目次
金本位制の始まり
金本位制は、各国が金の保有量を基にして通貨価値を定める制度のことです。国が保有する金量と同量兌換紙幣といういつでも金と交換できる事を政府が保証した紙幣を発行し、それを用いて取引を行います。金本位制は1816年、今から200年前に法的に実施されるようになりました。その後、世界各国で金本位制が取り入れられ、20世紀初めの頃まで主流となっていました。
金本位制のメリット・デメリット
メリット
インフレを防ぐ
金本位制では紙幣を金の保有量以上に発行することはできないので、「紙幣を刷りまくった結果、紙幣の価値が下がってしまった…」ってことが起こりません。つまり、紙幣の価値が安定し、インフレを防ぐことができるわけです。
為替相場が安定する
各国の紙幣の総量が金の保有量によって決まる仕組みのため、自国の紙幣と外国の紙幣の交換が容易になります。これはお互いに金という価値を測るものさしが共通のため、互いの紙幣の価値がわかりやすいためです。そのため金本位制を採用している国同士の取引が容易でした。
貿易がしやすい
為替相場が安定すると、貿易も安定します。極端な例を挙げると昨日は100円=1ドルですが、今日は50円=1ドル、1週間後には300円=1ドルのように為替の上下が激しいと、どのタイミングが適切か、今はリスクが高いかもしれないと考え、貿易規模がどんどん縮小していきます。一方で金本位制で紙幣の価値が固定されている場合、その国同士の取引は安定して出来るため貿易が活発になりやすいです。
デメリット
政府がお金を増やすことができない
政府が発行できる紙幣の上限が金の保有量で制限されているため新たな紙幣を発行することが出来ず、何か危機的な状況に陥った時でもうまく対応するのが難しくなります。そのため、第一次世界大戦時に金本位制をやめる国が多くなり、そのまま金本位制は廃れていきました。
国内の経済成長が起きにくい
保有している金の分しかお札が発行できないというのは、経済活動に制限を加えることにもつながってしまいます。例えば、企業が新しい事業に乗り出すために、銀行にお金を借りたくても、「金がないから融資できません」というようなことが日本中のあちこちで起こったら、国単位の経済の成長は停滞してしまいます。
輸入が多い国がどんどんつらくなる
金本位制では輸入額が輸出額を上回る=国が保有する金の量が減少することを意味します。そのため、輸出が多くなると金の保有量が減り、その分紙幣の発行も出来なくなり上述したように国内の事業の発展も難しくなるという負のループに突入してしまい、抜けることが難しくなってしまいます。そのため、各国の格差が広がりやすいともいえます。
日本で金本位制が定着しなかった理由
日本での金本位制の歴史は鎖国が解除された1854年以降に始まります。明治時代になり外国との貿易が盛んになったことから日本政府は、金本位制を導入しようとしました。しかし、日本では金本位制が長期に渡って継続される事はありませんでした。それには以下のような理由が挙げられます。
当時の日本が金をあまり保有していなかったため
当時の日本は金の保有量が少なかったため、金を用いて取引を行う事が難しい状況でした。そのため、金の代わりに銀で円の価値を保証する銀本位制を導入しました。その後1897年まではこの銀本位制が続いていましたが、日清戦争に勝利したことで、日本が多額の賠償金を得ることにより、金の保有量が増え、そこから金本位制がスタートしました。
災害による影響
1914年に第一次世界大戦が勃発し、各国が自国の紙幣と金の交換を停止しました。終戦後、経済が安定してきた先進国は金本位制を再開していきました。しかし、日本ではそのころ関東大震災や世界恐慌の煽りを受け、日本での金本位制の継続は難しくなっていました。
終戦後はアメリカを中核とした疑似的な金本位制へ
第二次世界大戦後アメリカが大量の金を保有し、米ドルと金の価値を連動させるブレトン・ウッズ体制が作られました。これにより、各国は米ドルを仲介した疑似的な金本位制を行うこととなったのです。しかし、世界中に米ドルが多く流出し、アメリカ国内の金量をはるかに超える米ドルが発行された事を重く見た当時の大統領ニクソンによって、米ドルと金の交換が禁止されることになりました。これが俗にいうニクソンショックといわれているものです。その結果1973年にはほとんどの先進国が現在の変動為替相場制に移行し、金本位制の時代が終わりを迎えました。
このように日本では金本位制が長期間続くという事がありませんでした。そのため、金本位制に慣れる事は難しく金本位制が定着しなかったのではと考えられます。
まとめ
今回は金本位制について簡単にご紹介しました。長い間世界経済の物差しになるほど重要視されている金の価値は、今後も上がっていくと予想されています。これを機に金の保有を考えてみてはいかがでしょうか。