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ブラックダイヤモンドとは?
12種あるとされるカラーダイヤモンドの一つですが、その名の通り全体が真っ黒な鉱石です。簡単ですが、基本情報を表にまとめてみました。
宝石名 | ブラックダイヤモンド |
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英名 | Black Diamond |
鉱石名 | カーボナード(Carbonado)・ボルツ(Bort) |
和名 | 黒金剛石 |
色 | 黒、暗灰色、濃褐色など |
モース硬度 | 10 |
劈開性 | 不明瞭 |
原産国 | アフリカ・南アフリカ・コンゴ共和国・ブラジルなど |
宝石言葉 | 「征服」「パワー」「吸収」「自信」「革新」など |
ダイヤモンドと同等の硬度を持っていますが、なぜ「真っ黒」なダイヤモンドが採掘されるのでしょうか。名前の由来や黒くなった理由について深堀りしてみましょう。
ブラックダイヤモンドの由来
ブラックダイヤモンドと名付けられたのは、いたって単純です。
そもそもダイヤモンドの語源は、古代ギリシャ語で”不屈”や”征服されない”を意味する「adamas」が由来であるといわれています。そんな鉱物と同じ硬度で黒いことから、宝石名を「ブラックダイヤモンド」と命名したのです。
鉱石名では「カーボナード」と呼ばれていますが、形状によっては「ボルツ(またはバラス)」とも称されます。一般的に、微細な粒上の結晶が集積したものをカーボナード、針状の結晶をボルツと区別しています。どちらもブラックダイヤモンドですが、ボルツは真っ黒のため、宝飾品には向いていないようです。
ブラックダイヤモンドの特徴や黒い理由
ブラックダイヤモンドの特徴は、何といっても黒一色であることです。加えて、オニキスやスピネル、ヘマタイトなどといったブラック系の宝石にはない、輝きを放つことも美点であるといえます。
では、この2つの特性を実現するためには、どのような条件が必要なのでしょうか。そのためには「結晶構造」を知る必要があります。
宝石は鉱物であると同時に「結晶」とも呼ばれる固体です。通常のダイヤモンドの場合、結晶を構成している微細な粒子が規則正しく並んでいます。そのため、どの方角から見ても美しい輝きを放つのです。このような結晶構造は「単結晶」と呼ばれており、ダイヤモンドは炭素の単結晶からできています。
それに対し、ブラックダイヤモンドは、いくつもの単結晶が凝縮した「多結晶」構造となっています。構成している粒子が不規則に並んでおり、それにより不透明な固体を実現しているのです。実際に、ブラックダイヤモンドは炭素の単結晶が複数合わさった影響で黒くなっています。
しかしながら、それだけではこの色味や輝きを実現できません。もう一つの条件である「インクルージョン」という、結晶に内包された物質にも恵まれなければなりません。
ブラックダイヤモンドの内部には、「グラファイト」という炭素で生成される鉱物が多く含まれています。この物質が他の硫化物や鉄鉱石などと混ざり合い、均一化された黒い色味へと変わります。つまり、ブラックダイヤモンドとは、やや語弊はありますが、炭素を過剰摂取したことによって生成されているのです。
以上のように、ダイヤモンドの生成条件とグラファイトの生成条件が重らなければ、この色味は実現できません。現在は、採掘するにもほとんど見つからない状況で、ダイヤモンドを加熱・着色処理で加工されたものが大半を占めています。
天然のブラックダイヤモンドは、自然が生み出した奇跡の宝石と言えるでしょう。
ブラックダイヤモンドと黒色宝石の違い
黒色の宝石は、オニキスやスピネルなど数多くの種類が存在します。それらはブラックダイヤモンドと非常に似ており、特にスピネルは見分けるのが難しいと言われています。うっかり購入してしまうケースもあるため、注意しなくてはなりません。
もし迷ったときは、宝石を光に当ててみましょう。ブラックダイヤモンドであれば、滑らかなカットによって光をきれいに反射し、華やかな輝きを放ちます。
ブラックダイヤモンドの歴史
ブラックダイヤモンドは、発見当初から価値があったわけではありません。その禍々しい黒色から、人々に恐れられた歴史も存在するのです。どのような変遷を経て、親しまれるようになったのでしょうか。
ブラック・オルロフとの関係
ブラックダイヤモンドには「ブラック・オルロフ(Black Orlov)」と呼ばれる、呪われたお話があります。
この石は19世紀にインドで発掘された195カラットの大型で、この大きさに畏怖を覚えた人々は、ヒンドゥー教の創造神・ブラフマーの像に埋め込みました。このことから、ブラック・オルロフは別名アイ・オブ・ブラフマー(Eye of Brahma)とも呼ばれています。
しかし、このダイヤモンドは盗難にあってしまい、姿を消してしまいました。ここから、不幸の連鎖が始まります。
時は流れ、1932年にディーラーであったJ.W.パリス氏の手に渡っていることが判明しました。しかし、ビジネスの失敗によって生活が苦しくなり、彼は宝石を売却したのちに自殺を遂げてしまったのです。そして15年後の1947年、ロシア王女のナディア・ヴィギン・オルロフが所持することになりました。しかし、彼女も謎の投身自殺をしてしまいます。
この出来事がきっかけとなり、オルロフ妃の名前をとって、ブラック・オルロフという呪いのダイヤモンドが広まってしまったのです。
そんな不幸の流れを断つべく、1950年代、チャールズ・F・ウィルソン氏がブラック・オルロフのリカットを実施しました。その後、リカットされた石はさまざまなオーナーの手へ渡っていきますが、新たな自殺者が出ることはありませんでした。このことから呪いは解かれたと見なされ、現在は博物館へ展示されています。
しかし、この話には実在しない人物が登場しているなど、石の存在を認めながらも多くの疑問点が残っています。それゆえ、「逸話」や「伝説」と呼ばれているのです。
ブラックダイヤモンドの価値が上昇
ブラック・オルロフにまつわる逸話や当時の技術力では加工が困難だったことから、ブラックダイヤモンドはジュエリーとして使用することが避けられていました。特にカーナボートは、その高い硬度から工業分野で活用されていたため、ジュエリーとしての価値が見いだされていなかったのでしょう。
しかし近年、多様化するファッションによって、その価値が見出されます。「オールブラック」と呼ばれるメンズファッションとの相性の良さから、ブラックダイヤモンドのジュエリー人気に火がついたのです。
また、宝石の中で最も硬いという性質から「永遠の愛」を象徴していると言われるようになり、結婚指輪やハイジュエリーの装飾にも用いられるようになります。多くの著名人やセレブリティたちもブラックダイヤモンドを身に着けることでその知名度はより一層高まり、さらなる人気を獲得しました。
パワーストーンとしても強力な力を秘めているため、今後も人々を魅了していくことでしょう。
ブラックダイヤモンドの価値
ジュエリーとしてのブラックダイヤモンドは、現在、どれほどの価値があるのでしょうか。流通の仕組みと合わせて、その実態を見ていきましょう。
価値なしと判断される場合もある
真っ黒でありながら深い輝きを放つブラックダイヤモンドですが、実際の価値は、カラーダイヤモンドの中でも低いと言われています。
その要因は、流通で出回っているほとんどが、ダイヤモンドを加熱や着色によってブラックダイヤモンドにしたものだからです。人工処理されたものは、透明度の低いものや傷がついたものが多く、最悪の場合「価値なし」と判断されることもあります。
そのため、商品全体のデザインや状態の良さを重視しなければなりません。購入する際は、商品の「見た目」に注目しましょう。
天然ブラックダイヤモンドの価値は高い
ほとんどのブラックダイヤモンドが人工処理されている一方、生成することが難しい天然のブラックダイヤモンドは希少価値が高いです。均一で深い黒色を持つものほど高く評価され、1カラットにつき数十万円の買取が期待できます。
しかし、素人の目で天然か人工かを見極めるとなると厳しいものがあります。必ず、信頼できるプロの鑑定士に判断してもらいましょう。
ブラックダイヤモンドの値段や買取相場
ブラックダイヤモンドはダイヤモンドの中でも価値が低いですが、どのような値段で取引されるのでしょうか。買取相場の現状について解説します。
ブラックダイヤモンドの1カラットの値段
ブラックダイヤモンドのほとんどが人工処理で加工されているもののため、買取相場は他のカラーダイヤよりも安い傾向にあります。以下の表をご覧ください。
人工のブラックダイヤモンド | およそ3,000円程度 |
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天然のブラックダイヤモンド | 数十万円程度 |
通常のダイヤモンド | およそ20万円~100万円程度 |
※表に記載された金額は参考価格です。実際の買取価格を保証するものではありません。
これは、ブラックダイヤモンドと通常のダイヤモンドで1カラットあたりの買取参考価格を比較したものです。こうしてみると、その差は歴然であることが分かります。流通の多くが、品質の低いダイヤモンドをブラックダイヤモンドへ加工しているため、安価となっているのです。
しかし、天然ものであれば、希少価値の高さから、数十万円の価値が見込まれています。大きさ次第では、ダイヤモンドと同等以上の買取額も期待できるでしょう。
ブラックダイヤモンドの買取価格相場
ブラックダイヤモンドは、主にジュエリーとして加工された商品が流通しています。しかし、宝石自体にはそれほどの価値がありません。買取業者はブラックダイヤモンドを「人工で作られたもの」として見ているからです。
では、買取価格が少しでも高くなる要因はどこでしょうか。それは商品全体のデザイン性です。指輪であれば、ブラックダイヤモンドの周りにある宝石や貴金属などを含めて、総合的に評価されます。
以下の表は、アクセサリーを買取に出した場合の相場です。品質が悪ければ「価値なし」と判断される場合もあるため、あくまでも目安としてみてください。
アイテム | 買取参考価格 |
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ブラックダイヤモンド(0.37ct)のリング | およそ3万円~4万円程度 |
ブラックダイヤモンド(0.75ct)のリング | およそ3万円~5万円程度 |
ブラックダイヤモンド(~0.50ct)のネックレス | およそ3万円~4万円程度 |
※表に記載された金額は参考価格です。実際の買取価格を保証するものではありません。
ブラックダイヤモンドの価値の査定ポイント
ブラックダイヤモンドが査定に出された際、鑑定士が注目するポイントはどのようなところでしょうか。通常のダイヤモンドとは査定基準が異なるため、その違いを理解しましょう。
4C
4Cとは、ダイヤモンドの価値を公平に判断するため、国際的な宝石学研究・教育機関であるGIA(Gemological Institute of America)が発表した評価方法です。カラット(Carat)、カラー(Color)、クラリティ(Clarity)、カット(Cut)の頭文字をとって「4C」と名付けられました。
それぞれの基準にブラックダイヤモンドを当てはめた場合、どのような評価となるのでしょうか。基準内容を1つずつ見ていきましょう。
カラット
ダイヤモンドの重量を示す単位で、1カラットにつき0.2gと定められています。単純にカラット数が高ければ買取価格も高くなりますが、ブラックダイヤモンドはダイヤモンドよりも伸び幅が緩やかです。人工加工によって大量生産できる側面もあるため、カラット数が高いからといっても買取額の上昇にはあまり結びつかないのです。
天然ものであれば、カラット数が微量に上がっただけで買取価格が跳ね上がります。
カラー
通常のダイヤモンドは無色であるほど評価されますが、ブラックダイヤモンドの場合は、黒色が深く濃いものであるほど価値が高くなります。しかし、これは天然ものだけが評価される内容であり、人工加工されたものは考慮されません。
天然のブラックダイヤモンドは入手自体が困難なため、カラーによる評価は期待しないほうがよさそうです。
クラリティ
クラリティはダイヤモンドの透明度を表す指標で、インクルージョンが少ないものほど評価されます。しかし、ブラックダイヤモンドは人工・天然関係なく色味があり、不透明であるのが当たり前です。
よって、クラリティの評価は買取に考慮されないと考えたほうがよいでしょう。
カット
カットとは、原石状態のダイヤモンドを研磨・カッティングする加工技術のことです。職人たちの腕にもよりますが、カットしたときの形状や輝き方によって評価が変わります。
しかし、この指標をブラックダイヤモンドで考えた場合、影響されることはほとんどありません。カットしても、ダイヤモンドのような輝きは得られないからです。こちらも評価はないものとして考えたほうがよいでしょう。
表面の傷
ブラックダイヤモンドには、表面の傷が出やすいという弱点があります。
特に、熱処理で人工加工されているものは脆くなっていることが多く、さらに傷をつけてしまうリスクがあります。ブラックダイヤモンドの査定の中では、一番と言っていいほど影響を受けやすいため、日ごろから丁寧に扱いましょう。
天然のブラックダイヤモンドであれば、傷一つで買取額がかなり変動します。
鑑定書・鑑別書や付属品
ブラックダイヤモンドを購入した場合、付属品も受け取ることになります。宝石と一緒に出すと買取価格の上昇が期待できるため、しっかり保管しておきましょう。中でも、宝石の情報がまとめられている「鑑別書」やダイヤモンドの評価を示した「鑑定書」は、商品が本物であることの証明書となります。
しかし、ブラックダイヤモンドは、購入時に鑑定書が発行されることはほとんどありません。カットの違いでクラリティに差が出ることがほとんどなく、カラーごとの等級もないからです。
「受け取る証明書は鑑別書」、と頭に入れておきましょう。
ブラックダイヤモンドの偽物と本物の見分け方
業者の中には、同じ黒系統の宝石をブラックダイヤモンドと偽って販売する者がいます。偽物を誤って買わないためにも、どのような点に注目すればよいのでしょうか。そのポイントについてご紹介します。
カット面の美しさ
ブラックダイヤモンドには、世の中にある黒色宝石との違いがはっきりしている部分があります。それは、硬度です。
ダイヤモンドと同等の硬さがあるため、カットした部分はシャープで面の線がくっきりとしています。しかし、他の黒色宝石であれば、面の線がぼんやりとしており、丸みを帯びた形状になってしまうのです。
購入を検討する際は、カット面の美しさに注目しましょう。
反射による輝き
光の反射においても、ブラックダイヤモンドはシャープなカット面から強い輝きを放ちます。他の黒色宝石の場合、硬度が低くく、丸みを帯びたカットになっているため、やんわりとした輝きになるのです。
この違いは、部屋を暗くした状態で置くとより分かります。家の中でもできるため、不安であれば試してみましょう。
ブラックダイヤモンドの石言葉や効果
他の宝石と同じように、ブラックダイヤモンドにも石言葉やスピリチュアルなパワーが秘められています。その効果は、他の宝石よりも強力であると言われるほどです。
ブラックダイヤモンドの石言葉
全ての花に花言葉があるように、宝石にはそれぞれ石言葉が込められています。
ブラックダイヤモンドには「成功」「不屈」「不滅の愛」といった、人生を切り開くための心の強さを連想する言葉がそろっています。どの言葉にもパワーがあり、困難な道へ進むときのパートナーとして、成功へと導いてくれるでしょう。
現在は結婚や婚約の指輪としても人気ですが、それは込められた言葉たちが「二人で困難を乗り越えられる」という前向きな気持ちにさせてくれるからなのかもしれません。
ブラックダイヤモンドの効果
ブラックダイヤモンドは、悪魔も欲しがるほど強いエネルギーに満ちたパワーストーンです。身に着けると不運や災いを跳ね除け、幸福を引き寄せます。最後まで挫折せずにやり抜く力を与え、仕事の目標や夢の実現に向かって突き進めるでしょう。
恋愛面では、パートナーへの愛情がより深くなり、固い絆が結ばれると言われています。恋人との良好な関係をさらに深め、結婚まで導いてくれるでしょう。
まとめ
価値として認められなかった歴史をもつブラックダイヤモンドは、宝石言葉のとおり「困難」を乗り越えた宝石です。そのような背景もあり、現在ではジュエリーだけでなく、幸運を引き寄せる強力なパワーストーンとして、多くの方に愛されています。仕事や恋愛に肩を落としてしまった方は、自信を取り戻すきっかけとして身に着けてみてはどうでしょうか。