地中から採掘されるラフ・ダイヤモンド
ラフダイヤモンドとは、研磨していないダイヤモンドの原石のことである。
ダイヤモンドは26億年前に、地下150kmの奥深いところで高温高圧のもとで結晶し、火山活動によって地表に運ばれて私達が目にすることができている。
ダイヤモンドといえば、通常は光をよく反射させるために理想とされる形に近いようにカット、研磨されていて一見皆同じように見える。ただ研磨する前の原石の状態はそれぞれに個性的で、美しい形や肌合いをしているものもあり、とても魅力的だ。
ダイヤモンドの原石の形は、一つ一つ異なっていて同じものはない。
地下で結晶した時のままの形や、火山活動によって地表に押し上げられたときの熱や圧力によって形が変化したものもある。 形は正八面体、不定形
肌合いもいろいろあり、とろっとしたスムースなもの、ガラスのようなもの、鋸のようにギザギザしたものなど様々である。
大きさは最大で人間のこぶし大から砂粒大まで様々だ。カリナン・ダイヤモンドは、3,106.5ct(621.35g)だ。 工業用も含めて10ct以上のものは全体の1%にすぎない。 ct(カラット)=0.2g
ラフダイヤモンドの品質は艶、形、肌合い、色などに左右されます。そして内包物の大きさや位置なども影響する。ラフダイヤモンドは、透明度の高いGem(ジェム)、透明な部分がわずかしかないNear Gem(ニアージェム)、不透明で宝石にならないIndusutrial(工業用)に分けられる。産出量に対する割合としては、Gemが25%、Near Gemが25%、Industrialが50%になる。
ダイヤモンドの採掘方法
地球の内部から採掘される天然のダイヤモンドは、大昔に、地球の奥深く、高熱と高圧力が同時に加わるような溶岩の中で作られたと考えられている。
このほかにも、小惑星や隕石(いんせき)が衝突した場所からも採掘されるケースがありますが、「極めて特殊な環境の中で作られる」と言っても過言ではない。
これらの場所は、人間にとって「身近な場所」とは言えないところ。天然の美しいダイヤモンドを手にするためには、ダイヤモンドが眠っている場所を見つけ、採掘作業を行う必要があるのである。
このダイヤモンドの採掘作業には、大きくわけて3つの種類が存在している。
●パンニング
古くから伝わってきたダイヤモンド採掘法の1つで、「ダイヤの採掘」と聞く、こちらの方法を思い浮かべる方も多い。ザル状の大きなお皿を持って川に入り、砂を洗い流しながらダイヤモンドを探す手法となる。とはいえ、貴重なダイヤモンドを見つけるための手間は非常に大きく、また大きな原石は見つかりにくいという特徴がある。またダイヤモンドの特徴を考えても、地表で採掘できる原石は非常に少量。このため、現代ではこの方法でダイヤを採掘するケースは非常に少なくなっている。
●パイプ鉱山
パンニングの次に主流となったのが、パイプ鉱山である。地面に大きな穴をあけて、その中からダイヤモンドを採掘する。具体的な手順にはいくつかの種類があるが、その土地の特徴に合わせてベストな方法を選択する。大規模な採掘が可能な反面、掘り進めていくと崩落などの危険性が高まる。このため、近年ではあまり行われなくなってきている。
●漂砂鉱床
低リスクで、しかも広範囲の採掘を一気に進められるのが、こちらの採掘方法の特徴で、最も新しい採掘方法となっている。ダイヤモンドを含む岩石はキンバーライトと呼ばれるが、このキンバーライトの特徴を上手に活用して採掘するのが、漂砂鉱床の特徴だ。効率よくダイヤモンド原石を採掘できる。
ダイヤモンドが採掘されている国トップ7
①ダイヤ生産世界一・ロシア
ロシアでのダイヤモンドの採掘は、18世紀にまでさかのぼる。最初の採掘は、1957年にミール・キンバーライト鉱山とそれに隣接するプレーサー鉱山からの産出である。それ以来、数多くのダイヤモンド鉱山が発見されている。現在ロシアのダイヤモンド生産の大部分は、サハ共和国、シベリア共和国のミール鉱山とオープンピット鉱山です。今日、ロシアは宝石品質ダイヤモンドの世界一の生産国であり、10年以上にわたりその地位を築いてきた。ロシア一のダイヤモンド鉱山会社グループアルロサ社は、採掘さたダイヤモンドを主にロシア、ベルギー、インド、イスラル 香港、中国にある多くのダイヤモンドメーカーに販売している。このアルロサ社及び、第二位のサハダイヤモンド社は、実質的にはロシア政府によって運営されており、その財産や土地のおよそ45%を国が所有、管理をしている。ダイヤモンドには、その品質を表す要素がいくつかあるが、その最高峰の品質として 『 タイプ 2』 と称されるものがある。ダイヤモンドの原石が地中で生成される過程で、稀に微力にホウ素を含んで成長する場合がある。この時、宝石品質のダイヤの1%の確率でブルーを含んだ、異次元な輝きを放つダイヤモンド作られる。ロシアは、この『 タイプ 2』品質のダイヤモンドの最大の産地国であり、そのダイヤを称して、ロシアンブルーといわれる。ロシア産の有名なあのネコと同じ名前である。
②埋蔵量が豊富・ボツワナ
アフリカのボツワナでは、1950年代に探鉱が始まり、1971年にダイヤモンド採掘が開始された。1980年代半ばまでには、世界で最も高品質のダイヤモンドを採掘する鉱山を所有し、世界有数のダイヤモンド生産国になった。ボツワナの鉱山からは、高品質で大型のダイヤモンド原石が多く採掘されており、10年以上にわたり、カラット重量において、第2位の生産量をキープしている。また、採掘されるダイヤモンドの平均サイズがロシア産のものよりも大きく高品質である。「世界で最も豊かなダイヤモンド鉱山」と呼ばれるジャンワン鉱山では、年間約1,000万カラットの高品質ダイヤ原石を採掘、生産している。ダイヤモンド生産はボツワナにとって最も重要な産業であり、ボツワナの総輸出額の60%、そして国内総生産の約25%を占めている。
③人気生産国カナダ
1991年に、2人の地質学者によってダイヤモンドのキンバーライト鉱床が発見されたところから、その埋蔵内容が充分商業ベースに足る品質であることが判明し、1998年に採掘か始まりまった。複数のダイヤモンド鉱山の生産ラインをオンラインで連動させることにより、カナダは急速に世界の主要ダイヤモンド生産国の1つになっていった。採掘条件が悪い鉱山や、鉱石の品質が悪い一部の鉱山は閉鎖させながらも、世界第3位のダイヤモンド生産国としてその地位を維持している。カナダのダイヤモンド鉱山のほとんどは、北部の遠隔地や寒冷地にある。そこは、一年のうちで最も寒い月に表れる氷道を、トラックで何百キロも離れた場所まで生活必需品を購入しに行かなければならないようなそんな場所である。
そのため鉱山には、一度に何ヵ月も従業員を収容し、支援するために必要な設備もすべて揃っていなければならない。これらのコストのかかる課題に直面しながらもダイヤモンド生産の成功を維持している。カナダ産のダイヤモンドは消費者に人気がある。アフリカの多くの紛争地域と違い、労働者の給料が高く、環境を守るための監督下のもと、高い安全性を確保した中で生産されているからである。
カナダのジュエリーメーカーは、カナダ産のダイヤモンドに対して証明書を発行している。証明書には原産地の鉱山、研磨された重量、ダイヤモンドのシリアル番号が記されており、これによって鉱山から小売までのカナダ認証ダイヤモンドのサプライチェーンを保証している。
④高価なダイヤ生産国アンゴラ
アフリカ・アンゴラでは、ダイヤモンドの採掘は、100年以上前に既に始まっていましたが、当時はポルトガルの植民地下にあり、それらのダイヤモンドはすべてポルトガル商人によってヨーロッパに輸出されていた。今日アンゴラは、その品質価値と採掘量において10年以上の間世界をリードするダイヤモンドの生産国の一になっている。いくつもの新しいダイヤモンド鉱床の発見と開発がなされている中で、特に有名なのが、ルカパ・ダイヤモンド社が所有するルーロ鉱山で、ここでは世界最大級のダイヤモンドが採掘されている。ここで採れるダイヤモンドは、結晶格子内の炭素を置換する窒素をほとんど含まないため、しばしば無色透明になる。ルーロ鉱山では、最も高価とされるピンクダイヤも採掘され、大型のダイヤと共に世界的に価値のある鉱山に数えられている。
⑤ダイヤ採掘発祥の国・南アフリカ
南アフリカは近代的なダイヤモンド産業発祥の地といえる。1870年代より、キンバリーの町近くの幾つかのダイヤモンド鉱山で採掘が始まった。南アフリカはその後宝石品質のダイヤモンドの大手生産国となり、1920年代にコンゴ共和国に生産量を抜かれるまで、トップダイヤモンド生産国の地位を維持した。現在は年間数百万カラットの宝石品質のダイヤモンドを採掘しているが、多くは海岸線に沿って行われている。何百万年もの間、河川の侵食により内陸部のダイヤモンドが海岸にまで運ばれ堆積物となった。
⑥ブラッドダイヤ・コンゴ
1903年にアフリカ・コンゴで初めてダイアモンドが発見された。その後10年余の間に Tsushikapa、Mbuji-Mayi, Kundelung、のそれぞれの高地に次々にダイヤモンド鉱床が発見され、1960年代には年間生産量が2000万カラットと、数量で世界最大のダイアモンド生産国となったのである。コンゴで採掘されるラフダイアモンドの95%は、黒く炭化した工業用途の品質で、平均価格も1カラット当り14~18ドルと決して高くない。ただ、世界でも稀に見る豊穣な漂砂鉱床からは土砂100トン当り500カラットと高い割合でダイアモンドが採掘される。
さて、コンゴはダイアモンド以外にも銅、コバルト、タンタル等豊富な資源が偏在する土地で、その資源を巡り20世紀を通して絶え間無い戦争の渦中にある。戦争に使う武器、弾薬を他国から購入する際これら豊富な資源がその資金源となっておりその中心にあるのが高価なダイヤモンドである。人を殺す道具の資金としてのダイヤモンドをして、ブラッドダイヤモンドと言うようになった。
ベルギーの植民地支配から独立した1960年に直ちにコンゴ動乱が勃発し、その本質は独立後もコンゴの資源を支配するベルギーと、アメリカを中心とする国連軍との間の資源の支配権の奪回戦争だ。1961年から1967までの混乱に乗じて、北に隣接する中央アフリカ共和国と、西の旧フランス領コンゴとが、ダイアモンド生産の大半を収奪していた事は公然の事実である。ダイアモンドを産出しない旧フランス領コンゴから、1967年には600万カラットものコンゴから搾取したダイアモンドが輸出されていた。
⑦海底鉱床・ナミビア
アフリカ・ナミビアでは、1908年に鉄道労働者が砂漠の砂の中に小さなダイヤモンドを見つけたのが始まりで、その発見によってダイヤモンドラッシュが起こった。ナミビアのダイヤモンド鉱床は海底鉱床で、海底から引き上げられる膨大な量の海底堆積物、からラフダイヤを選り分けて採掘されている。現在は水深140メートル以上の海域からの採掘でも、スクリーニング、ジグ装置と呼ばれる最新技術を用いて、ダイヤモンドを迅速に分離することが出来るようになっている。これにより今では海底鉱床からの採掘では世界をリードする存在になっている。この海底堆積から採掘されたラフダイヤモンドは非常に高い品質を誇っている。アフリカ大陸の内部から川に流されて来た原石は大西洋に出から沖合の流され、そして堆積した。したがって長い年月をかけて水に研磨されたラフダイヤは、硬度と耐久性に優れた状態に生成され、その多くが宝石品質になる。
まとめ
日本でダイヤモンドが採掘できない以上、新しいダイヤを手に入れるためには海外の採掘国からの輸入に頼るしかない。
キラキラと輝くダイヤモンドは、現代の女性たちの心をとらえて離さないもの。宝石の中でも圧倒的に希少価値が高いダイヤモンドは、そう簡単に見つかるものではない。海外の採掘現場で必死に採掘されている石を、私たちは購入している、というわけである。稀少性の高さと、採掘・研磨・流通にかかわる手間を思うと、価格が高いのも当然のことなのかもしれない。
ダイヤモンドの採掘は、世界中、様々な場所で活発に行われている。時代とともに採掘方法や採掘エリアは変わってきているが、多くの方がダイヤモンド採掘に関わり、美しく輝くダイヤモンドを流通させているという事実には変わりがない。
しかしほんの少しでも、「どこの国から、どんな風にして自分のところにやってきたダイヤモンドなのか」を考えてみる、より一層、ダイヤモンドの世界に親しみを持てるに違いない。