日本の伝統技法と金の関係性
日本は過去に黄金の国ジパングと呼ばれる程、各地に金鉱山がありました。そして日本はその金を用いて装飾を施した様々な伝統工芸品や建造物がつくられ、その技術を昇華させてきました。岩手県にある中尊寺金色堂や京都の鹿苑寺(金閣寺)などの建物や、金糸を贅沢にあしらえた絹織物などをつくりだすのに欠かせない日本の伝統技法についてご紹介します。
金継ぎ・蒔絵
金継ぎ
金継ぎとは金と漆を用いて、割れたり欠けてしまった磁器やガラス製品などを修復するための技法をいいます。現代においては低価格で様々な物が簡単に購入できることもあり、破損したものを廃棄して、新しいものを購入するというのが一般的です。しかし、日本には昔から「壊れても修復してもう一度使う」という考えが根付いていました。現代でも旅行先で買った思い出の品や大切な人からプレゼントされたお気に入りの器を持っている人も多いのではないでしょうか?そういったものを長く大切に使うためにも金継ぎは適しています。
蒔絵
蒔絵は日本独自に発達した漆芸の代表的な技法で1200年ほど前の奈良時代辺りから行われています。器の表面に細い筆を使って漆で絵を描き、その漆が固まらないうちに上から金の粉を蒔きつけて模様をあらわします。蒔いて絵にするという意味から蒔絵といいます。研出蒔絵、平蒔絵、高蒔絵などの作り方があり、特に海外での人気が高く、蒔絵の作品は400年も前からヨーロッパなどにたくさん輸出され、今でも外国では「Maki-e」と呼ばれています。もちろん、現在でもお土産として人気が高く、国内外問わず人々を魅了しています。
金継ぎ・蒔絵は自分で出来る
実は金継ぎは思ったよりも簡単に自宅で出来ます。たしかに、接着に複数の漆を用いて行う伝統的なやり方をする場合は専門知識や道具がないと難しい部分もあり、素人が再現するのは難しいといえます。しかし、接着剤などと併用する方法で初めての方でも金継ぎはできます。実際、金継ぎ初心者セットなどのような必要な道具とやり方がセットになっているものが、工芸店やインターネット通販で5,000円~10,000円程度で購入できます。お気に入りの器に自分だけの模様をつけて、伝統技法の一端に触れてみるのもいいかもしれませんね。
金箔
金や銀、プラチナなどの金属をごく薄く延ばしたもの。それらを総称して「箔」といいます。その中で代表的なものとして金箔が挙げられます。金属の箔は豪華さや美しさだけでなく、荘厳さや安らぎをもたらしてくれる存在として仏閣の建立時に使われる他、屏風や陶磁器、漆器、織物、襖絵などに古くから利用されてきました。今ではインテリア分野、建築分野、食や美容分野などにおいても、幅広く活かされています。薄さ1万分の数ミリの箔には、金属そのものとは異なる、箔ならではの魅力や可能性があります。
金箔は食べても大丈夫なの?
金箔といえば金閣寺をはじめとした建造物の装飾の他に、もっと身近な使われ方をされています。それが食用金箔といわれているものです。チョコレートやお祝い事での料理や飲み物などに少量振りかけるだけで、見栄えが煌びやかになります。しかし、金属を食べても大丈夫?と思う方も多いと思いますが、問題はありません。金は体内で吸収されることがなく人体に対して安全な物質であり、金箔は厚生労働省より食品添加物と認められている食品です。また、金を伸ばしただけの純金箔の他に「プルラン」とよばれるデンプンで金箔の表面をコーティングしてある、食用に特化した金箔もあります。
金箔ソフト・プラチナ箔ソフト
日本では金箔などの箔の多くは石川県金沢市で作られています。ここでは日本で唯一といってもよいユニークなソフトクリームがあるそうです。それが金箔やプラチナ箔を一枚丸ごとソフトクリームに巻き付けたものになります。特にプラチナ箔の方は金箔に比べて厚みがあるため、パリパリといった食感を感じるそうです。有名な兼六園などに行った際に是非試してみてください。
金糸
日本では古くから織物の技術が発展しており、その生地に金糸などを織り込むことによって煌びやかなで豪華な服をつくっていました。金糸は金を薄く伸ばしたものという印象があるかもしれませんが、それは誤りで、漆などで金箔を和紙に貼り付け糸状に切ったものを平金糸・平箔・箔糸などといい、それ以外の糸を芯に金箔やフィルムなどを巻きつけたものを撚金糸といいます。
日本には古くから薄い金箔をつくる技術と強度の高い上質な和紙をつくる技術があったからこそ、この金糸という技術が発展し、高級衣服などに使用されました。このような豪華な衣服で着飾っていたため、日本では江戸時代あたりまで、身体に身に付けるアクセサリー関連の発展がほとんどなかったといわれています。
まとめ
金は日本の伝統技術によって建造物や服飾品、日用品にいたるまで様々な形で活用されてきました。これらの伝統技術は時代の流れとともに廃れていっており、存続の危機に瀕しているものもあります。これらの伝統技術で作られたものには、大量生産にはない暖かみがあり、消失してしまうには忍びないものです。このコラムを通じて少しでも皆さんの目にこれらの伝統技術に触れるようになれば幸いです。