皮革のTOP of TOPに君臨するエルメスの歴史
エルメスの創業者ティエリー・エルメスがパリのマドレーヌ寺院界隈に馬具工房を開いたのが1837年、当時は馬車が生活に必要とされていた時代だけに、工房の顧客にはナポレオン3世やロシア皇帝がおり、ブランドとしての地位を確立していきました。1878年には2代目のシャルル・エミール・エルメスがパリ万博に出品した鞍が金賞を獲得するなど更に発展を遂げていきますが、時代は馬車から列車、自動車へと移り変わり1892年にエルメス最初のバッグである「サック・オータクロア」を製作します。エルメスのバッグブランドとしての歴史が始まりまった瞬間と言えるでしょう。
またエルメスは1927年に腕時計を発表、続いて装飾品や香水といった分野にも着手し、その品質を守るためにもデザインから販売まですべて自社で手掛ける会社になりました。エルメスの長い歴史の中で80年代から90年代にかけて様々な会社を買収する事もありましたが、エルメスは一貫して職人技術を維持していく事を大事にしており、他のグループ企業とは一線を画しています。そのブランド精神はブランドロゴとして描かれているディックとタイガーにも表れています。
ディックは四輪の馬車、タイガーは従者ですが、主人が描かれておりません。その理由は「エルメスは最高品質の馬車を用意しますが、それを御するのはお客様あなた自身です」という意味があると言われています。お客様に最高級の商品を提供するのはもちろん、商品を使う人の立場にたち、ディテールにこだわったブランドであり続ける事こそ世界最高峰のブランド「エルメス」の使命と言えるのではないでしょうか。
エルメスの人気高級皮革バッグラインナップ
エルメスはその長い歴史の中で時代の移り変わりと共に様々なデザインのバッグを手掛けてきました。中には長い歴史を持つバッグもあり、人と社会の関わりの中から誕生し続けるエルメスのバッグの中で、特に人気の高い高級皮革を使用したバッグ4点を紹介します。
・ケリー
台形のフォルムが特徴的でエルメスを代表するバッグの1つです。元々は馬具メーカーだったエルメスがサドルバッグを改良して1935年に発売しました。発売当初はケリーバッグではなく、「サック・ア・クロア」という名前だった事は有名な話です。では、なぜ「ケリーバッグ」に名前が変わったのでしょうか。1956年、モナコ公妃になった女優グレースケリーが妊娠中のお腹をバッグで隠した姿が雑誌に載った事で一気に注目を浴びた事がきっかけとなりました。そしてエルメスはそのタイミングで「サック・ア・クロア」を「ケリーバッグ」と名前を改めたわけです。気品に満ち溢れたグレースケリーの美しさとケリーバッグの持つストーリー性は今なお多くの人を魅了し続ける所以とも言えるでしょう。
・バーキン
ケリーバッグと並んで絶大な人気を誇るのがバーキンです。ケリーバッグと比べるとバーキンはカジュアルとしての側面が強く、その自由奔放さが1つの魅力となっています。またそのバーキンという名前はイギリス出身の歌手ジェーンバーキンに由来しています。1984年に当時の社長が飛行機内で彼女と隣り合わせになり、彼女がバッグに荷物を詰め込んでいる様子からバッグのプレゼントを申し出た結果、贈ったのがバーキンです。乱雑に扱ってもその品位を損ねない、内面から滲み出る美しい素材感こそバーキンの特徴です。またバーキンはオータクロアを原型としており、今やその人気をはるかに超えるものとなりました。エルメスを愛する人にとってバーキンは永遠の憧れとも言えます。
・ボリード
丸いフォルムとファスナーを使用したバッグです。エルメスのアイコンバッグの1つとしてバーキンよりも歴史があると言われています。そんなボリードは1923年に発表されました。当時からボリードという名前だったわけではありません。フランスの高級自動車ブガッティと同じ名前で登場したのが1920年、それからボリードという名前になりました。ボリードを語る上で外せないのがファスナー開閉の存在です。当時は移動手段として自動車がメインとなり、運転中でもバッグの中身が落ちたりしないようにファスナーを取り付けられました。このファスナーをバッグに使おうと試みた初めてのブランドがエルメスなのです。今では当たり前に存在しているファスナーはエルメスの使う人の立場にたったデザインから誕生しました。
ボリードはサイズ展開も豊富ですので、自分にあったサイズ感であったりお出かけの用途に合わせた大きさのものをチョイスするのがベストです。
・コンスタンス
エルメスの頭文字「H」を前面にアイコンとしてデザインされたコンスタンスですが、バッグはもちろん、お財布でもそのインパクトは絶大です。「H」マークはバックル金具としてデザインし、見た目だけでなくしっかりと開閉される事もコンスタンスの特徴です。そんなコンスタンスが発表されたのは1969年です。名前の由来はデザイナーの娘さんの名前という微笑ましいエピソードがあります。そしてコンスタンスが一躍注目されたのは1人の女性の存在でした。第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディ夫人、ジャクリーン・ケネディです。ファーストレディとしての知名度はもちろん、彼女の数奇の運命がコンスタンスの歴史に刻まれています。
また、コンスタンスの特徴としてサイズの豊富さが挙げられます。ファッションに合わせてシーン別で使い分けなんて贅沢な楽しみ方ができるのもコンスタンスの魅力です。
エルメスが誇る高級素材~ワニ革素材
世界的ブランドの中で使用されている皮革素材と言えばカーフ等の牛革などが挙げられます。皮革素材は使う内にその使用者の味が出てきたり、風合いが増す事が人気の理由です。そして更に高級感溢れる素材と言えばワニ革でしょう。一般的にクロコダイルなどと言われている素材です。特にエルメスが世界中の皮革の中から最高級品のみを使用する事で有名なブランドです。そんなエルメスが扱うクロコレザーを紹介します。
・ポロサス(クロコポロサス)
スモールクロコダイルと呼ばれるもので、クロコポロサスには艶感のあるシャインと艶感の無いマットの2種類があります。質感が変わるだけでバッグの印象もかなり変わってくるので選ぶ時の重要ポイントになります。特徴としてはウロコの大きさが小さく、左右対称の並びはまさに芸術品です。クロコポロサスのバーキンになると価格も500万以上になり、ラグジュアリーさが跳ね上がります。バーキン以外にも財布やベルトなどの小物にも使用される高級素材です。
・ニロティカス
「ナイル川のクロコダイル」という名前を持つ素材です。こちらも艶感の異なるシャインとマットが存在します。ポロサスより少し面が大きく、自然界の雄大さを感じられる素材です。皮革のランクとしてはポロサスの下になりますが、バーキンにも使用されている最高級皮革素材です。価格帯もポロサスよりお手頃になるので、購入の選択肢が増えるでしょう。エルメスのクロコ素材のバッグは希少価値も高いので、比較的手に入りやすいニロティカスのものを選ぶ方も決して少なくありません。
・アリゲーター
アリゲーターはポロサス、ニロティカスとは異なるワニの種類からなっている素材です。クロコダイルがアフリカに生息しているのに対し、アリゲーターはアメリカやオーストラリアなど広い地域で生息しています。ウロコもポロサスやニロティカスに比べると大きめで、バッグなどによく使用されている高級皮革です。比較的リーズナブルな価格帯なのでポロサスやニロティカスが高価すぎる場合はアリゲーターを選択肢に含めると良いかもしれませんね。
クロコレザーの見分け方と高額な理由
エルメスは非常に多くの皮革素材を使用し、様々なアイテムを発表しています。プロの中でもそれらを見分けるのは至難の業と言っても過言ではありません。しかしクロコレザーの中には簡単に見分ける事が可能なポイントがあります。そのポイントを把握して是非エルメスの最高級品質を感じてください。また何故エルメスのクロコレザーが高額なのか説明します。
・クロコレザーの見分け方
エルメスのクロコレザーにはマークが刻印されているものがあります。種類によってマークが異なるので、まずはそのマークを探してみましょう。
・「HERMES PARIS」の刻印横
クロコポロサス…「Λ」マーク
ニロティカス…「・・」マーク
アリゲーター…「□」マーク
※クロコレザー以外
リザード…「━」マーク
・エルメスのクロコレザーは何故高額なのか
エルメスの高級皮革素材、クロコレザーが何故ここまで高額なのでしょうか。まずはワニ革そのものが高いという理由があります。その中でもエルメスが扱うワニ革は世界中の中から選ばれた高級部位のみを使用しているので、必然的に高額になるのは仕方がない事なのかもしれません。また生物としてのワニも捕獲量が少なく、年々少なくなっている事から相場そのものが高騰している事も理由として挙げられるでしょう。ワニはそもそも野生の生物なので捕獲するのも大変です。以上の様々な観点からワニ革、クロコレザーが希少性が高く、高級素材となってしまうのです。
まとめ
エルメスのクロコレザーは世の女性にとって永遠の憧れといっても過言ではありません。ブランドの最高峰に君臨し続けるエルメスのクロコレザーはその希少性と職人技の結晶によって長い歴史の中で守られてきました。そう簡単に手に入るものではありませんが、エルメスのクロコレザーだからこそ味わえるその質感とステイタスこそ、価格を超える価値がそこにあると言わざるを得ません。