グラフで過去の金価格推移を振り返る
金価格は、世界経済の変動や市場の不確実性に敏感に反応します。
過去数十年にわたる金の価格推移を振り返ることで、金融市場の動向や投資家の心理を深く理解する手がかりが得られます。そこで、金価格の歴史的な動向をグラフを使って分析します。
過去10年の金価格推移グラフ
金価格の急激な変動とその背景
過去10年間の金価格は著しい変動を見せ、2013年には1グラムあたり4,000円台中盤から、2022年には7,000円台後半に急騰しました。
この変動の背景には、世界経済の不確実性、地政学的リスク、金融政策の影響が深く関わっています。
金価格が大きく変動した主な要因は、2011年の世界的な景気後退と金融不安により、リスクが低い資産として金への需要が急増したことです。
この年、金価格は過去最高値に達しました。その後、2012年から2015年にかけて、世界経済の回復を受けて金価格は安定し、横ばいで推移しました。
金価格の上昇要因と今後の展望
2015年から2016年には、アメリカの利上げやドル高が影響し、金価格は一時的に低迷しました。しかし、2019年にはアメリカと中国の貿易戦争や中東情勢の不安定化が影響し、再び上昇が始まります。
何より、 2011年の世界的な景気後退と金融不安が金への需要を急激に押し上げ、1グラムあたり6,000円台へ突入しました。2021年にはインフレ懸念が強まり、金はさらに値を上げます。
2022年には、ロシアのウクライナ侵攻を受けて急激に高騰しました。2023年には9,000円台に達し、2024年10月にはついに15,000円台に到達し、過去10年で最も顕著な価格高騰を記録しています。
金利政策や地政学的リスクなどが影響し、安全資産である金の需要が高まった結果だといえるでしょう。
過去20年の金価格推移グラフ
2003年から2013年における金価格変動と主な要因
金価格は、過去20年間で顕著な変動を見せました。特に2003年から2013年の間、金価格は大きな変動を見せ、これまでにない高水準に達します。
当時、2003年の金価格は、1グラムあたり1,300円から1,400円程度と今と比べると驚くほど低価格でした。しかし、その後の数年間で急激に上昇しています。
この価格変動には、いくつかの重要な要因が関与しています。特に2003年から2005年にかけて、アメリカのイラク戦争や金融市場の不安定さが影響し、金価格は徐々に上がっていきました。
2005年末には1,900円台後半、2006年には2,000円台中盤に到達します。その後も価格は高騰を続け、2007年には2,000円台後半に、2008年には一時3,000円台を突破しました。
2008年の金融危機とその後の影響
2008年の世界的な金融危機が金価格に与えた影響は絶大でした。こうして、投資家たちは価値を保全する資産として金を求めた結果、金価格は急騰したのです。
その後、2009年には一時的な価格の下落を見せたものの、2010年には再び値上がりが始まります。2011年には、ヨーロッパの債務危機やアメリカの財政問題が金価格を押し上げ、ついに1グラムあたり4,000円台に達しました。
この急激な上昇は、ヨーロッパの債務危機やアメリカの財政問題といった不安定な世界情勢が背景にあり、金の需要が高まったためと考えられています。
過去30年の金価格推移グラフ
過去30年の金相場の変遷と安定期
金相場の推移を振り返ると、過去30年間で特に注目すべきは、直近10年から20年の急激な価格上昇です。しかし、1993年から2003年にかけての10年間は、金価格が比較的安定していた時期でした。
この期間、金の価格は1993年時点で1gあたり1,200〜1,300円程度、2003年には1,400円台と、大きな変動は見られませんでした。
価格の安定性には、ドル・円相場の安定が影響しています。1990年代、日本経済はバブル崩壊後の低迷期にあり、ドル・円相場も比較的安定していました。
このため、金への需要が低調で、金価格は急激な変動を避けて推移していました。さらに、この期間に金の価格が一時1gあたり1,000円を下回る最安値を記録しています。
アジア通貨危機と金相場への影響
1997年のアジア通貨危機は、金相場にも大きな影響を与えました。アジア諸国を中心に経済が低迷した結果、金の需要が減少し、価格は一時的に下落しました。
このような背景から、1990年代後半から2000年代初頭の金相場は、著しく低い水準で取引されていたことがわかります。
現在では、リスクが低い資産として需要が急増し、金価格は急騰していますが、当時の金相場は安定しています。この変遷を理解することで、金の長期的な価値を見極めるためのきっかけとなるでしょう。
日本における金の過去最低価格
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で経済への不安が広がりました。同年7月、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、経済の低迷が前例のない厳しさに直面していると発言します。
さらに、「経済の行方は極めて不透明であり、その多くがウイルス抑制の成否にかかっている」と指摘しました。この発言を受け、経済への懸念が一層高まりました。
こうして、ドル資産を手放し、リスクヘッジ資産と考えられている「金」を購入する動きが活発化しています。こうした背景が、金価格の上昇を後押ししたのです。
金の価格推移で見ると2024年の今が売り時?
金価格が現在の水準に達した背景には、過去数十年にわたる一貫した上昇トレンドがあります。1998年に1グラムあたり865円という最安値を記録しましたが、その後は着実に価格を上げています。
2024年10月には、ついに史上最高価格を記録しました。この背景には、経済不安や地政学的リスクが影響しています。2019年以降、コロナショックをはじめとする不安要素が続き、金の安全資産としての需要が高まりました。
現在、金相場は依然として高い水準を維持していますが、世界情勢も未だに不安定です。今後も先行きの不確実性を背景に、金相場は引き続き高水準で推移する可能性が高いと考えられます。
とはいえ、経済不安が続けば、現金確保のために金を売る動きが出ることが予想されます。このような流れから、金相場が下落に転じるリスクも考慮すべきです。
まさに、金相場が高騰している「2024年の今」が、売り時であるといえるでしょう。
■過去の金買取相場年表
最高価格 | 最低価格 | 平均価格 | |
2024年(11月現在) | 15,025円 | 10,310円 | 12,621円 |
2023年 | 10,819円 | 8,579円 | 9,601円 |
2022年 | 8,860円 | 7,244円 | 8,301円 |
2021年 | 7,483円 | 6,413円 | 6,934円 |
2020年 | 7,676円 | 5,648円 | 6,608円 |
2019年 | 5,748円 | 4,797円 | 5,244円 |
2018年 | 5,127円 | 4,487円 | 4,824円 |
2017年 | 5,045円 | 4,677円 | 4,852円 |
2016年 | 4,941円 | 4,365円 | 4,657円 |
2015年 | 5,298円 | 4,428円 | 4,841円 |
2014年 | 5,039円 | 4,252円 | 4,571円 |
金の価格推移が変動する要因
金の価格は、経済の動向や地政学的リスク、金利などさまざまな要因によって変動します。これらの影響が複雑に絡み合い、金市場に大きな波乱をもたらしています。
インフレ・デフレなどの経済的要因
金の価格は、インフレやデフレといった経済的要因の影響を強く受けます。
インフレが進むと通貨の価値が低下し、金やプラチナといった現物資産の需要が増加します。そのため、価値が安定している金への投資が進み価格が上昇します。
しかし、デフレや金利の上昇は投資コストを増大させ、金の需要を減少させるため、価格は下落しやすくなります。金の供給量が限られているため、需要の変動が価格に直接的な影響を与えます。
地政学的要因
戦争やテロ、政治的不安といった地政学的リスクの高まりは、金の需要を押し上げる要因です。不確実性が増す中で、投資家はリスク回避策として安定した資産である金を選ぶ傾向があります。
さらに、政府の金融政策や通貨政策が変更されると、金価格にも影響を及ぼすでしょう。金利が上昇したり、通貨価値が下落したりすれば、その価値を維持できる金への需要が一層強まります。
需要と供給のバランス
金は、資産としての利用に加え、ジュエリーや電子機器など多岐にわたる分野で需要があります。そのため、新興国の経済成長や特定分野の需要増加が価格を押し上げます。
その反面、供給面でも影響があります。鉱山からの採掘が難航したり、リサイクル活動が低調であれば、供給不足が生じるでしょう。その結果、金価格がさらに高騰する可能性が高まります。
為替相場
金は米ドルで取引されるため、円安が進むと、金の価格は相対的に上昇します。ドルに対して円安が進行するほど、日本国内での金価格は高くなります。
また、円安は海外投資家による日本市場への投資を促進し、金への需要が増加する可能性があります。円安が日本経済や政治の不安要素を浮き彫りにすれば、安全資産として金への関心が高まるでしょう。
例)金価格が1gあたり、
70ドルの場合 |
1ドルが100円なら、70ドル×100円
金1g=7,000円 |
2000年代以降に金価格が大きく動いた出来事
金価格は1990年代に長期間の下落を経験したものの、2000年代に入ると急激に上昇しました。
その背景には、ITバブル崩壊・世界同時多発テロや、2003年のイラク戦争といった政治的な事件があり、さらにアベノミクスなどの経済政策があります。
金価格の高騰とその背景にある地政学リスク
政治・経済の動向を考えると、金市場へ大きな影響を与えてきたことがわかります。
特に顕著なのは、2020年の新型コロナウイルスのパンデミックです。世界中で不安を引き起こしたため、安定性を求める投資家たちは、通貨よりも金に注目しました。
この影響で金価格は過去最高値を記録します。さらに2024年現在も、ウクライナ紛争やアメリカの金融機関破綻などが影響を与え続けています。
金投資を考える際には、こうした地政学リスクを踏まえた、価格変動への理解が求められるでしょう。
金価格に影響を与えた経済危機一覧
年代 | ニュース | 最高買取価格(円/g) |
1999年 | – | 1,187円 |
2001年 | 世界同時多発テロ
インターネットバブル崩壊 |
1,227円 |
2003年 | イラク戦争勃発 | 1,523円 |
2007年 | サブプライム住宅ローン危機 | 3,443円 |
2008年 | リーマンショック | 3,339円 |
2011年 | 南欧債務危機
東日本大震災 |
4,878円 |
2013年 | アベノミクスによる緩和 | 5,255円 |
2015年 | 上海ショック | 5,298円 |
2020年 | コロナウイルスの流行 | 7,676円 |
2022年 | ロシア・ウクライナ問題 | 8,860円 |
2023年 | 米国銀行の経営破綻 | 10,819円 |
リーマンショックとコロナショックの金価格推移の違い
金価格は次の要因で構成されています。
① ドル
金はドル建てで取引されるため、ドルの価値が下がれば金価格は上昇しやすくなります。
② 金利
金は無利息資産のため、金利が上がると相対的に魅力が低下し、価格が下がる傾向があります。逆に金利が低いと価格は上がりやすいです。
③ GDP(国内総生産)
経済成長が金価格に間接的に影響します。成長が低迷するとリスク回避のため金需要が増えることがあります。
④ 需要
宝飾品、投資、産業用途、中央銀行の購入などの需要が価格を押し上げます。
リーマンショック後の金価格動向とその背景
リーマンショックを契機に世界中で金融緩和が行われ、金利はゼロに近い水準まで引き下げられました。その結果、金価格は大幅に値上がりしました。この背景には、ドルと金利という二つの要因が複合的に作用したことがあります。
加えて、東側経済圏、特に中国の中央銀行が金を積極的に購入したことが重要な役割を果たしました。
■中国の金準備(チャイナ・ゴールド・リザーブズ)
<参照元:TRADING ECONOMICS>
2009年以降、中国の金保有量は急増し、ロシア、トルコ、メキシコ、インドなどの新興国も金の購入を増加させます。これにより、世界の金需給がひっ迫した結果、金価格は急騰しました。
リーマンショック後の金価格上昇は、主にこれらの需給要因によって引き起こされたといえるでしょう。
コロナショック後の金価格と金利引き上げの影響
一方、コロナショック後の金価格の動向は、リーマンショック時とは異なる動きを見せました。コロナ禍では、リーマンショック時を大きく上回る規模の金融緩和が実施され、ドル供給量も大幅に増加しました。
それにもかかわらず、金価格はリーマンショック後ほど急騰しませんでした。この違いの要因は、金利の動向にあります。
■米国金利(Federal Funds Target Rate / 2000-2024)
<参照元:TRADING ECONOMICS>
リーマンショック後の金利引き上げには8年もの時間がかかりましたが、コロナショック後はわずか2年で引き上げが進みました。この迅速な対応が、金価格の急騰を抑える役割を果たしたと考えられます。
金価格におけるリーマンショックとコロナショックの比較
リーマンショックとコロナショックを比較すると、金市場の動きには明確な違いが見られます。
リーマンショック時は、主に金融緩和と金の需給バランスが金価格を押し上げました。それに対して、コロナショック後は金利が迅速に引き上げられたことで、金価格の急騰を抑えています。
今後、金価格の動向は金利や経済情勢に大きく左右されるでしょう。しかし、金はインフレや経済不安に対する有力なリスクヘッジとして、重要な役割を果たし続けると見られます。
まとめ
金相場の推移は、単なる価格変動にとどまりません。世界経済や国際情勢を反映する指標であり、今後もその動向を引き続き注視する必要があるでしょう。