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金の性質
金は耐性が安定した金属です。
金を溶かすには1064℃以上、蒸発させるには2856℃もの高温が必要です。例えば、火災が発生しても、ほとんどの場合は金が溶けずに残ります。
また、金の耐性は熱だけではなく、金に濃度が高い酸性やアルカリ性の液を付着させても、簡単には溶けません。金はいくつもの強い耐性を持っているため、普段の生活で純金は錆びず劣化しないのです。
金が錆びないのはなぜ?
「錆び」とは金属が酸化還元反応によって腐食する現象で、空気中の酸素や水分が原因です。物質はすべて原子から成り立っており、原子は陽電荷を持つ原子核と陰電荷を持つ電子から構成されています。
酸化とは、原子から電子が取り除かれ、陽イオンになることを指し、これが錆びの発生につながります。
金は他の金属に比べて陽イオンになりにくい性質を持っているため、錆びにくい特性があります。金属ごとにイオン化傾向は異なり、陽イオンになりやすい金属ほど錆びやすいのです。
「合金」だと錆びることがある
金のなかには錆びやすい金や錆びる金もあります。
金でも錆びることがあるのは、「合金」です。合金は、金ではない他の金属が含まれているため、金が錆びないとしても、混ざった金属が錆びればその製品は錆びます。
また、販売されている金のほとんどは合金なのです。そのため、金が錆びないからといって安心せず、金の種類や、種類ごとの取り扱いには注意する必要があります。
金以外の錆びづらい素材
金属のなかでも金は非常に錆びにくいですが、錆びにくい金属は他にもあります。さまざまな分野で利用されている金属を紹介します。
プラチナ
プラチナは、金に次いで錆びにくい金属です。金よりも融点が高いため溶ける心配が少なく、工業分野での需要が高いです。なかでも、自動車の排気ガスを浄化させる金属として広く使われています。
プラチナは金よりも希少なものとして認知されており、総生産量は金の30分の1ほどです。耐食性に優れているため、結婚指輪といった長期間使用するアクセサリーの素材としての需要があります。
資産のひとつとして持つ方も増えていますが、錆びにくい性質からさまざまな分野でも使われる金属です。
銀
銀は金と同様、アクセサリーに使われることが多く、白く柔らかなツヤがあります。
しかし、銀は化学反応が起こりやすく、酸化、硫化、塩素化といった現象によって変色する点に注意しましょう。
銀が変色した場合は、専用の布や研磨剤が入ったクリームで擦り、硫化銀の膜を取り除くと元の輝きを取り戻すことができます。銀の硫化はメッキによって防げるため、現在市販されている銀製品の多くはメッキ加工されています。
金が錆びてしまったときの対処法
金やプラチナ製品が変色した場合、家庭でできることを紹介します。簡単な方法で元の美しい状態に戻すことができるため、試してみましょう。
お手入れ前の注意点
アクセサリーのお手入れ方法や注意事項は、素材や加工によって異なります。お手入れの際は、必ずアクセサリーの刻印を確認してください。
アクセサリーに以下の刻印がある場合は、メッキ加工されているため注意が必要です。
・GF(ゴールドメッキ)
・GP(ゴールドメッキ)
・PP(プラチナメッキ)
・WG(ロジウムメッキ)
これらは、自宅でのメンテナンスでメッキが剥がれることがあります。金やプラチナは硬そうに見えますが、柔らかいため磨くと摩耗して薄くなり、強度が低くなる恐れがあります。
特に、石がついたものは石の部分を擦らないようにしましょう。高級な商品や価値が高いと思われる商品は、販売店に相談する方法が有効です。
中性洗剤で手入れする
変色したジュエリーは、以下の手順で洗うときれいになります。
➀ぬるま湯に中性洗剤を溶かす
➁ジュエリーを容器に入れ、約20分間放置
➂洗剤をよく洗い流し、柔らかいクロスで拭く
ほとんどの錆は、この方法で解決できます。
普通の食器用洗剤でもよいですが、中性洗剤では落ちない頑固な汚れは、アンモニア水を使うと落ちる場合があります。アンモニアは洗浄力が非常に強いため、必ず水6:アンモニア1くらいの割合で薄めましょう。
また、長時間ジュエリーを浸したままにすると、金属を傷めることがあるため注意が必要です。短時間浸した後は、アンモニアが残らないように丁寧に水ですすぎ、丁寧に拭き取ります。
宝石で装飾されたジュエリーは、自宅でのお手入れ方法には適さない場合があります。石の種類によっては水に弱く、色がくすんだり、ひび割れたりすることがあるため、不安な場合は専門店に相談しましょう。
クロスやブラシで磨く
酸化によって黒ずんだ部分を磨くと、変色が取れる場合があります。錆びた部分は貴金属用の布や柔らかいブラシで磨いてみましょう。
ただし、ジュエリー用のクロスには研磨剤が含まれており、純度の高い金は傷がつくことがあります。純度の高いものは磨かないようにするか、磨く場合はやさしく磨きましょう。
比較的純度の低い金でも、ブラシで強くこするのは避け、優しく扱うことが重要です。
レモン汁に浸す
レモン汁には酢酸の成分が入っており、酸化還元反応と呼ばれる反応により金の錆を分解することができます。
ジュエリーを容器に入れてレモン汁に浸し、5~10分後にジュエリーをレモン汁から取り出し、水でよく洗いましょう。
最後に柔らかいクロスで水をよく拭き取ってメンテナンスは完了です。ただし、酸に弱い真珠や珊瑚が付いているジュエリーの場合は、別の方法でメンテナンスをしてください。
炭酸水に浸す
金の洗浄には、市販の超音波洗浄機という特殊な機器を使用します。超音波洗浄機は超音波の衝撃を利用した洗浄方法です。ただし、家庭で超音波洗浄機を購入するのは効率が悪いため、炭酸水で代用します。
ぬるま湯に強炭酸水を入れて、その中に金を入れ、柔らかいブラシで優しくこすります。レモン汁と同様、ジュエリーが酸に弱い場合は使用を避けてください。
重曹で磨く
綿棒に少量の重曹をつけて水で濡らし、変色した部分を磨きます。優しくこすり、最後にぬるま湯で汚れを洗って柔らかいクロスで拭きます。特に、硫化による金の黒ずみには効果的です。
研磨布で磨く
酸化してしまった場合は、化学反応を起こした部分を削り取ることが最も効果的な方法です。市販されている貴金属用の磨き布で、変色した部分を丁寧に磨きます。
プロのクリーニング業者に依頼する
自分でクリーニングすることが心配な場合や、変色がひどい場合は、ジュエリーを購入したお店にクリーニングを依頼するのもひとつの方法です。購入したお店で無料でクリーニングしてくれるお店も多いため、販売店に相談してみましょう。
有料のクリーニングであっても、費用は3,000円以内で済むことがほとんどです。大切なジュエリーを安全にケアする方法として、専門店でのクリーニングは十分な価値があります。
ジュエリーの変色だけではなく、きれいな状態を維持するためのメンテナンスとしてもおすすめです。
金を錆びさせないためのコツ
金製品が変色、錆てしまった際は、布と中性洗剤を用いた洗浄が効果的です。付属の宝石に注意しながら、以下の方法を試してみましょう。
使用後はクロスでお手入れする
ジュエリーを使用した後は、必ずクロスで汚れを拭き取ることが重要です。汗や皮脂が付着したまま放置すると、金属が変色してしまう原因となるためです。そのため、使用後にそのまましまわず、必ずクロスで拭く習慣をつけましょう。
普段のお手入れには、研磨剤が入っていないクロスを使用するのが最適です。研磨剤が入っていないクロスを使用することで、ジュエリーに傷がつくのを防ぐことができます。
ただし、ジュエリーの状態が悪い時は自分でお手入れする前に購入店に相談しましょう。
空気や他の金属と触れないようにする
合金は他の金属や空気と反応して変色するため、布で拭いたジュエリーは別に保管してください。
小さなジップロックバッグがあると便利です。個別に袋に入れることで、ネックレスなどのジュエリーが絡まるのを防ぐこともできます。
水分に触れないようにする
合金に配合されている金属は、水や温泉、海水などの成分と反応して変色することがあります。例えば、「銀」を含む合金の場合、硫黄を含む温泉に浸かると黒く変色します。
変色を予防するためには、アクセサリーが水に触れたら外すことが大切です。
化粧品や香水がつかないようにする
メイク用品や香水にはアルコール、水分、油分が入っているため、金に触れると金属が錆びてしまいます。
例えば、ネックレスを身につける際にはデコルテへの化粧品の使用を控えましょう。香水も首には付けず、手首のみに使用するなどの工夫が必要です。
まとめ
純金は、日常生活で使用しているだけでは錆びない金属といえるでしょう。しかし、市場で販売されている金の多くは純金ではなく合金です。
金そのものは柔らかい素材のため、市場に出回っている金のほとんどは扱いやすくするために他の金属と混ぜられています。他の金属と混ざった合金は、金以外の素材が錆びるため、日常生活のなかでアクセサリーやアイテムが錆びてしまうのです。
「純金は錆びない」、「合金は錆びるため注意が必要である」という点を理解しておくと、購入・使用・売却時に役立つでしょう。