世界のダイヤモンド原石のシェアを実に90%も独占していたデビアス社
セシル・ローズは、ユダヤ系財閥であるロスチャイルド家の支援で、ダイヤモンドラッシュに沸いていた南アフリカ・キンバリー周辺のダイヤモンド鉱山を次々に買収することに成功しました。当時は、世界のダイヤモンド流通量の実に90%が、デビアス社の鉱山から産出されていました。 デビアス社は、ダイヤモンドの供給源を独占することで、ダイヤモンドの価格を安定させようとしたのです。しかしセシル・ローズが亡くなった年でもある1902年、ダイヤモンドの歴史を変えるほどの鉱山が、トーマス・カリナンによって発見されます。プレミア鉱山(現カリナン鉱山)です。この鉱脈は巨大なもので、デビアス社の所有していた全鉱山の産出量と、ほぼ同じ量のダイヤモンドを産出しました。このプレミア鉱山からは1905年に、3106カラット(621.2g)という史上最大のダイヤモンド原石が採掘され、プレミア鉱山の所有者・トーマス・カリナンにちなんで「カリナン」と命名されました。
巨大シンジケート誕生
その後にも大鉱脈がいくつか発見され、デビアス社のシェアは大幅に低下、ついには40%ほどにまでなってしまいました。 こうした状況にあったデビアス社を次の段階へ進めたのは、ドイツ系ユダヤ人のオッペンハイマーでした。オッペンハイマーは、1926 年にデビアス社の役員になり、1930年にデビアス社の会長に就任した人物です。オッペンハイマーは、ロスチャイルド財閥の支援を受けて、世界の貴金属、非鉄金属、ウランなど生産を支配するオッペンハイマー財閥を構築していました。 このオッペンハイマーが手がけたのが、ダイヤモンド生産者組合(DPA )、ダイヤモンド貿易会社(DTC)、中央販売機構(CSO)の創設です。ダイヤモンド生産者組合(DPA )は、ダイヤモンドの生産調整を行います。それをダイヤモンド貿易会社(DTC)が一括して買い上げます。集められたダイヤモンド原石は中央販売機構(CSO)が売却します。 このシンジケートにより、世界のダイヤモンド原石の80~90%が、デビアス社の支配下になりました。ダイヤモンド原石が欲しければ、デビアス社を通す以外に方法がないというような状況の構築に成功したのです。こうしてデビアス社は、世界のダイヤモンド産業をコントロールする巨大シンジケートとして君臨しているのです。
価値を維持しているのは市場を制御しているダイヤ商人
ダイヤモンドは原石の採掘から流通に至るまで、長年、南アフリカのデビアス社に支配されて来ました。同社は1888年の創業以来、ダイヤモンド原石の産地である南アフリカのダイヤモンド鉱山を次々と買収して権利を独占したり、生産調整から販売までを手がけるシンジケートの構築で、事実上、ダイヤモンド原石の市場を独占的にコントロールして来ました。このため、同社による「ダイヤモンドは特別で希少価値がある」というイメージが保たれ、高い価格で取引されて来たのです。しかし、近年ではデビアス社の手が及ばないロシアやオーストラリア、カナダ、中国などでも採掘が行われ、従来の制御が効かず、同社のシェアも減っています。事情が変わり、市場を厳格に制御して来たデビアス社の「ダイヤモンドは高価な宝石」というマーケティング戦略も、今後は崩れる可能性があるのです。
まとめ
デビアス社は、日本でも広く知られているダイヤモンドの巨大シンジケートです。設立から常に業界を牽引し、ダイヤモンドの価値を守り続けてきた功績がありますダイヤモンドを美しく輝かせるための努力は一貫しています。ライバルが多くなり業界への影響力は弱くなったものの、そのブランド力はいまだ健在です。商品の品質の高さと芸術性を誇るデビアス社はサービスも一流で、現在も世界中に多くの顧客を持っています。現時点ではダイヤモンドの価値も高く、高い価格で取引がされています。また、円安の影響で過去から比べても高額で売れるため、タンスにしまっていて使う予定がない方は売却チャンスです。