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金相場は世界市場の影響を受ける
物の相場は需要と供給のバランスによって決まります。金もその例に漏れないのですが、異なる特徴も存在します。それは世界市場(その中でも特に米ドル)に大きな影響を受けるという点です。事実として、世界市場に大きな影響を及ぼす事件が発生した時には金相場も通常と異なる動きを見せています。では、実際にどのようなことが起きた時、金相場は動くのでしょうか。
金相場が大きく動いた事件
冷戦終結(1989年)
冷戦はアメリカを中心とした資本主義陣営と、ソビエト連邦(現在のロシア)を中心とする社会主義陣営の対立で、長い期間両陣営のにらみ合いは続いていました。1989年にマルタ会談によって、冷戦の終結が宣言された事で、長く続いた国際的緊張が緩和されました。これにより、米ドルへの信頼性が高まったため、金の価格が大きく下がりました。
第一次ワシントン協定締結(1999年)
1989年の冷戦終結以来、国際情勢が安定し、金の価値は下がり続けていました。金相場の止まらない下落を受けて締結されたのが、金を保有する各国の中央銀行に対して金の売却に制限を設ける第一次ワシントン協定です。これは市場に出回る金の量を調整することで、価格を正常に戻そうとする取り組みでした。2000年代の金の上昇トレンドに変わるきっかけとなったのがこの取り組みといえます。
9.11アメリカ同時多発テロ(2001年)
2000年代最大の悲劇とも言われるアメリカ同時多発テロですが、このテロ事件の勃発は世界中に大きな衝撃と不安を与え、米ドルの信頼度にも影響を及ぼしました。加えて同時期に起きたITバブルの崩壊から、リスクヘッジとしての金需要が高まり、金価格が高騰したのです。
リーマンショック(2008年)
リーマンショックはアメリカ、ニューヨークの大手投資銀行だったリーマン・ブラザーズが経営破綻したことによって引き起こされた、世界規模の経済危機です。アメリカは世界経済の中心であり、その中でも大きな規模をもつ投資銀行が倒産の危機に世界中が驚きました。
しかも、混乱が予想されているにもかかわらず、民間からも国からも救済がされなかったため、世界中の人々が、今後ますます金融不安が大きくなると予想しました。その結果ニューヨークの株式市場が大暴落し、経済の動きが停止することで全体が不況になってしまいました。そのため、リスクヘッジの手段として金などの実物資産を所有しようとする動きが活発になり金の相場が大きく上昇しました。
円との関係は?
日本として気になるのは、金相場の動きは円とも関係があるのかという点です。実際に大きな動きを見せたリーマンショック時を振り返ると、円とも深い関わりを有していることがわかります。当時は、破綻してしまった証券会社が有している銘柄に投資している日本企業が少なかったため、あまり影響はないだろうと考えられていました。
そのため世界中の投資家や国々は、ドルよりも経済状況が安定しているであろう円を所有しようとする動きを見せ、急速な円高ドル安が進みました。結果、世界的には金の相場は大きく上昇したのですが、日本の取引価格は円高の影響を受けて、リーマンショック前後であまり変わらないという事が起きました。
金投資やドル投資は安定ではない?
金やドル投資は安定した投資と認識されていますが、これには理由があります。ここまで紹介してきたように、金とドルは深い関係を有しているので、世界市場に影響があるような事件が起きると相場はかなり混沌してしまいます。その一方で、ドルが好調=株式に需要があり金の価格が下がる、ドルが不調=株式よりも現物である金の価格が上がる、という逆相関の関係になっているため、どちらも所有している場合は片方がリスクヘッジの役割を果たすため、安定した投資という見方が強いと考えられます。
まとめ
今回は金の相場と世界市場の関係についてご紹介しました。金は投資以外にも装飾目的や電子機器のパーツなど、私たちの生活に欠かせないものになっています。その需要が急激に変わる事は考えづらく、自身の資産を守る目的で金投資をするのは、賢い方法だと考えられます。その金の価値を見極めるため、ドルとの関係性にも注目し、金投資を検討してみてはいかがでしょうか。