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メモリアルダイヤモンドとは
メモリアルダイヤモンドとは、故人の遺灰や遺髪を原料にして人工的に生成したダイヤモンドです。そもそもダイヤモンドは、地中深くの高圧な環境下で結晶化した炭素です。人間の骨や毛髪も炭素なので、遺灰や遺髪を精製することで、人工ダイヤモンドの原料にすることができるのです。
モーニングジュエリー
メモリアルダイヤモンド以外にも、故人を偲ぶためのアクセサリーは存在します。深い悲しみを表した黒いアクセサリーや、遺灰や遺髪をペンダントなどのジュエリーに入れて身に着けられるようにしたものは「モーニングジュエリー(モーニング:Mourning=喪)」と呼ばれます。特に19世紀、ヴィクトリア女王が夫のアルバート公を亡くした深い悲しみから、モーニングジュエリーを常に着用していたことで、一般にも知られることとなりました。
メモリアルダイヤモンドが求められる時代背景
メモリアルダイヤモンドが発達したことには現代という時代背景もあります。
核家族化
現代の日本、とくに大都市では大家族が一緒に暮らすということが少なくなっており、核家族化が進んでいます。その為、一族代々のお墓が遠方にあったり、お墓がなかったりして納骨が難しくなるということがあります。
死生観の変化
また、死生観の変化に伴って、供養の仕方が多様化しているということも要因の一つです。日本には無宗教の人も少なくありません。先述のような理由でお墓が近くにない場合、故人を身近に感じていたい人の中には「手元供養」と呼ばれる、遺灰の一部あるいは全部を手元に保管する人もいます。また、故人にゆかりのある地に遺灰を撒く「散骨」という供養方法を選択する人もいます。こうした供養方法の多様化もメモリアルダイヤモンドという選択肢を生んだ背景と考えられます。
メモリアルダイヤモンドの生成方法
メモリアルダイヤモンドはどのように作られるのでしょうか?メモリアルダイヤモンドを製造している、スイスのロニテ社の生成方法を例に紹介いたします。
遺灰や遺髪の分析
もっとも最初の段階では、原料となる遺灰や遺骨がダイヤモンド生成に十分な炭素を含有しているかどうかを分析します。炭素の含有量は場合によって異なるので、少し多めに用意できるのが理想です。
ナノ結晶化
不純物を取り除くための特殊な溶液を、遺灰や遺髪と混ぜていきます。この混合物はガスを満たした環境に置かれ、ナノレベルに粉末化されます。不純物は溶液と結合し、遠心分離機によって除去されます。その後、特殊な技術処理を施して、原料内の炭素以外の要素を最小限に減らします。
高温真空精製
更に不純物を除去するため、原料を超高温に加熱します。この過程で酸素を抜き、不活性ガスを充てんして、原料の酸化を防止します。そして2度の炭素抽出を行います。場合によっては化学物質を溶解・蒸発させて固体炭素を得るために、密閉設備において高圧処理を行う場合もあります。
湿式化学処理による炭素精製
その後、重金属を除去しながら純度を高めるために、原料は多湿な化学的環境におかれます。オートプログラムによって、温度、運転速度、化学薬品の量を管理して、炭素の純度を高めていきます。 この精製ステップが完了すると、炭素の純度は99.99%に至ります。なおこのステップで純度レベルが99.99%に達していない場合は、残りの不純物を除去するために他の精製ステップが実行されます。
HPHT(高温高圧)式ダイヤモンド生成
抽出された純粋な炭素は、炭素の結晶である層状グラファイトに結晶化され、円筒形になります。この筒状グラファイトは超高温・超高圧な環境に置かれるため、保護材によって慎重に守られてからダイヤモンド合成機に設置されます。HPHT(高温高圧)処理によるダイヤモンド生成は、地下100㎞ほどの地中深くの高温高圧なダイヤモンド生成環境を、人工的に再現して天然のダイヤモンドとほぼ同質のダイヤモンドを生成することができるというものです。メモリアルダイヤモンドの大きさにもよりますが、生成には数日から数ヶ月かかります。
メモリアルダイヤモンドの最も自然な色合いは黄色い結晶ですが、生成過程での異なるプロセスや追加処理を行うことで緑や赤、青や無色など様々な色に生成することができます。無色透明な結晶を得ることが、最も高度な技術や長い期間を要するため、最も高額となります。なお、メモリアルダイヤモンドも通常のダイヤモンドと同じように様々なカットを施すことができます。
まとめ
遺品や遺髪から炭素を抽出して生成するメモリアルダイヤモンドは、多様化する故人供養の一つとして注目を集めています。人工ダイヤモンドの生成技術が進歩している現在において、天然のダイヤモンドと遜色ないほどに高品質なものを生成することができます。決して安いものではありませんが、ダイヤモンドの眩い輝きに、大切な人を想うことができるのは、値段以上の価値があります。