日本で金の密輸が多い理由とは
島国かつ港や空港が整備されている日本に金を大量に持ち込むのは一見難しいように感じますが、実は世界の中でも金の密輸の多い国です。なぜ、日本では金の密輸が多発しているのでしょうか。
日本の法律が犯罪者にとってリスクが低いため
前提として金の取引価格は全世界共通になっており、ロンドンフィキシングと呼ばれている1日に1度ある値決めによって決まった金額が世界各国に知らされることにより決まります。そのため、世界中のどの国で売っても価格は変わらず密輸する利点がなさそうに感じます。
では、なぜそのような密輸が起こるのでしょうか。答えは税金が関係しています。日本では物を購入する際には消費税がかかり、これは金の購入時も例外ではありません。この消費税は金の買う側が売る側に支払うものであり、買取店などに売却した際は相場の金額+消費税分が支払われます。つまり、消費税のかからない国で購入して密輸した場合、消費税差分である10%が利益として入るのです。
そのため、日本を含めた世界各国では金の密輸を禁止し、そのような行為を違法としています。ではなぜ、日本で横行しているのでしょうか、それは日本の法律が犯罪者にとってリスクが低いためです。基本的に他の国では密輸した事が発覚した場合その対象となる金は全て没収されてしまいます。しかし日本の場合、没収はされますが、一定金額の罰金を支払う事で所有権を取り戻す事が可能なのです。そのため、発覚した際のリスクが低く、日本が密輸の標的となっています。
税率の改定
上述したような経緯から日本への密輸は昔から行われていましたが、そこまで多くの密輸が行われていませんでした。理由は消費税率が低かったためです。消費税率が低いと売却時のリターンが少なく、密輸のリスクと見合わなくなります。しかし、日本では近年消費税率の改定が行われたため、犯罪組織が大きな利益を得る事が出来るようになり、金の密輸が日本で多発してしまったのです。警察の発表によると消費財改訂前とその後では、金密輸に関する事件が約1.5~2倍近く増えたようです。今後、消費税率が更に上がるということになれば更に密輸が増えてしまう可能性があります。
実際に起きた金の密輸事件
密輸組織にとっては、お金さえ払えば不法に持ち込んだものであっても返還してくれる日本の法律はリスクが少なく狙い目となっています。そのため様々な密輸事件が発生しており、ニュースでも何度か大々的に報道されたことがあります。以下は実際に起きた金密輸に関する事件です。
東シナ海金投棄事件
この事件は平成29年5月に来日中国人と日本人が結託し、200kg以上もの金を密輸しようとした事件です。この事件では事前に東シナ海上で金を海の中に投棄しておき、後で日本から回収しに行くといった方法が取られました。国内で初めて起きた瀬取り密輸事件であり、当時のテレビでも大々的に報じられました。犯人グループは金を回収して佐賀県唐津市の漁港に乗り入れたところを、警察によって取り押さえられ逮捕されています。この事件は一件当たりの金の押収量が過去最大であり、それも相まって日本でも有名な密輸入事件となりました。
普通の夫婦が運び屋になっていた事件
金の密輸ではグループで大量の金を密輸するほか、一般の人が運び屋に利用されてしまうケースが多発しています。過去には海外の空港で靴や服の中に金を隠して日本に持ち込んだらお金と交換するといった勧誘に乗せられて、一般の夫婦が密輸で逮捕されてしまったという事件や、新婚旅行の夫婦に声をかけて、合法だと偽り金の運び屋をさせる事件も起きています。
「関係ない」「知らなかった」ではすまされないため、甘い言葉をかけられても密輸という法律に反した行為をしないよう注意が必要です。
まとめ
日本の法律の制度上、密輸を厳しく取り締まることが難しいため、犯罪組織の標的となってしまっています。密輸は犯罪組織だけではなく、一般の人々を利用して行われたケースもあり、甘い言葉で近づいてきた犯罪組織に乗せられて自分が巻き込まれないように、自衛していく必要があります。知らなかったではすまない犯罪行為となってしまうため、今回の記事を見たことによってこのような事件があったことを知り、予防の手助けの一助になれば幸いです。