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ダイヤモンドの歴史
何十億年も前に地球の内部で作られたダイヤモンドは、その強さと輝きで古代文明を魅了しました。その美しさと象徴性は文化や大陸を超え、ダイヤモンドは今日も私たちを魅了し続けています。
ギリシャ語で不屈や不滅を意味する「adamas」
Diamondという言葉はギリシャ語で、不屈や不滅を意味する“adamas”に由来します。この語源は、「ダイヤモンドはすべての所有者よりも長生きする運命にあるため、ダイヤモンドを真に所有することは不可能である」ということを意味しているようです。
古くから、人類はダイヤモンドの起源に想いを馳せてきました。ダイヤモンドは、詩的でインスピレーションに富む物語の主題となっています。
ヒンドゥー教徒は、雷が岩に落ちたときにダイヤモンドが誕生すると信じ、ギリシャ人は、地球に落ちた星の破片であると考えていました。
一方、ローマの哲学者たちは、それを神々の涙と見なしていました。プラトンによれば、ダイヤモンドは天の精霊を具現化した生き物でした。
エジプトでのダイヤモンド
貴重であると同時に力強いものとして認識されているダイヤモンドは、常に象徴性を持っています。ファラオの時代には、アンク(上部が丸い十字架)の真ん中にダイヤモンドが置かれました。
アンクは、生命を表わす象形文字でもあり、エジプト十字とも呼ばれます。ヒンドゥー教の神話では、火、毒、悪霊から身を守るお守りと考えられ、ローマ人には強さと勇気を与えました。
ローマ軍兵士たちは、戦闘中にダイヤモンドがちりばめられた革の胸当てを身に着けたといわれます。
ダイヤモンドはインドで発見された
ダイヤモンドは、インドで約2,500年前にゴーダーヴァリ川とクリシュナ川の間のゴルコンダ地域で、最初に発見されたと考えられています。インドの高官は、それらを神聖な物と見なしていました。
当時、カットと研磨はまだ習得されておらず、原石のダイヤモンドは、お守りと見なされていました。それらがジュエリーに組み込まれたのは後になってからで、最初は男性だけが着用していました。
10世紀以降、西洋諸国は交易路を通じてこれらの地域のダイヤモンドを手に入れられるようになり、ダイヤモンドはハイステータスの象徴となりました。
ダイヤモンドの原石を最大限に活かす
14世紀の終わりにイタリアで前衛的なダイヤモンドカット技術が開発され、特にファセットカットなどの新しいカットが発明されるようになりました。
そして15世紀になるとベルギー・ブルージュの宝石職人ルドウィック・ヴァン・ベルケム(Lodewijk Van Berken)が、ダイヤモンド パウダーでコーティングされた鉄の円盤「フカイフ」で、ダイヤモンドを研磨するダイヤモンドの研磨法を発明します。
こうしてダイヤモンドの研磨法が確立されると、様々な形状のダイアモンドが誕生していきます。
プリンセスカット
ダイヤモンドはその輝きと美しさで世界中の人々を魅了してきましたが、その輝きを引き立てるのはそのカット方法です。ダイヤモンドの中でも特に人気の高いカット方法の一つが、「プリンセス・カット」です。
プリンセスカットは輝きの王道
プリンセスカットは正面から(台座にセットされている場合は上から)みると正方形に近い形状にみえるカットです。研磨によって生み出されるファセットは実に76面にもなるといわれます。
この細かく数の多いファセットは細やかな反射を生み、まるで印象派の絵のような精緻な光の舞いを演出します。20世紀頃から人気のあるカット方法で、現在でもプリンセスの名に相応しく、婚約指輪や結婚指輪としても人気の高いダイヤモンドカット方法です。
輝きを引き立てる様々なカット方法
ダイヤモンドカット以外の、代表的なダイヤモンドカットについて紹介します。長い歴史の中で培われてきた、美しい輝きを生み出すためのカット方法です。
ローズカット
ローズカットは、ジュエリーの世界で最も古く、最もユニークなカットの1つです。バラのつぼみのように可憐な印象で、ファセット(面)を備えた最初のカットの1つであるローズカットは、当時のダイヤモンドの世界に革命をもたらしました。
ダイヤモンド研磨法の発明者ベルケムは、当時隆盛を誇ったブルゴーニュ公国の王シャルル突進公の注文で、このローズカットで加工した「フロランタン」「ボーサンシー」というダイヤモンドを製作しました。
17世紀はフランスで「光の世紀」と呼ばれ、知識として明るさ(=明晰さ)や技術進歩により光源の増加による明るさがもたらされ、ダイヤモンドのファセットが眩く反射するためローズカットの美しさが一層輝きました。
ラウンドブリリアントカット
ラウンドブリリアントカットは今日最もポピュラーなダイヤモンドと言えるかもしれません。我々がダイヤモンドと言われてぱっと思い描く、あの形です。
20世紀にダイヤモンド研磨師で数学者のマルセル・トルコウスキーによって考案された57面体あるいは58面体からなるカット方法で、これは光学上最も効率的に光を反射するダイヤモンドカット方法でもあります。
クッションカット
19世紀前半よりみられるカット方法で、ピロー(枕)カットとも言われます。その名の通り角の丸い四角形のカッティング方法です。原石の原型を活かして効率よく研磨できるカット方法でかつ、柔和で優しい印象となります。
ホワイトカラーダイヤモンド以外にもカラフルなファンシーカラーダイヤモンドにもよく使われるカットです。
バゲットカット
20世紀初頭にパリの一流ジュエラー「カルティエ」が考案したとされるダイヤモンドカット方法です。バゲットはフランスパンの一種として我々になじみがある言葉ですが、フランス語では「棒」という意味です。
その名の通り細長い長方形のシェイプで、20世紀に流行したアールヌーヴォーに代わって登場する、直線的なアールデコの到来を感じさせるモダンな形状です。眩い輝きだけでなく、洗練された形状が凛々しい印象に仕上がります。
ペアシェイプカット
ティアドロップカットとも呼ばれます。涙状の形状で、楕円の一端が尖った形状です。ユニークな形状と涙を彷彿させるポエティックなニュアンスが、女性の首元を飾るネックレスなどとしても人気のあるシェイプです。
まとめ
ダイヤモンドの歴史と、ダイヤモンドカットの多様性について紹介いたしました。世界一硬い鉱物であるダイヤモンドは、古くは研磨することができませんでしたが、中世になって研磨方法が発見されると様々な形状にカットされるようになりました。
同じダイヤモンドでも、カットによって全く異なる印象になるので、着用する人の個性やシーンに応じてカットを基軸にして選んでみるというのも面白いかもしれません。