目次
はじめに
イタリアの高級ブランド「グッチ」は、1921年にグッチオ・グッチによって創業されました。さまざまなお家騒動が起こりつつも、1990年代半ばからは外部からやって来たトム・フォードとドメニコ・デ・ソーレによって見事に復興し、栄華を極めています。
ブランドイメージを脅かすスキャンダルは、映画『ハウス・オブ・グッチ』(2021年公開)でクローズアップされています。
そんなグッチは、2代目世代(アルド/ロドルフォ)、3代目世代(マウリツィオ/パオロ等)まではファミリービジネスを行ってきました。そして、4代目の世代にあたる人物も存在しますが、4代目当主の名前は、なんとグッチオ・グッチ、 つまり、ひいおじいさんにあたる創業者と同じ名前なのです。
「GIOIA」というイタリアのワインブランドの統括プロデューサーを務めており、グッチの創業地であるフェレンツェ生まれだそうです。では、初代当主はどのような人物だったのでしょうか。
グッチの創業者グッチオ・グッチが残した名言、職人との強い絆とは
グッチは「最上の伝統を最上の品質で、しかも過去のよいものを現代に反映させる商品作り」をコンセプトとし、品質保証を示すために、世界で初めてデザイナーの名前を入れたブランドです。そのブランドを立ち上げたグッチオ・グッチが残した名言・逸話からは、「製品への熱い想い」、そして「職人への愛」を感じることができます。
【グッチオ・グッチの名言】
「Quality is remembered long after price is forgotten.(価格は忘れるが、品質は生涯残る)」
これは、有名なグッチオ・グッチの名言です。グッチオは17歳のときにロンドンに渡り、最高級ホテルのサヴォイ・ホテルの皿洗いとして雇われました。
しばらく皿洗いを行った後、ポーターに昇格したグッチオ・グッチは、そこで王侯貴族たちを接客し、その立ち居振る舞いやファッションなどを学びます。
さらにグッチオは若くして、「原価は何も意味を持たない。むしろ商品の値段が高ければ高いほどそれを所有することの価値も高くなるのだ。」という、高級ブランドの価値観を手に入れたのです。
グッチ家の家訓「子供にはミルクよりも革の匂いを嗅がせろ」
グッチオは、「グッチ家に生まれた者にはミルクの匂いよりも、革の匂いを嗅がせること。それがその子の将来を決定付ける香りとなるのだから。」として、本物の革の匂いに触れさせていました。
まずは鼻先からラグジュアリーを味わわせたのです。長男のアルドグッチも、この家訓をグッチオの孫に当たるジョルジョ・パオロ・ロベルトたちに引き継いでおり、孫のロベルトは父アルドについて
「僕ら息子たちは、家(ミルクの匂い)というよりも会社(革の匂い)で育てられた。会社が家族そのものだった。一番良い大学は会社である。大学へ行くのは時間のムダだといつも言っていた。」と語っています。
女王にも容赦ない?!
グッチオには非常に多くの逸話が残っています。
中でも有名なのが、イタリア訪問中のエリザベス2世がグッチを訪問した際、女王付の侍従が彼に「何か陛下にプレゼントを」と進言しました。バッグを女王に進呈したが、女王一行が去った後、報道陣がまだいるにもかかわらず「金も払わん乞食はもう来るな」と発言したというのです。
女王に向かって乞食と呼ぶとは何ということでしょうか。ですが、それほど自分の製品に誇りを持っていたということです。
職人に対しては・・
このような逸話を持ちつつも、グッチオ氏は職人からは信頼され、彼も職人を愛していました。その証拠に、グッチがまだ今ほどの大企業になる前の1970年代頃、工房には130人の職人が働いているという大所帯でしたが、この工房から職人が離れるということはほとんどありませんでした。
まず、職場環境自体がとても豪華でまるで美術館にいるかのような開放的で芸術的な空間だったからです。
また、いったん奉職すると、景気の良し悪しに関係なく終身雇用が保障されていました。
さらに、かつてグッチには他の高級ブランドとは異なり、「職人が材料費のみで家族や恋人にバッグを作っても良い日」があったといいます。残念ながら現在では消滅しています。
職人の給料ではなかなか手が届かないグッチのバッグが、職人の家族の手に渡るようにという心遣いは、職人を愛するグッチオ・グッチならではのものです。お金も払わない偉い人にバッグをあげるくらいなら、一生懸命働いてくれている職人さんや職人さんの家族にあげたいです。
また、職人はデザインのアイデアを出すことも許されており、良いアイデアであれば採用されることもあったため、モチベーション向上に繋がります。竹の持ち手が施されたバンブーバッグは、グッチ職人のアイデアから生まれたデザインで代表的なものです。
まとめ
現在のグッチは、既にグッチ家の手を離れており、フランスを本拠地とする流通会社PPRの傘下にあります。そのため当時のようにはいかなくなってしまいました。
グッチ家に受け継がれた、培ったセンスと知識、そして職人技術が詰まった当時のグッチの製品、それが今、「オールドグッチ」として評価されていると言えるのでしょう。