貴金属とは
「貴金属」とは一般的に「高価で貴重な金属」のことだと知られていますが、正しくは「イオン化傾向が小さく、酸やアルカリに反応しにくい安定している金属」を指します。言い換えれば、サビたり変質したりしづらい金属のことです。なおかつ産出量が少なく希少な金属でもあります。たとえば鉄は、硬く丈夫で産業に欠かせない金属ですが、酸化しやすく産出量が多いものですので貴金属には入りません。高価で貴重な金属として取り扱われる金属は、金、銀、プラチナを含む8種類です。高価で貴重な金属とは一般に、金(Au)、銀(Ag)と、プラチナの仲間である白金族の6種類、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の合計8種類を貴金属と称しています。
安定した性質を持つ貴金属は、長い年月を経てもその輝きや美しさが損なわれないため、ジュエリーの素材にうってつけです。そのほか高性能な電子部品などにも使われており、日常生活のいたるところで役に立っています。使い道が豊富で希少な貴金属であるからこそ、需要が供給量を上回り高価となるのでしょう。これらの高価で貴重な金属の共通点は、加工しやすく、化学的に安定しており、希少性があることです。単純に高価で珍しいというだけではなく、錆びたり変質しづらいという性質も貴金属の条件として必須です。例えば、銅は柔らかく加工しやすいですが、酸化や錆が起きやすく、希少性も低いため貴金属ではありません。
それぞれの高価で貴重な金属の特性
高価で貴重な金属といっても、全てがジュエリーに使われるわけではありません。ここでは、8種類の貴金属の特性について解説します。
①金
貴金属といえば、まず最初に金の存在を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。金は精錬しなくても単体で美しい金色をしており、ジュエリー用や工業用など、幅広い分野で活躍する金属です。金は酸やアルカリに強く、空気中や水中でも酸化することはほとんどありません。また、柔らかいので加工しやすく、金箔のように薄く伸ばすこともできます。電気抵抗や熱伝導率の面でも優秀で、半導体などの部品にもよく使われます。純金の状態では耐久性に難があるため、ジュエリーに使われる金は銅やパラジウムなどほかの金属と混ぜ合金にするのが一般的です。この混ぜ合わせる金属のことを「割金(わりきん)」と言います。金をベースとした合金には、「K18」など、含まれている金の割合を示す刻印がつけられています。K18(18金)は全体の24分の18、つまり75%が金という意味です。金の主な特徴と用途は下記の通りです。
【特徴】
・比重が大きい(19.32)
・酸やアルカリに強い
・化学的に安定している
・展延性(叩いて延びる性質)に優れる
【用途】
・装飾品
・資産運用
・工業製品
・医療機器
②銀
銀は貴金属の中でもっとも熱伝導率と電気伝導率の高い素材です。また、可視光線の反射率も高く、銀特有の白っぽい光沢感が特徴です。貴金属は化学的に安定していることが求められますが、銀は貴金属の中では比較的化学変化を起こしやすい素材です。酸化はしにくいのですが、空気中の硫黄化合物と反応して、表面が次第に黒ずんできます。シルバーアクセサリーでよく見かける「いぶし加工」は、硫化による変質を利用したものです。銀の純度は千分率で表記します。純度が95%の銀であれば、「Sv950」「Ag950」などと表記されます。銀の主な特徴と用途は下記の通りです。
【特徴】
・光反射率が全金属中最大(98%)
・展延性に優れる
・銀イオンは殺菌効果を持つ
【用途】
・工業用の半導体など
・装飾品やその割金
・銀食器
・洗濯用洗剤
③プラチナ(Pt)
ジュエリー素材として人気のプラチナは、非常に希少性の高い貴金属です。金の年間産出量は3000トンほどといわれていますが、プラチナは年間わずか200トンほどしか採取できません。プラチナは「白金」とも呼ばれるため金の一種と思われがちですが、素材としてはまったくの別物です。プラチナは金より柔らかくて重く、加工が難しい素材です。酸やアルカリに強く、高温でも溶けづらいため、プラチナの加工には高い技術力が求められます。銀と同様に、純度を千分率で表記します。純度が95%のプラチナであれば「Pt950」です。プラチナの主な特徴と用途は下記の通りです。
【特徴】
・比重が大きい(21.45)
・酸やアルカリに強い
・融点が高い
・化学的に安定している
【用途】
・装飾品
・工業用品
・自動車用触媒
・医療機器
④パラジウム(Pd)
パラジウムは、日常生活に密接に関わっている貴金属です。主に電子部品や工業製品などに使われるほか、銀歯の素材としても欠かせません。また、パラジウムはプラチナによく似た輝きを持っていますが、硬度はプラチナよりも高いため、ジュエリー素材としても使われます。パラジウムは、金やプラチナの硬度を高めるための割金としても一般的です。例えば、金にパラジウムを割金として混ぜることで、ホワイトゴールドが生まれます。パラジウムの主な特徴と用途は下記のようなものがあります。
【特徴】
・鉄と同程度に融点が低く(1555℃)加工しやすい
・体積の935倍もの水素を吸着できる
・展延性に優れる
【用途】
・装飾品の割金
・電子部品
・自動車用触媒
・銀歯
⑤ロジウム(Rh)
ロジウムはパラジウムと共に、プラチナの鉱石から発見された白色族の金属です。そのため産出もパラジウム同様に少なく高い希少性を持ちます。需要も高いことから、貴金属の中で最も高価と言われるのがこのロジウムです。化学的に非常に安定しており、金やプラチナを溶かす「王水」でも、このロジウムを溶かすことはできません。ロジウムの主な特徴と用途は下記の通りです。
【特徴】
・耐食性が高い
・酸やアルカリに強い
・光反射率が白金族中最大(80%)
・硬度が高い
【用途】
・装飾品の割金やメッキ(コーティング)
・電子部品
・自動車用触媒
⑥ルテニウム(Ru)
ルテニウムもその産出はプラチナの副産物としての回収です。1840年ごろにロシアの研究者によって発見されました。プラチナ鉱石に含まれるルテニウムは2%以下と言われ高い希少性を誇ります。ルテニウムは白金族の一種で、プラチナの副産物として産出される金属です。希少性が高く供給量も少ないため、主に割金として使われます。融点や沸点が高く、硬度も優れているため、工業用の素材としても優秀です。ルテニウムの主な特徴と用途は下記の通りです。
【特徴】
・硬度が高い
・融点と沸点が高い
【用途】
・装飾品の割金やメッキ(コーティング)
・工業用触媒(オスミウムとの合金)
・万年筆のペン先(オスミウムとの合金)
・パソコンのハードディスク
⑦オスミウム(Os)
オスミウムは非常に希少な貴金属です。オスミウムは酸素と反応しやすい性質があり、粉末状のオスミウムが酸素と反応することで、四酸化オスミウムという有毒な気体に変化します。金属なのに気化するという特殊な性質があるため、ジュエリー素材などには使えません。オスミウムは主に割金として使われることが一般的です。オスミウムを使用した合金は摩擦に強く、電気スイッチや万年筆のペン先などに使われます。オスミウムの主な特徴と用途は下記の通りです。
【特徴】
・比重が全金属の中で最大(22.59)
・硬度が高い
・融点が高い
・酸やアルカリに強い
【用途】
・工業用触媒(ルテニウムとの合金)
・万年筆のペン先(ルテニウムとの合金)
⑧イリジウム(Ir)
イリジウムは全ての金属の中でもっとも腐食に強い性質を持ちます。ロジウムと並んで「王水」で溶かせない金属のひとつです。また硬度も非常に高く、プラチナにイリジウムを混ぜ合わせることで硬度が高く、腐食にも強い合金になるため、高い耐性が求められる「キログラム原器」や「メートル原器」の材料に使われました。「メートル原器」については1960年に定義が見直されイリジウムは役割を終えましたが、「キログラム原器」については1889年に定義されてから130年以上の間、質量の基準として使用されています。イリジウムの主な特徴と用途は下記の通りです。
【特徴】
・比重がオスミウムに次いで大きい(22.56)
・硬度が高い
・腐食に強い
【用途】
・工業用のるつぼ
・装飾品の割金
・万年筆のペン先(オスミウムとの合金)
・非破壊検査の線源
時計は貴金属になる?
日常生活では、金や銀といった金属そのものだけではなく、身につけるジュエリーや時計などを含めて「貴金属」と呼ぶことがあります。中には、「貴金属とは高級なジュエリーや時計のこと」と思っている人もいるのではないでしょうか。これまでに述べたとおり、貴金属は金属の材質によって分類された呼び方であり、製品のジャンルではありません。しかし、貴金属が多く使われている時計は貴金属と表現しても差し支えないでしょう。たとえばバンド部分などにふんだんに18Kが使われているような、価格が数十万から数百万円の高級時計は、立派な貴金属だといえます。
銅などの「卑金属」は貴金属になる?
貴金属の反対語は卑金属です。「洗練されていない」などの意味を持つ「卑しい」という字が使われているため、言葉からマイナスのイメージを持つ人もいるでしょう。しかし卑金属は、貴金属よりもイオン化しやすい(変質しやすい)金属という意味であり、価値や使い道がないというわけではありません。たとえば産出量の多い銅は、一般的には貴金属には含まれないものの、10円硬貨や電子部品に広く使われている重要な金属です。こういった用途で銅が使われるのは、耐食性にすぐれているためであり、この点を見れば貴金属の条件を満たしているといえます。
実際に、金属加工などの産業の世界では、銅が貴金属の一種として扱われることもあります。その一方貿易業では、関税に影響するため銅は卑金属として明確に分類されています。つまり銅は、時と場合によって貴金属として扱われることもあれば、卑金属として扱われることもある、というわけです。
貴金属の買取について
貴金属は、産出量が少なく希少なものほど高価です。そのため、イリジウムやルテニウムは、グラムあたりの価値は金やプラチナより高価です。しかし、希少すぎるために一般的には手に入りにくいというデメリットがあります。貴金属の買取でよく取引されているのが、金、銀、プラチナ、パラジウムです。これら4種の貴金属は世界の取引所に上場されているため、取引量も多いです。投資として売買する人も多く、流動性が高い素材といえるでしょう。貴金属の相場は日々変動しているため、買取はタイミングが重要です。例えば、金は世界情勢が不安になると、相場が上昇しやすいといわれています。
まとめ
今回は貴金属という言葉の意味や、それぞれの特徴や用途をご紹介しました。使わなくなったジュエリーや金歯など、ご自宅に眠っている貴金属は買取に出すのがおすすめです。貴金属は素材自体に価値があるため、古いものや壊れたものでも、一定の査定価格がつきます。指輪やネックレスなどに価値の高い貴金属がどれだけ使われているかを見分けるのは、かなり困難です。
こういったものはメッキがほどこされた製品も広く流通していますので、見た目だけではなかなか判断できないことが多いです。そんな時は「買取大吉」のような買取業者に査定に出すのも良い方法のひとつです。「買取大吉」では査定料やキャンセル料は無料ですので、お気軽にお問合せください。