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金の売買で「消費税」がかかる
日本で金を買うときは、その金額に消費税を上乗せした金額を支払わなければなりません。一方で、日本で金を売却する場合は消費税を加えた金額を受け取ることができます。以下では、金を購入する場合の消費税と金を売却する場合の消費税を解説します。
金を購入する場合の消費税
日本では2024年7月現在、すべての商品・サービスに標準税率10%または軽減税率8%が上乗せされています。軽減税率は、酒類・外食を除く飲食料品と新聞に適用され、金は軽減税率の対象外です。
そのため、金を購入する際には10%の消費税が上乗せされます。例えば、20万円の金を買おうと思えば22万円、100万円の金を買おうと思えば110万円と金を買えば買うほど支払う税金は増えます。
消費税の納税義務があるのは事業者であり消費者ではありません。しかし、消費税は納税者と実質的な負担者を分離することで税負担の水平的公平を図る「間接税」として扱われるため、消費者が消費税を支払うことになります。
金を買取する場合の消費税
物やサービスを提供する事業者には納税義務はありますが、消費税を支払う責任はありません。つまり、事業者は消費者に消費税の支払いを請求できます。
金を買取してもらう場合も同じく、10%の消費税が上乗せされた金額を受け取れます。
例えば、10万円の金を売れば1万円、100万円の金を売れば10万円を上乗せすることが可能です。金の価格が高額であればあるほど、高い消費税を受け取れます。
金の買取で発生する消費税納税義務や納税方法
消費税は課税対象者と納税義務者が違う「間接税」であり、消費者から徴収した税金を事業者が納める必要があります。ここでは、金を売って得た消費税の納税義務と納付方法について説明します。
消費税の納税義務
法人と個人事業主には消費税の納税義務があります。
ただし、法人については前事業年度開始の翌日から6ヶ月間と事業年度開始の日の前日までの期間です。個人事業主については前々事業年度及び前事業年度上半期の課税売上高が1,000万円以下であれば、消費税は課税されません。
また、法人は事業開始から2年間は消費税が免除されますが、資本金が1,000万円を超えると事業開始直後から消費税が課税されます。個人事業主は、どれほど売っても事業開始から1年間は免税となります。
金地金取引で得た利益を事業資金に充てるのであれば、事業開始から1年以内に買取をしてもらうとよいでしょう。
消費税の納税方法
消費税の納付期限は個人事業主と法人で異なります。
個人事業主の場合は消費者から預かった消費税を課税期間の翌年3月末まで、法人の場合は事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に納付しなければなりません。
主な納付方法としては納付書による現金納付、振込納付、口座振替納付などがあります。ほかにも、コンビニ払い、クレジットカード払いなどを選択可能です。ただし、前課税期間の消費税額が48万円を超える事業者は中間納付が必要なため注意しましょう。
消費税以外で金の買取でかかる3つの税金
消費税が課税されない場合でも金の取引で支払う税金は消費税以外にもあり、所得税、贈与税、相続税などが発生する可能性もあります。ここでは、消費税以外で金の売買でかかる税金の種類、計算方法について解説します。
所得税
個人で金を買取してもらい利益を得た場合は譲渡所得になるため所得税の課税対象です。しかし、金のすべての売却益の所得税の対象ではありません。譲渡所得には、年間50万円までの特別控除があるため、金を売った際の利益が50万円以下の場合、所得税は課税されません。
所得税の課税対象になる所得とは金を保有していた期間で違いがあるため確認をしましょう。金を買ってから5年以内に売った際は「短期譲渡所得」、5年以降に売った際は「長期譲渡所得」とみなされます。
課税所得の計算方法は以下のとおりです。
・短期譲渡所得:売却価額-(取得価額+売却費用)-特別控除額50万円
・長期譲渡所得:{売却価額-(取得価額+売却費用)-特別控除額50万円}×1/2
短期譲渡所得と長期譲渡所得の両方がある場合はまず短期譲渡所得から特別控除額を差し引き、次に長期譲渡所得から残りの特別控除額を差し引きます。
贈与税
個人から金銭の授受なく金地金をもらった場合、贈与税が発生します。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 | ||
---|---|---|---|---|
200万円以下 | 10% | - | ||
300万円以下 | 15% | 10万円 | ||
400万円以下 | 20% | 25万円 | ||
600万円以下 | 30% | 65万円 | ||
1,000万円以下 | 40% | 125万円 | ||
1,500万円以下 | 45% | 175万円 | ||
3,000万円以下 | 50% | 250万円 | ||
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
しかし、贈与税には110万円の基礎控除があり、1月1日~12月31日までにもらった金の現在の時価が110万円以下の場合は贈与税はかかりません。贈与税は贈与した人と贈与を受けた人によって金額が違う点に注意しましょう。
贈与税には「一般贈与財産」と「特例贈与財産」2つの課税方法があります。一般贈与財産は兄弟間、配偶者間、親から未成年者へ金を贈与した場合のことで、一般贈与財産の税率と控除額が適用されます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 | ||
---|---|---|---|---|
200万円以下 | 10% | - | ||
200万円超~300万円以下 | 15% | 10万円 | ||
300万円超~400万円以下 | 20% | 25万円 | ||
400万円超~600万円以下 | 30% | 65万円 | ||
600万円超~1,000万円以下 | 40% | 125万円 | ||
1,000万円超~1,500万円以下 | 45% | 175万円 | ||
1,500万円超~3,000万円以下 | 50% | 250万円 | ||
3,000万円超~4,500万円以下 | 55% | 400万円 |
特例贈与財産は直系尊属(祖父母や父母等)から20歳以上の子や孫などの直系卑属への贈与のことで、特例贈与財産の税率と控除額が適用されます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 | ||
---|---|---|---|---|
200万円以下 | 10% | - | ||
200万円超~300万円以下 | 15% | 10万円 | ||
300万円超~400万円以下 | 15% | 10万円 | ||
400万円超~600万円以下 | 20% | 30万円 | ||
600万円超~1,000万円以下 | 30% | 90万円 | ||
1,000万円超~1,500万円以下 | 40% | 190万円 | ||
1,500万円超~3,000万円以下 | 45% | 265万円 | ||
3,000万円超~4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
相続税
亡くなった人の財産である金を相続すると相続税がかかります。しかし、課税対象になる相続財産の合計金額が基礎控除額を超えない場合は、相続税を支払う必要はありません。
基礎控除額の算出方法は次のとおりです。
・3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続財産の合計額は、以下の計算式で算出することができます。
・相続により取得した財産の価額+相続時精算課税贈与財産-(非課税財産の価額+債務+葬式費用)
各相続人の課税価格は、次の算式で計算します。
・相続財産の総額+相続開始前3年以内に受けた贈与財産の価額
ただし、相続財産の合計額がマイナスの場合は相続財産の合計額を0円で計算し、1,000円未満は切り捨てます。
それぞれの相続人の取得金額ごとの相続税率及び控除額は以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 | ||
---|---|---|---|---|
200万円以下 | 10% | - | ||
400万円以下 | 15% | 10万円 | ||
600万円以下 | 20% | 30万円 | ||
1,000万円以下 | 30% | 90万円 | ||
1,500万円以下 | 40% | 190万円 | ||
3,000万円以下 | 45% | 265万円 | ||
4,500万円以下 | 50% | 415万円 | ||
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
海外で購入した金の消費税
海外で金を購入すると消費税がかからず得をするのではと考える方も多いでしょう。海外で購入した場合の消費税や注意点を紹介します。
金額によって異なる
日本や韓国、インドといった国では金の取引に消費税がかかる一方、金を非課税で購入できる国も複数あります。海外で購入した金を日本に持ち帰る場合は、関税法で消費税の支払いが義務付けられているため、金を非課税で購入して持ち込んでもほぼ利益は得られないでしょう。
ただし、金の購入金額が20万円未満は非課税なので、20万円分の金を非課税で購入し国内で売却すれば、消費税である2万円の利益が出ることになります。
金の密輸は犯罪
金の密輸はグループでの犯罪が多いですが、近年はインターネットで「小遣い稼ぎ」と称して一般人を誘う悪質なケースも増えています。
何も考えずに誘いに乗ってしまうと密輸に加担させられ、厳しい罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。
金の買取で利益が出たら確定申告が必要
1月1日〜12月31日までの間に金を売却して50万円以上の利益(譲渡所得)が出た場合、その金額に応じて確定申告をして税金を納める必要があります。
確定申告は原則として利益が出た翌年の2月16日~3月15日までに行います。確定申告書を作成する際には本人確認書類や金を買取ってもらった時期がわかる書面、所得証明のための書類を提出しなければなりません。
まとめ
日本で金を購入、売却する際は消費税などを考慮して利益を算出することが重要です。消費税と法律を知り、ルールに従って金を購入、売却しましょう。