと証明する)が導入され、一定の効果は得られているようです。
情熱と技術により人の力で誕生したダイヤモンド
人工ダイヤモンドは、科学と技術の進歩によって生み出される驚異的な宝石です。自然界の奇跡的なプロセスを再現することに成功し、現在では研究室や専用の製造プラントで生産されます。また、合成ダイヤモンド、ラボグロウン ダイヤモンドとも呼ばれ、宝飾としての魅力だけではなく、多様な用途によって私たちの生活に貢献しています。
人工ダイヤモンドの2つの製造方法
人工ダイヤモンドは、「HPHT法(高温高圧法)」または、「CVD法(化学気相成長法)」の2つの主要な方法で製造されます。
HPHT法(高温高圧法)
HPHT法は、高温(約1,500°C)および高圧(約5~6 GPa)の環境下で行われます。これは自然界でのダイヤモンド生成条件に近い条件です。炭素原料(通常、石炭や石油の粉末)をダイヤモンドの結晶種と一緒に、高圧セル内に配置し、高温高圧下で結晶成長を促進させます。結晶化しやすい方法である反面、製造されるサイズは限られてしまいます。
CVD法(化学気相成長法)
CVD法では、ガス中の炭素原料を超高真空環境内で分解し、基質表面上にダイヤモンドの層を成長させます。この方法は比較的低い圧力と温度で行われます。大量生産にも適し、サイズや純度など汎用性も高いため、質の高い人工ダイヤモンドを製造することができるスタンダードな方法です。
世界での人工ダイヤモンド製造と多様な用途
アメリカ、ロシア、中国、インドなど、人工ダイヤモンドは世界中で製造されています。これらの国々は、異なるアプローチと技術を用いて、世界の需要にこたえています。競争が激しいこの分野では、品質管理と技術革新が非常に重要な要素となっています。
人工ダイヤモンドはその硬度と耐久性から工業用途に広く活用されています。非常に硬く、高い光学的なその性質から、航空宇宙、軍事、防衛、医療検査、治療、電子機器などのハイテク分野でも需要が高まっています。言い換えれば、人工ダイヤモンドは多岐にわたる産業で活用され、その需要は今後も増加するでしょう。
ダイヤモンドの採掘量と長期的な展望
ダイヤモンドは限られた資源です。この希少な鉱石の新しい鉱床の発見は困難ですが、技術の進歩によって新しい埋蔵量が見つかる可能性があります。また人工ダイヤモンドの技術が進化しており、天然ダイヤモンドと見分けがつかないほど高品質の人工ダイヤモンドが市場に登場しています。消費者は美しいダイヤモンドを、リーズナブルに手に入れやすくなるメリットを期待できるでしょう。
したがって、ダイヤモンドの採掘量は、新しい鉱床の発見や需要の変動、環境への影響、人工ダイヤモンドとの競争など、多くの要因に左右されます。ダイヤモンド産業はこれらの要因を注視し、持続可能な方法で採掘を行うことが重要です。
まとめ
今回はダイヤモンドについて、採掘や製造に触れて少しお話ししました。天然ダイヤモンドは国によって採掘量が異なり、また採掘方法や品質も大きく変わります。自然資源のため鉱床の枯渇への懸念もあり、持続可能な採掘が注目されています。一方で人工ダイヤモンドの技術も進歩しています。世界中を魅了してやまないダイヤモンドを、ぜひ楽しんでみてください。