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金ができる過程と鉱脈について
金は、岩石のなかに薄く広く含まれており、岩石を採掘するところを「鉱山」と呼びます。
鉱山から金が採掘される「鉱脈」は火山活動と関係があることが特徴です。火山活動が起こってマグマが噴出すると、地下水と衝突して金属が溶けます。最後に冷えて固まったものが、「鉱脈」です。
上記のプロセスで形成された鉱脈は「浅熱水性鉱床」と言われ、金や銀が多く含まれています。そのため、金鉱山では「鉱脈」を見つけて採掘が行われます。
日本と海外の主な金鉱脈の産地
金鉱脈は、日本と海外にいくつか存在します。現在は稼働していないところもありますが、具体的にどの場所にあるのか、産地を紹介します。
日本の主な金鉱脈
日本には、主に3つの鉱脈があります。
・菱刈鉱山(鹿児島県)
・佐渡金山(新潟県)
・鴻之舞金山(北海道)
以前は他にも金山がありましたが、すでに金が枯渇しているため、ほとんどは閉山しました。現段階で商業採掘されているのは菱刈鉱山だけです。
新潟県の佐渡金山は、かつて日本最大の金山として盛んに採掘されました。閉山した現在は、その歴史を伝える観光施設として賑わっています。
現在、日本での金生産量は大幅に減っています。ただし、捨てられたり使われなくなったりした家電製品、いわゆる「都市鉱山」には多くの貴金属が含まれています。
例えば、スマートフォン1台には0.05gほど、ノートパソコン1台には0.03gほどの金が含まれているのです。日本に眠っている都市鉱山に含まれる金は、6,800トンほどと推測されています。
海外の主な金鉱脈
日本だけではなく世界にも金鉱山はあります。生産量の多い上位3カ国は以下の通りです。
・中国
・オーストラリア
・ロシア
中国が最も生産量が多く、福建省と山東省に鉱山が存在しています。2021年には、約370トンの金を生産しました。2位はオーストラリアの330トン、3位はロシアの300トンです。
金鉱脈の見つけ方!金の採掘場所
採掘方法に興味がある場合、採掘場所がどのようなところなのか知りたいという方も多いでしょう。主な採掘場所は、温泉地や河川です。また、近年では海底でも採掘できるとして注目を集めています。ここでは、金を採掘できる場所を紹介します。
火山が近い温泉地
新しい金鉱を見つける第二の手がかりは温泉です。金などの鉱物は、もともと地中深くのマグマに溶けており、マグマが火山活動によって上昇して地表付近で地下水と混ざって固まり、鉱脈ができます。
火山活動と地下水の関係で形成された鉱脈を「熱表層金銀鉱床」といい、塩素が含まれる温泉地帯で見つかることが一般的です。日本で唯一の商業鉱山として稼働している菱刈鉱山もまた、表層型金銀鉱床に分類されます。
砂金のある河川
金粉が見つかった川の上流は、金鉱脈かもしれません。もともと砂金は、金鉱脈が雨などの自然要因によって摩耗し、川に流れ込んでできたものです。
現在でも北海道の河川では金粉を見つけることができますが、量はごくわずかです。そのため、金粉そのものを集めて売ることは困難でしょう。
海底にある鉱石
2015年に、伊豆諸島の青ヶ島沖で高濃度の金鉱石が発見されました。海底に熱水が湧き出る「熱水噴出孔」を見つけ、周りの岩石を調べた際に濃度が高い金が発見されたのです。
世界の主な鉱山は、1トンにつき3〜5グラムの金が産出されますが、今回調査した岩石には1トンあたり17グラムの金が含まれていました。
現在も研究は続けられており、今後は資源として利用されることが望まれています。
金の採掘方法
山の金と川の金では、採掘方法が異なります。また、使用する道具、方法にも様々な種類があります。ここでは、金の採掘方法、使用する道具などを見ていきましょう。
選鉱鍋を使った採掘方法
川の金を採掘する最古の方法は、古代エジプトでも使われていた「選鉱鍋」を使う方法です。
金粉が蓄積しやすい箇所で、選鉱鍋を使って金粉を分離するのです。選鉱鍋はパンニング・ディッシュとも呼ばれ、砂金採り用として現在も販売されています。
選鉱鍋は、25~40cm程度のサイズのものが多く、木製やスチールなど材質で作られています。金粉を分離しやすいように内側に段差がついているものが多く、螺旋状のリフルを持つ選鉱鍋は、金粉が中央に溜まるように設計されています。
選鉱台を使った採掘方法
選鉱台は、選鉱鍋を大きくしたような道具で、川の金を集めるのにも使われます。金の比重が高いことを利用して、金の粉を含んだ土を上から流し込み、水で洗い流します。
カリフォルニアの鉱山やオーストラリアにおいては、木でできた選鉱台が利用されていました。
露店掘り
露店掘りとは、暗く長いトンネルを掘らないで、地表から地下の鉱脈に向かって直接土を掘る方法です。
露店掘りの特徴は、大量の土を掘らなければならないため、大量の採掘廃棄物が出ることです。坑道を掘る必要はないが、1トンの土から1g程度の金しか採れないため、効率的な採掘方法とはいえません。
水圧掘削法
水圧掘削法は、高圧ホースと高速流の水を使い、金鉱脈の側面や崖に散水して土を砕き、水路に落として金を取り出す方法です。
アメリカで開発された方法であり、これまで約340トンも採掘されています。土が崩れると金を含む層が底に沈むため、金を採取しやすいという利点があります。
坑内採鉱法
坑内採鉱法は、金脈がある可能性が高い地表から垂直に穴を掘り、穴から色々な方角に水平に穴を掘る方法です。
地表に近く採掘しやすい金は世界中で採掘されており、アフリカでは地下3000メートル以上掘らないと金鉱脈に到達できないといわれています。
そのため、中国、インドネシア、ペルーといった比較的浅い穴で金鉱脈に到達できる場所が新たな金採掘地として注目されています。
硬岩探鉱法
硬岩探鉱法とは、金を含む石英岩を発破で掘削し、流水で金を分離する方法です。最も多くの金が採掘可能な方法とされています。
水を大量に確保できないエリアでは、水銀を利用して金を分離します。水銀は金以外の成分を吸着しやすい性質があるためです。
含水爆薬
含水爆薬は、安全性が高い金採掘方法として世界的に使用されています。
採掘する場所に深さ1.8~3.5m程度の穴を数十個開け、穴に1〜2kgの含水爆薬を装填します。含水爆薬により鉱床を破壊し、砕いた鉱石を回収します。
岩石は手のひらサイズに砕かれ、選別された後、金鉱石は工場に運搬し、精錬されて純金が取り出されます。日本で現在も金を産出し続けている菱刈鉱山も、含水爆薬を使って金を抽出しています。
銅の溶鉱炉を使った採掘方法
最近では、経済面と安全性を両立させるため、大きな工場では銅の製錬炉を使って金を抽出しています。
金鉱石と銅鉱石を同時に銅製錬炉に入れると、金、銀、銅が混合されます。最初に銅だけを取り出し、残りを再び溶かし、銀を取り出し、最後に電解で金を取り出し、金の抽出が完了します。
銅の精錬炉で作業をする手法は大掛かりな設備が必須ですが、水銀を使う方法に比べ、毒性のリスクはありません。
採掘後の鉱石から金を取り出す方法
鉱石は炭酸塩や石英の割合が高いため、1トンの鉱石から数グラムの金しか採れません。ここでは、鉱石で金を抽出する方法とメカニズムを紹介します。
青化法
青化法とは、粉砕した鉱石にシアン化ナトリウムを加えて金を抽出する方法です。
シアン製錬法、シアン法ともいわれ、青化法は金を多く含む鉱石から金を抽出するために用いられます。金の抽出に使用した溶液は再利用が可能です。
ただし、溶液には人体や環境汚染のリスクがある成分が含まれており注意が必要です。
灰吹法
灰吹法は、細かくした鉱石を鉛に入れて溶かし、金を抽出する方法です。
また、ほかの方法を組み合わせることで、金の純度をさらに高められます。明治時代に他の金精錬法が普及するまでは、灰吹法が最も一般的な金の抽出方法でした。
アマルガム法
アマルガム法とは、砕いた鉱石と水銀を混ぜて金を取り出す方法で、混合水銀法ともいわれます。水銀さえあれば小さな工場でも低コストで金を採取することが可能です。
しかし、人体や環境への水銀汚染のリスクが高いため、アマルガム法で金を抽出しているのは南アフリカなど一部の地域に限られています。
金の採掘は個人では厳しい
個人で金を採掘するのは難しいといえます。川から金粉を採取するのは比較的簡単ですが、量は極めて少なく、売るほどではありません。
また、鉱脈に含まれる金は鉱石から見つける必要があり、専用の機械がなければ不可能です。鉱脈の採掘には特別な機械が必要なため、個人で資金を準備することは難しいでしょう。また、膨大な時間もかかります。
以上のことから、金の採掘はできないわけではないものの、採掘量が少なく時間と資金がかかるため、個人で採掘するのは現実的ではありません。
まとめ
日本の金鉱山は多くが閉山しており、現在商業採掘されているのは鹿児島県の菱刈鉱山のみです。金鉱山は世界中にあり、オーストラリア、ロシア、中国で多く産出されます。
また、金鉱脈を見つけるためは予算と時間が必要で、個人で採掘するのは実質不可能です。今後、日本で新たな金脈が発見されるかどうかは不明ですが、日本は火山が多い国です。深海での金採掘研究も進んでいるため、金鉱脈が発見されるかもしれません。日本での研究と、採掘の動向をチェックし、金脈の発見を期待しましょう。