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金の売却時に税金がかかる?
昨今の金の高騰を受け、所有する金製品の売却を検討されている方も多いのではないでしょうか。そんな金を売却する際は、税金に注意しなければなりません。残念ながら金の売却で発生した利益には税金が課税されます。
国税庁では「金地金を売ったときの所得は、原則、譲渡所得として、給与所得など他の所得と合わせて総合課税の対象となります。」と定めており、この文言にしたがって確定申告が必要になります。
金の売却時の所得区分は?
金の売買によって利益がでた際に関係してくる所得は大きく「譲渡所得」、「雑所得」、「事業所得」に分類されます。今回はこの3つの所得区分について解説します。
譲渡所得
個人で持っていた金を販売したときにかかるのが、譲渡所得です。基本的に金の売却益はこの譲渡所得として扱われます。この譲渡所得は、売却金額にそのままかかるのではなく、「金の取得時や売却時にかかった費用」と「譲渡所得の控除額50万円」を差し引いた値が課税対象になります。
雑所得
個人で継続的に金を売り利益を得ている際には、「雑所得」となります。雑所得は大きく分けると「総合課税」と「分離課税」に分けられますが、金の場合は総合課税になります。
事業所得
法人などの事業で金を売り、生まれた利益については「事業所得」に分類されます。
実際にシミュレーションしてみよう
金は所有期間によって、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類の算出方法があり、所有していた金が長期間(5年間)の場合、「長期譲渡所得」となり、大幅な額を節税することができます。それぞれの計算式を確認し、実際にシミュレーションをみていきましょう。
~条件~
今回は購入時に1gあたり5,000円、売却時に1gあたり9,500円で売却すると仮定し、①・③は100gの金インゴット、②・④は1㎏のインゴットとして計算します。
短期譲渡所得の場合
売却時の計算は【売却金額-(取得価格+売却費用)=譲渡益】となるため
①950,000円-500,000円=450,000円となる
この場合、金以外の他の譲渡益がない場合は特別控除額の50万円を超えていないため、所得税は発生しません。
②9,500,000円-5,000,000円=4,500,000円となる
この場合は譲渡益が4,500,000円となるため、所得税が発生します。この4,500,000円から特別控除額の50万円を引いた4,000,000円に所得税がかかります。
長期譲渡所得の場合
③950,000円-500,000円=450,000円となる
この場合も①と同じように金以外の他の譲渡益がない場合は特別控除額の50万円を超えていないため、所得税は発生しません。
④9,500,000円-5,000,000円=4,500,000円となる
この場合も②と同じように譲渡益が4,500,000円となるため、所得税が発生します。ただし長期譲渡所得が適応されるため計算式は
(4,500,000円-500,000円)÷2=2,000,000円となり2,000,000円分の譲渡税に節税できます。
金の売却においてなるべく節税するポイント!
金を売る際、なるべく利益を残したいですよね、脱税にならないように節税するポイントをご紹介します。
金の購入時に渡される計算書の紛失に注意
金を買ったときの計算書や領収書は、必ず大切に保管しましょう。計算書をなくすと、売却額の95%が利益とみなされ、課税対象となってしまいます。
領収書がある場合、500万円で購入した金を600万円で売却したとすると、売却益は100万円です。しかし、計算書を紛失した際、購入額が500万円だと証明できないため、600万円の95%である570万円に課税されてしまいます。そのため、購入を証明できるものを必ず保管しておきましょう。
1年間に50万円以下の譲渡益に抑える
上述したように1年間で50万円以下の譲渡益の場合は特別控除により、所得税が免除されます。そのため、アクセサリーなどの金製品がたくさんあり90万円程度の売却益がある場合は売却益を50万円以下になるように売却し、翌年残りを売却することによって再び特別控除の50万円が受けられるため、節税できます。
5年以上の長期保有をする
上述した通り、金の保有期間が5年を上回った場合は譲渡益に対して半額分の特別控除を受ける事ができます。金は長期保有が良いといわれている理由は安定して右肩上がりしている相場に加えて税金面でも優遇されるためそのようにいわれています。
金製品の形状による補足
金が用いられたジュエリーの場合
金が使われたジュエリーなどは上述した金地金と要件が異なり、生活用動産の売却となります。たとえば、ジュエリー形態の場合は一個または一組の売却益が30万円をこえている場合に課税対象となります。
これは一度の取引という意味ではなく、数点ジュエリーを買取店に持ち込んだ場合、その一点一点の売却益が30万円を超えているかどうかが重要になります。所得区分は金地金同様となります。
しかしジュエリーの場合、売却額が購入額を上回ることはそう多くはありません。そのため、金地金のように確定申告が必要になるという事はあまりないでしょう。ただし、この場合も購入額の証明ができない場合はその限りではないため、計算書はしっかりと保管しておきましょう。
金の仏具の場合
仏具は相続税がかからないため、金を仏具にしてしまえば無料で相続できると考える人がいます。確かに相続税が非課税となる財産の中に祭祀財産というものがあります。これは日常の礼拝用として使用する仏具等に対しては相続税は非課税となるというものです。
しかし、高齢になってから急に高額の仏具を入手したり、客観的に見て豪華すぎる純金の道具など、相続税対策のための過度な購入は税務署から非課税扱いを認められないことがあります。そのため、被相続人が節税目的のため生前に祭祀財産を購入しておいたとしても相続税の対象となってしまいます。
まとめ
近年の金相場の急騰によって、所持している金を売ると、思いのほか譲渡益が高くなる人も多いでしょう。所得がどの区分になるのか、実際にいくら税金がかかるのかなどのさまざまな疑問点が出てくるかもしれません。また、確定申告の手続きや書類準備なども必要です。
確定申告は、複数枚の書類を揃え、自身の給与所得や事業所得を計上するため、複雑な手続きとなります。そのため、初めての方は金の利益を正確に計上するにはかなりの手間と時間が必要です。
税金面で、よくわからない、不安な点があれば、税務署や税理士に相談するのもひとつの方法です。しっかりと金にかかる税金について考え、必要に応じた手続きをしましょう。