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「カリナンダイヤモンド」とは?
カリナンは、原石が見つかったプレミア鉱山の所有者、トーマス・カリナンに由来した名称です。カリナンダイヤモンドとは何か、歴史から見ていきましょう。
最初はガラスと間違えられた
諸説ありますが、カリナンが最初に発見されたとき、その大きさと透明度からダイヤモンドの原石とは判断されなかったようです。ガラスと間違えられたといわれるほど、カリナンの原石は前代未聞の大きさだったのです。
ロンドンとヨハネスブルグで初めて展示されましたが、高価でなかなか買い手がつきませんでした。その後、イギリス国王のエドワード7世の誕生66周年をお祝いする記念品として贈られます。
しかし、大きすぎたため当時の技術ではカットの方法が分からなかったそうです。
研磨職人は作業中に緊張して気を失った
エドワード7世の依頼を受け、オランダのアムステルダムにあるアッシャーはカリナンの原石を研磨することになりました。当時、アッシャーはダイヤモンドの研磨技術で世界最高峰とされており、なかでも卓越した技術を称賛されたアンリ・コーという研磨職人がこの仕事を任されます。
アンリ・コーはまず巨大な原石を2つに割ろうとしましたが、カリナンは英国王が所有する世界最高のダイヤモンドでした。極度の緊張のため、彼は2度意識を失ったそうです。1度は原石を打ったとき、もう1度は原石がうまくきれいに割れたことを確認したときでした。
研磨作業のためにアッシャーは新しく作った装置を用意しましたが、当時は技術力が足りなかったため、観察や分析に時間を要しました。完成までには、3人の研磨職人が1日14時間の作業で8カ月かかったとされています。
カリナンダイヤモンドの特徴
カリナン原石のサイズと特徴、どこに保存されているのかを紹介します。原石のサイズをイメージすると、発掘された当時は非常に珍しかったことが分かるでしょう。
カリナンダイヤモンドの重さや大きさ
カリナン・ダイヤモンドは、3,106.75カラット(621.25g)という前代未聞の重さで見つかりました。大きさは長さが11cm、幅5cm、高さ6cm台だったといわれています。
原石を加工しない方が価値がありますが、極めて高価になるため買い手がつきません。また、宝石として台座にセッティングできないことから、原石をカットせざるを得ませんでした。
オリジナル価格は15万ポンド
カリナン原石は、当時イギリス植民地の南アフリカトランスバール政府が、15万ポンド(約2,300万円)で購入しました。
世界でも類を見ないこの珍しい原石には、購入価格の10倍もの保険をかけていたそうです。
英国国王に記念で贈呈される
カリナンは、南アフリカトランスヴァール政府から、当時の英国王であるエドワード7世に誕生日プレゼントとして贈られました。
当時、原石は蒸気船の船長が管理する金庫に入れられ、数人の警備員とともに輸送されたという噂が立ちましたが、実は蒸気船に積まれていたのは偽物で、本物は普通の箱に入れられてレターボックスに入れられ郵送されました。
カリナンを見て感動したエドワード7世は、アムステルダムのトップ・カッターであるアッシャー兄弟に原石のカットを頼みました。原石は9個の大きな石と、96個の小さな石にカットされます。
カリナンダイヤモンドとエリザベス王妃の歴史
原石から切り出された9個の大石のうち、当初エドワード7世とその妻アレクサンドラ王妃に届けられたのは3個だけでした。
残りの7石は、研磨を行ったアッシャーへの報酬として残されましたが、後にメアリー王妃がアッシャーから購入し、ウィンザー家の宝石として英国王室に保管されました。
1953年にメアリー女王が亡くなった後、カリナン・ダイヤモンドは孫娘のエリザベス女王が受け継いでいます。
カリナンダイヤモンドの値段は原石なら24億ドル以上の価値
カリナンは値段がつかないといわれていますが、調べてみると推定値がわかります。
原石からカットされたなかでも、最大のカリナン・ダイヤモンドは約4億ドル(約440億円)の価値があるとされています。つまり、もしカットをせずに原石の3,106カラットのままだった場合、24億ドル(約2,600億円)以上の値段が付いたということです。
英国王室所有の世界最大ダイヤ「カリナンダイヤモンド」の種類
原石を加工して切り出された9つのカリナン・ダイヤモンドは、9つとも装飾品にされ、大きさの順にカリナンIからカリナンIXと名づけられました。現在、英国王室が所有している9石のカリナンダイヤモンドは、どのようにセッティングされているのでしょうか。種類ごとに紹介します。
カリナンⅠ
英国王室に最初に届けられ、セプターに組み込まれたカリナンⅠ。「アフリカの大スター」とも呼ばれ、530.2カラット(106.04g)という大きなダイヤモンドです。
研磨されたダイヤモンドとしては、現在でも世界最大といわれています。約4億ドルの価値があるといわれるほど価値の高いダイヤモンドです。
カリナンⅡ
2番目に大きいカリナンIIは317.40カラット(63.48g)で、インペリアル・ステート・クラウン(王冠)の一部です。王冠の重さは合計で約1.4kgで、エリザベス女王は「下を向いたら首が折れる」と言ったとさわれています。
その重さのため、2016年以降は身に着けず、クッションの上に置いて国会を開くようになりました。
カリナンⅢ・Ⅳ
94.4カラット(18.88g)のカリナンIIIと63.6カラット(12.72g)のカリナンIVは、もともとメアリー女王の王冠にセッティングされていました。しかし、現在はつなぎ合わせてブローチになっています。
カリナンⅤ
カリナンVは18.8カラット(3.76g)のハートシェイプ・カットで、英国王室御用達のジュエリーです。
1911年のデリー・ダルバールでメアリー王妃が着用したプラチナ・ブローチの中央にセットされており、ダイヤモンドの周囲にパヴェ・セッティングが施されたデザインとなっています。
女王は当初、このダイヤモンドをストマッカー(ドレスの胸元につけるパネル)として身に着けていました。しかし、ストマッカーが流行しなくなってからは、ブローチとして使用されるようになりました。
カリナンⅥ・カリナンⅧ
11.5カラット(2.3g)のカリナンⅥは、エドワード7世からアレクサンドラ王妃に贈られたと伝えられています。
後にメアリー王妃に受け継がれ、6.8カラット(1.36g)のカリナンⅧにペンダントとして付けられましたが、現在はブローチとして完成しています。
カリナンⅦ
8.8カラット(1.76g)のカリナンVIIは、エメラルドと一緒にネックレスにセットされていました。メアリーはこれをより大きな94.4カラット(18.88g)のカリナンIIIと取り替えることもありました。
しかし、彼女の後継者であるエリザベス女王は、カリナンVIIとのオリジナルの組み合わせを好んでいたようです。
カリナンⅨ
カリナンIXは、ペアカットの一粒ダイヤモンドです。カリナンIXは指輪に組み込まれ、4.39カラット(0.878g)の大きな一粒ダイヤモンドリングとして完成しました。
世界最大のダイヤの原石TOP3
ダイヤモンドは、最初はインドで見つかったといわれ、当時は「インディアン・ストーン」とも呼ばれていました。また、インドでのみ発掘されると思われていました。
しかし、18世紀頃に南アフリカやブラジルでもダイヤモンドが発掘され、ロシア、オーストラリア、ボツワナなどでも見つかっています。それぞれ産出量に差はあるものの、世界中でダイヤモンドの原石が見つかっているのです。ここでは、世界で最も大きなダイヤモンド原石のサイズはどのくらいなのかを紹介します。
カリナンダイヤモンド
世界で最も大きなダイヤモンド原石は、1905年に南アフリカで見つかった「カリナンダイヤモンド」の原石です。
握り拳よりも大きく、重さも3,106カラット(約621g)と存在感があります。現在の価値に換算すると2,000億円以上の価値があるともいわれています。
セヴェロダイヤモンド
セヴェロダイヤモンドは2019年4月にボツワナ共和国で見つかりました。大きさはテニスボールほどの1,758カラットです。
ルカラ・ダイヤモンド社が発掘に成功したもので、2015年には「レセディ・ラ・ロナ」という1,109カラットのダイヤモンド原石も採掘しています。
レセディ・ラ・ロナは値段が5,300万ドル(約58億4000万円)で購入されました。セセヴェロダイヤモンドは現在、ルカラ・ダイヤモンド社のルイ・ヴィトン・ジュエリー・コレクションの一部となっています。
デブスワナダイヤモンド
2020年6月16日、ダイヤモンド会社デブスワナがボツワナで1098カラットのダイヤモンド原石を発見しました。
このダイヤモンドは、世界で2番目に大きいセヴェロダイヤモンドよりもやや軽く、世界で3番目に大きいダイヤモンドとされています。
世界一価値が高いと言われている宝石と値段
世界一価値が高いと言われている宝石は、カラーダイヤモンドです。ここでは、2つの宝石の値段と特徴を紹介します。
1カラットの価値が世界一高い宝石「オレンジダイヤモンド」
ファンシーカラー・ダイヤモンドが高価な理由は、一般的なダイヤモンドよりも極めて希少性であるためです。更に大きな石は世界でも数えるほどしかなく、オレンジ・ダイヤモンドのように高価になることもあります。
ファンシー・ビビッド・オレンジ・ダイヤモンドは、現在最も価値のあるダイヤモンドといわれています。2013年11月にジュネーブで開催されたクリスティーズのオークションに出されました。1カラットが240万ドル(約2億4,000万円)という値段で購入され、世界で最も高価なダイヤモンドとなりました。
一般的にダイヤモンドは、クラリティが高いものが高品質です。ファンシー・ビビッド・オレンジ・ダイヤモンドは、一定以上の色味を持ち、発色が良いダイヤモンドは色相名の前に「ファンシー」と呼ばれ、通常のダイヤモンドよりも高値で取引されます。
落札総額が世界一価値が高い宝石「ピンクダイヤモンド」
オークションの総額で世界で最も価値のある宝石は、「ピンクダイヤモンド」です。
この「ファンシー・ビビッド・ピンク・ダイヤモンド」は、2013年11月にジュネーブで行われたサザビーズのオークションに出され、8,302万ドル(約85億円)という驚異的な値段で落札されました。また、59.61カラットという変則的な大きさでした。
ダイヤモンドの原石について
ダイヤモンドの原石は、色や形、品質など数種類があります。ここでは、加工前の原石の特徴を解説します。
ダイヤの原石の色
ダイヤモンドは無色透明ですが、加工前の原石はやや黄色い無色です。しかし、赤や青などの色を持つダイヤモンドもあります。
これらは「ファンシーカラー・ダイヤモンド」ともいわれ、通常のダイヤモンドよりも価値が上がるものが多いです。
ダイヤモンド原石は硬いため、ダイヤモンドでカットすることで、宝石の美しい透明な輝きを引き出すことができます。
ダイヤの原石の5種類の形
ダイヤモンド原石の形は5種類あります。
・ストーン:正八面体
・シェープ:若干不規則で形に差がある
・クリーベッジ:若干不規則で形に差がある、歪んでいる
・マクレ:薄い三角形
・クラット:薄く平らな板状
それぞれの形状の特徴を活用して、宝石に加工されています。
ダイヤの原石の産地
ダイヤモンドの原石は、主に世界三大産地と呼ばれるロシア、ボツワナ、コンゴで発掘されます。
世界第2位と第3位のダイヤモンドはボツワナ産であり、大きなダイヤモンド原石トップ10のうち6つがボツワナ産なのです。ボツワナのジュワネン鉱山は、世界でも最高品質のダイヤモンドが採掘できるといわれています。
ダイヤの原石の3種類の品質
ダイヤモンドの原石は3種類に分けられ、品質によって名前が付けられています。
・最高品質のダイヤモンド:ソーアブル
・不規則な形状:メイクアブル
・宝石のようだという意味:ニアジェム
ダイヤモンドの価値の決まり方
カリナンやその他のダイヤモンドの価値はどのように判断されるのでしょうか。宝石店で購入したダイヤモンドを専門店で売る場合、買取価格を左右するポイントは「4C」です。そこで、4Cとはどういう意味なのかを紹介します。
カラット
ダイヤモンドの大きさは「カラット」だと思っている方が多いですが、実は大きさではなく重さの単位です。1カラットは0.2gであり、カラット数が大きいと価格が高くなります。
ダイヤモンドの原石は1カラット以下の小さなものが多いため、購入時に行われる鑑定でも重要な要素です。
クラリティ
クラリティとは透明度のことで、ダイヤモンドに含まれるインクルージョンの数によって透明度が決まります。
天然の原石から加工するダイヤモンドは、その多くに内包物があります。しかし、肉眼では確認できないものもあり、顕微鏡で拡大しないと見えないものも多いです。
内包物が少ないほどダイヤモンドの透明度が高いため、クラリティが高いと価値も高くなります。
カラー
無色透明に見えるダイヤモンドのほとんどは、実際にはわずかに色が付いています。
カラーはアルファベット順にDからZまでグレード分けされており、最も価値が高いのはDランクで、ランクが低いほどイエローが強くなります。
カット
カットはダイヤモンドの輝きを指し、5段階で評価されます。5段階評価の最高ランクは「Excellent」です。
さらに、カット、シンメトリー、ポリッシュのすべての項目で最高ランクだと判断を受けたダイヤモンドは、3EX(トリプルエクセレント)に分類されます。
まとめ
カリナン・ダイヤモンドは、大きくカットされ、資産価値が高く、英国王室によって厳重に保管されています。一般公開はされておらず、写真や映像でしか見ることができません。自宅に眠っている未使用のダイヤモンドがあれば、鑑定してもらえば高値で売れるかもしれないため、ジュエリーボックスの中をチェックしてみましょう。