ダイヤモンドの原石とは
採掘されたままで、まだ加工がされていない状態の結晶を原石といいます。ダイヤモンドの原石は、火山の噴火や地層の変動などにより、約200キロ下の地中で、炭素に高熱と高圧が加わることで作られます。採掘されたばかりの原石は、白っぽい色合いをしていて、普段よく目にするダイヤモンドのような輝きは放っていません。ダイヤモンドの原石に熟練の職人が加工を施すことで、はじめて美しい輝きを放つようになるのです。ダイヤモンドのカットや、色・輝きはそれぞれ異なりますが、原石の形もいくつかの種類があります。代表的なダイヤモンドの原石をご紹介していきます。
ダイヤモンドの原石の種類
人の手で加工されていないダイヤモンド原石は、ラフ・ダイヤモンドやダイヤモンド・ラフ等と呼ばれております。これはダイヤモンド原石の総称で、この中から宝石として使用されるもの、工業用になるもの等に分けられ、原石の品質によっていくつかの名称に分けられます。以下は、宝石として使用されるダイヤモンド原石の種類の名称です。
●ソーヤブル
宝石用のダイヤモンド原石の中で、最も高品質なものがソーヤブルです。綺麗な正八面体の形をしており、透明度も非常に高い原石です。ソーヤブルは1つの原石からダイヤモンドを2つ生み出すことができます。「ソーヤブル」という名前は、のこぎりで切るという意味の「saw」と、~ができるという意味の「able」を合わせてつくられたものです。
つまりソーヤブルは、のこぎりの刃でも切断することができる原石という意味からきていることになります。この後に説明するメイカブルやニアージェムは、ソーヤブルよりも品質が劣るため、スムーズに切断することが難しい原石です。ソーヤブルはきれいに形が整っているからこそ綺麗に切断することができ、切断したそれぞれの原石をダイヤモンドに仕上げることができる優良な原石ということになります。ソーヤブルは質が良いため、大変希少で、宝石用のダイヤモンド原石の約20%程度とされています。
●メイカブル
メイカブルは、作ることを意味する「make」と、~ができるという意味の「able」を合わせて作られた名前で、「(ダイヤモンドを)作ることができる原石」という意味があります。ソーヤブルの次に質のいいダイヤモンド原石です。メイカブルの形状は氷砂糖のようにごつごつとしていて、それぞれが不定形のため原石の形に合わせたカットを施していく必要があります。
ですから、ダイヤモンドの仕上がりが職人のカット技術に左右されやすいと言えます。また、1つの原石に対して作られるダイヤモンドは、1つだけのことが多いようです。メイカブルはニアージェムも含めて、宝石用ダイヤモンド原石の80%を占めており、多くのダイヤモンドはメイカブルから作られています。
●ニアージェム
工業用に利用されるダイヤモンド原石の品質に近いため、~に近い「near」と宝石を意味する「gem」を合わせた「ニアージェム」という名前が付いております。品質としてはメイカブルに大きく劣っており、透明度が低かったり炭素の黒点(内包物)が入っていたりするため、ブライダルリングや高額のジュエリーに用いられることはまずありません。ですが、内包物を取りのぞく処理や表面のトリートメントを行うことで、低価格帯のジュエリーに用いられることはあります。
ダイヤモンドへの加工
では、ダイヤモンドが輝きを放つために、どのように加工されるのかをご紹介したいと思います。ダイヤモンドを加工する方法はいくつかありますが、一番シンプルな方法として、同じ硬度のダイヤモンドを利用する加工法があります。この方法は、ダイヤモンドの原石の結晶面に応じて熟練された技術が必要になり、円盤の上に粉末状のダイヤモンドを付着させ研磨します。
ただ、最近では、ダイヤモンドの加工は「レーザー加工」が増えてきています。ダイヤモンドにレーザーを局所的に照射すると、炭酸ガスとなって消滅する性質を利用してダイヤモンドの形を作るのが、レーザー加工です。こちらのレーザーにもいくつか種類があるのですが、主にYAGレーザーと呼ばれるレーザーが活用されており、ダイヤモンドに穴をあけたり、ダイヤモンドを切断するなど、高い汎用性があるのが特徴です。
高品質なダイヤモンド原石の見分け方
高品質なダイヤモンド原石の見分け方は、形や色で判断することができます。原石の基本的な形は八面体になりますが、そこからさらに結晶の形によって品質が分かれていきます。その中でも、特に美しい形とされているのが「ストーン」と呼ばれる形になります。ストーンの特徴はピラミッドを上下に貼り合わせたような八面体の原石で、研磨すると美しいダイヤモンドになります。主にラウンドブリリアントカット用として使用される形です。
次に「シェープ」と呼ばれる形で、ストーンに比べると結晶にややばらつきがあるものの、品質はストーンの次に高い形となります。不規則な結晶で、形もいびつな原石である「クリーベッジ」は、その原石ごとに合わせたカットが施されます。三角形の形に近くて厚みの薄いのが「マクレ」は、ハートシェープやトライアングルシェープにカットされることの多い形になります。最後に厚みが薄く板状のものが「クラット」です。こちらはテーパードシェープやバケットシェープにカットされます。
ダイヤモンドの価値について
ダイヤモンドの品質を決める「4C」。ダイヤの評価基準として最もポピュラーなのが4Cです。カラット・カット・クラリティ・カラーの4つの要素の頭文字をとったもので、それぞれダイヤモンドの価値を決める重要な要素と言われています。
●カラット
ダイヤモンドの重さです。「~カラットのダイヤ」などと表現されることがあります。1カラットは0.2gです。このカラットが大きいほど、ダイヤの価値はアップします。
●カット
ダイヤモンドの研磨の仕方のことです。ダイヤは原石の状態からカットを施して整えていきますが、このカットの技術が高いほど、仕上がったダイヤの価値が上がるのです。
●クラリティ
透明度のこと。キズや内包物が少ないほど、クラリティのレベルが上がります。
●カラー
ダイヤモンドの色のことです。無色透明であるほど価値が上がり、黄色みが強いほど価値が下がります。
これら4Cをチェックすることで、ダイヤの基本的な価値がわかります。4Cは加工技術によっても大きく左右されることがあり、例えば、同じ原石でもカットを施す職人の技術が高ければ高いほど精巧になり、価値を上げることができます。
しかしながら、加工技術だけではどうにもできない重要な要素があります。それがこれまで紹介してきたダイヤモンドの原石なのです。先述したとおり、原石自体の品質が高ければ高いほど価値が上がり、その原石を技術力の高い職人がカットすることで、最高品質のダイヤモンドへと生まれ変わるのです。逆を言えば、原石の品質が低く、加工する職人の技術もあまり高くないものは、例え高品質なダイヤモンドと同じカラットだったとしても、その価値は、数倍から場合によっては数十倍以上の差が生まれてしまうのです。
原石としての魅力
これまでは、ダイヤモンドに加工する際の価値などについてを紹介してきましたが、ここではダイヤモンドの原石そのものの魅力についても紹介していきたいと思います。最初に紹介したとおり、ダイヤモンドの原石はそのままでは光り輝いておらず、実際には黄色味を帯びたものが多いので、無色で透明なものほど価値の高い原石と言えます。また、それ以外にも、黄色・青・ピンク・緑・グレー・黒色までさまざまな色の原石が存在します。この色付き原石は宝石にならずに工業用になるものや、安価なビーズとして扱われるものもあります。透明で美しく希少性が高いものは「ファンシーカラー」と呼ばれ、宝石として無色よりさらに高値で取引されることもあります。
そんな様々な色や形をしたダイヤモンドの原石は、加工せずとも十分に魅力があるのではないでしょうか。加工することで光り輝くダイヤモンドはいつの時代も女性を魅了してきましたが、原石の加工されておらず、自然なままの姿の原石は、遙かなる悠久の時と、地球規模の巨大なエネルギーによって生み出された原石は、二つとして同じ物のない唯一無二の存在ともいえます。
原石の楽しみ方
原石とはほぼ掘り出した時のままの状態の天然石で、自然そのままの姿を楽しめるのが何より大きな魅力です。小さな原石はコレクションケースに並べて飾ったり、大きな原石はインテリアの一部として魅力的な雰囲気をかもし出してくれます。浄化作用やヒーリング効果を一層高めてくれます。原石はありのままが魅力です。少し汚れたからと磨いてしまうと、せっかくの原石の魅力も半減してしまいますので、原石を扱うときは十分に注意しましょう。
ダイヤモンド原石の買取について
ダイヤモンドの原石は、一般的な宝石買取業者では買い取ってくれないことがほとんどです。ダイヤモンドのルースの転売は容易いものの、原石であると研磨して転売する必要があるからです。研磨は職人に依頼するため、その費用が掛かります。巨大な原石を買い取ったからと言っても、研磨してみるとほとんど残らず一割程度のダイヤモンドルースしか生み出すことができないこともめずらしくはありません。原石のダイヤモンドから、どれだけのルースが取れるかを正確に見極められる買取の鑑定士もほとんどいません。
こうした理由から、一般的な宝石買取ではダイヤモンドの原石買取は拒否されるわけなのです。ダイヤモンドの原石の買取は非常に限られていると言わざるを得ません。しかしきちんとした原石買取業者であれば、鑑定の精度も確かでありきちんとした適正価格で買い取ってもらえます。ダイヤモンド専門業者であったり、メレダイヤモンドまで加工するような専用業者であったりすると買い取ってくれることがあります。
しかし、巨大な原石であるからと言って高額査定を期待してはいけません。宝石やダイヤモンドは研磨してこそ、価値が注がれ高額査定されるものなのです。原石の査定額は大きい原石でも期待しすぎると危険であることを心得るべきと言えます。そして一般人に巨大なソーヤブルはあまり流通しないので、買取の必要に迫られることもほとんど有り得ません。
まとめ
ダイヤモンドは近年、採掘量が減少し、希少性が高くなっています。そこで原石でも買取することが見受けられるようになっているのです。しかし原石は宝石市場では価値がなく、研磨を施して初めて価値が生まれます。それゆえダイヤモンドの原石の買取は、専門のダイヤモンド業者で行う必要があります。原石は巨大であっても高額査定は期待できません。やはりダイヤモンドは磨いてこそといえますね。