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「金の延べ棒」の様々な名称
金は古来より、その価値に信頼が寄せられてきました。世界恐慌や戦争などで貨幣価値が暴落しても金の価値が暴落することはありません。これが「有事の金」と言われる所以です。金の延べ棒は、「金のインゴット」とも呼ばれます。インゴットingotとは「鋳塊(ちゅうかい)」と訳されます。鋳塊とは、炉で精錬した金属を鍛造し、一定の形に凝固させたもの。地金ともいわれます。インゴットには、金のもの以外にも銀やプラチナ製のものが存在し流通しています。また、「ゴールドバー」と呼ばれることもありますね。バーbarは、棒状の塊を示す単語です。投資や買取の分野においては、ほぼ同義で扱われる「地金」と「インゴット」ですが、厳密には「地金」の方が、「インゴット」より幅広い状態に適用されます。
金のインゴット、どう使われる?
金のインゴットは昨今、資産運用の目的で注目されています。こうした場面で活躍するのが、金のインゴットです。
投資対象として金が注目を集めるのは、世界経済への不安感が高まっているタイミングです。新型コロナウィルス蔓延やウクライナ情勢など、見通し不明瞭な社会不安から抜け出せない世の中で、安定資産である「金」に走る人々が増えているのです。また、資産を守るために金を購入するのは「個人」だけではありません。各国の中央銀行も資産を守るために金を保有しています。
インゴットに加工された金は、資産として保管しやすい形状をしています。また、金を鋳型に流し、刻印を打つだけでインゴットが出来上がります。地金型金貨と比較しても、余計なコストがかからないというメリットがあります。
◆金のインゴットには厳しい規格がある
インゴットは投資目的で取引されるため、厳しい基準で管理されています。インゴットの原料はK24と表記される純金です。
インゴットには「純金のみ」使われますが、100%純金を生産することは非常に困難です。できるだけ純度の高いものにするのが理想ですが、純度の低い不良品を排除し、金の価値を下げないように基準が設けられています。インゴットの基準は、代表的な取引市場によって設定されているほか、溶解業者や品質保証認定機関などが厳密に定められています。これらの基準と条件が満たされない場合、インゴットは市場を通じて取引できません。
インゴットの作り方
インゴットは純金から作られています。純金と言えば「鉱山から採掘されるもの」を連想される方も多いのではないでしょうか。しかし、金山が減っている日本で昨今注目されているのが、スクラップから金を取り出し、インゴットを作る「都市鉱山」を活用した方法です。具体的な手順を紹介します。
1、金の採取
金を採取するために、スマホやパソコンから半導体部分などを集めます。
2、溶かしてから再び固体に戻す
金は溶けにくい性質をもつため、金の溶解には「王水」と呼ばれる強力な酸性の液体を使用します。回収した半導体部分を付着している金以外の成分を含めて王水をかけて一度溶かします。溶けた金に還元剤を入れることにより、金を再び固形の粉末状態に戻します。
3、ろ過、乾燥
粉末にした金を溶かして溶液にし、ろ過します。こうすることで金の結晶粉末のみを99%以上の純度で取り出すことができます。純度を高めるため、もう一度王水による溶解からろ過する過程を繰り返します。ここまですれば「精製金」と呼ばれる純度99.99%の金の粉末になります。
4、粉末を粒にする
1064度以上の熱を加えると金は融解します。熱を加えた金が溶けたら急激に冷却し、粉末状から個体にします。ちなみに、この状態の貴金属の粒は、金以外にも地金として一般的に流通しています。銀製品の場合、「笹吹き」とも呼ばれています。
5、粒をインゴットに成形する
インゴットを鋳造するため、金の粒に1000度以上の熱を加えます。溶けた金を鋳型に流し込み、固めれば純度99.99%のインゴットの完成です。
6、検査、刻印
最終検査結果をもとに、ロンドン金市場の公認マーク(メルターズマーク)や品質、ブランド名などを刻み込みます。
インゴットの重さとサイズ
商品として販売されている金の延べ棒には、どのような種類があるのでしょうか。日本の貴金属メーカー最大手の田中貴金属工業を例に、重さと大きさ別にまとめると次のようになります。
12.5kg
1kg
500g
100g
50g
20g
10g
5g
2g
1g
この中で一般的な取引に用いられる金インゴットは1kgのものです。5gなど軽いものは、ペンダントなどの用途で用いられることが多いです。12.5kgのものはあまり見かけることはありません。これは「ラージバー」と呼ばれ、ロンドン金市場で取り引きされています。映画に登場するようなインゴットはこの「ラージバー」です。
信頼できるブランドのものを購入しよう
出回っている金の中には偽物も少なくありません。LBMA(ロンドン貴金属市場協会)の基準を満たした、刻印があるものが安心です。また、刻印がなされていない金は、買取に出す際にも価値が大きく下がってしまうリスクがあります。
様々な方法でインゴットを購入することができますが、初めて購入するのであれば、貴金属販売会社の直営店での購入が安心です。担当者の顔も見えますし、実際の金も見て、手に取ることができます。不明点はその場で担当者に確認することもできますよ。
また、電話購入も一つの方法です。電話で担当者と話し、案内された振込先に代金の振り込みを行います。振込が確認されたのちに、貴金属販売会社より品物が郵送されます。金取引に慣れている方ですと、この方法で購入する方もいます。
最後に、インターネットで購入する方法があります。しかし、転売業者や信頼できない業者が販売しているケースもありますので、販売会社を確認し少しでも怪しいと思ったら取引をやめましょう。
LBMA(ロンドン貴金属市場協会)
1987年に設立されたロンドン貴金属市場協会(LBMA)は、世界の現物地金取引を代表する国際的な団体で、「貴金属の世界的権威」と定義されます。 取引業者、精錬業者、生産業者、鉱山業者、加工業者、保管・安全輸送サービス業者など、世界約150社がメンバーとなっています。LBMAの使命は、「基準を設定し、市場サービスを開発することにより、最高レベルの完全性、透明性及び信頼を確保し、世界の貴金属業界に価値を付加すること」です。
LBMAは、市場の管理と継続的な改善を推進し、すべての市場参加者が自信を持って活動できるようにします。LBMAは、貴金属がどのように精錬され、取引されるかを定義する機関であり、世界的に認められた「ロンドン グッド デリバリーリスト」と責任ある調達プログラムを通じてこれを実証しました。
LBMAは、世界中の貴金属に関わるあらゆる人々(中央銀行や精錬業者、投資家まで)と協力しています。世界の貴金属市場の声として機能することに加え、LBMAは規制当局、投資家、顧客の窓口ともなっています。
LBMAは、世界中で行われている店頭取引のためにロンドンで地金の清算と保管を組織し調整するロンドン貴金属決済有限会社(LPMCL:London Precious Metals Clearing Limited)と常に密接に連携してきました。2017年、LBMAはLPMCLの管理機能を引き継ぎました。また、ロンドン・プラチナ&パラジウム市場(LPPM)とも密接な協力関係にあり、各組織の経営委員会や理事会には相互に代表者が参加しています。
東京商品取引所
日本で唯一の公設貴金属市場である東京商品取引所(Tokyo Commodity Exchange, Inc.)。トコム(TOCOM)という名称でも親しまれています。厳正な取引基準のもとで、世界各国のブランドインゴットが先物取引の受渡供用品として扱われています。東京商品取引所では、99.99%以上の純度のものが取引されています。
金地金と金貨の税金に関する注意点
◆購入金額・売却金額の証明書類は必ず保管する
金地金、金貨の売却金額が購入金額を上回る場合は、確定申告をして税金を支払う必要があります。これはあくまで売却時に利益が出た場合であり、利益が出ていなければ税金を支払う必要はありません。
ここで重要になってくるのが購入金額、売却金額の証明となる書類です。金投資の場合、長期保有となる可能性が高いため数年間書類の保管が必要になります。
書類の紛失などにより購入金額が不明の場合は、売却金額の5パーセント相当額が購入金額として適用される場合がありますので、特に注意が必要です。
◆長期保有を心がける
一般的なサラリーマンの場合、金の利益は譲渡所得となり保有期間が5年を超えると長期譲渡として扱われ課税対象となる金額が半分になり、支払う税金が大幅に減るという税制面での優遇が受けられます。
◆消費税は気にしなくても大丈夫
個人売買の場合は消費税について特別に税務署に申告する必要はありません。ただし、短期間で何度も売買を繰り返すと納税の義務が発生する場合もあります。
まとめ
今回は金インゴットが生まれるまでや売却時の注意点を簡単にご紹介しました。金の売却は譲渡にあたります。譲渡にあたっては税金が発生しますので、役所に申告・納税を行わなければなりません。この納税に関しては、自分で調べるよりも経験のある買取業者に相談するほうが明快かもしれません。最近では、精錬分割加工などを行って、税金に対する対策を取ってくれる業者も少なくありません。「買取大吉」でも貴金属の売却に関するご相談を受け付けております。是非一度ご相談ください。