目次
金の売却益は「譲渡所得」で課税されるのが一般的
個人が金を売却して得た利益は、通常「譲渡所得」の課税対象です。譲渡所得とは、資産の譲渡によって生じる所得のことを指し、金の売却益もこれに該当します。
ただし、状況によっては異なる課税方法が適用されるため注意が必要です。
例外で「雑所得」で課税される場合がある
金の売却益が「雑所得」として扱われるケースもあります。これは、個人が営利目的で継続的に金を売買し、利益を得ている場合に該当します。
例えば、金の価格変動を利用して短期的な売買を繰り返し、利益を上げている場合などが考えられます。雑所得は、他の所得と合算して総合課税の対象となるため、場合によっては税負担が増えます。
そのため、金の売買頻度や目的によっては、税務上の取り扱いが変わることを認識しておきましょう。
例外で「事業所得」で課税される場合がある
金の売却を事業として行っている場合、その利益は「事業所得」として課税されます。事業所得に該当するかどうかは、取引の規模や頻度、継続性などを総合的に判断して決定されます。
例えば、金の売買を専門に行う個人事業主や、金の取引を主な収入源としている場合などが該当する可能性があります。また、事業所得として課税される場合は経費の控除や青色申告が可能です。
一方で、所得税に加えて住民税や事業税の対象にもなる可能性があるため、税務上の影響は慎重に検討しましょう。
金の売却で税金がかからない方法は?
金の売却で完全に税金を回避することは難しいですが、一定の条件下では課税を抑えられます。ここでは、税金がかからないケースと課税を最小限に抑える方法を紹介します。
金の売却益が50万円以下の場合は確定申告不要
金の売却益が年間50万円以下の場合、特別控除の適用により課税対象額がゼロとなるため、確定申告は不要です。
例えば、100万円で購入した金を140万円で売却した場合、売却益は40万円となり、50万円の特別控除の範囲内に収まります。このような場合は税金を支払う必要はありません。
ただし、複数回の売却がある場合は、年間の合計額が50万円を超えないよう注意が必要です。
給与2,000万円以下で売却益が20万円以下の場合も確定申告不要
給与収入が約2,000万円以下の会社員や公務員の場合、金の売却益が約20万円以下であれば確定申告は不要です。この規定は、納税者の利便性を考慮して設けられたものです。
例えば、年収1,500万円の会社員が、50万円で購入した金を65万円で売却した場合、売却益は15万円なので必要ありません。
ただし、確定申告が必要で申告を怠ると追徴課税のペナルティが課せられます。申告漏れとみなされた場合は納めるはずだった税額の約5%~25%ほどの追納が必要です。
金の相続・贈与でかかる税金
相続や贈与で金を受け取った場合でも税金が発生する可能性があります。実際に税金はいくらほどかかるのか、それぞれのケースについて見ていきましょう。
金の相続でかかる税金
金を相続した場合は「相続税」の対象です。相続税は被相続人が死亡した際の時価評価額に基づいて計算されます。
例えば、被相続人が所有していた金地金1キログラムの相続時による評価額が500万円であれば、その金額が相続税の課税対象です。相続税の計算には、基礎控除額や各種控除が適用されるため、実際に支払う税額は評価額全額ではありません。
しかし、相続財産全体の評価額に応じて税率が決まるため、事前に専門家に相談することが重要です。
金の贈与でかかる税金
金を贈与された場合は「贈与税」の対象で、課税基準は年間約110万円を超える贈与です。
例えば、親から金地金を贈与された場合、その評価額が200万円であれば、110万円を超える部分に対して贈与税が課されます。贈与税の税率は累進課税方式であり、贈与額が大きくなるほど税率も高くなります。
贈与税を回避するためには、年間の贈与額を110万円以下に抑えるか、複数年に分けた贈与などで対策しましょう。
金の売却でかかる税金の節税対策
金の売却に伴う税金を最小限に抑えるためには、いくつかの節税対策を講じることが重要です。以下に、具体的な節税対策を紹介します。
金購入時の計算書を保管しておく
金を購入した際の計算書や領収書の保管は節税の基本です。これらの書類は、金の取得価格を証明するために必要です。
取得価格が不明な場合、税務署は売却価格の5%を取得価格とみなすため、実際の取得価格が高い場合には不利になります。
例えば、100万円で購入した金を150万円で売却した場合、取得価格を証明できれば売却益は50万円ですが、証明できない場合は142.5万円(150万円の95%)が売却益とされ、税負担が増える可能性があります。
金を所有してから5年後以降に売却する
金を所有して5年以上経過していると長期譲渡所得として扱われ、課税対象額は半分です。
例えば、100万円で購入した金を150万円で売却した場合、5年未満の所有期間では50万円が課税対象になり、5年以上所有していれば25万円が課税対象です。
保有期間によって税負担は大幅に軽減されるので、税制面では中期的な保有がお得でしょう。
何回かに分けて売却する
金の売却益が大きい場合は、複数回に分けて売却すると累進課税を抑えられます。
例えば、年間の売却益が100万円の場合、50万円ずつ2年間に分けて売却すると、各年の課税対象額を抑えられます。これにより、総合課税の税率が低くなります。
複数回で売却する際は価格変動のリスクを考えましょう。金の市場価格は日々変動するので、売却のタイミングによって価格が下がるので、一度で売却するより利益が少なくなるかもしれません。
相続財産を相続税の申告期限より3年以内に売却する
相続財産を相続税の申告期限(相続開始から10カ月)より3年以内に売却することで、相続税の負担を軽減できます。
例えば、相続財産として受け取った金を3年以内に売却し、その売却益を相続税の納税資金に充てることで、相続税の負担を軽減できます。この方法は、相続税の納税資金を確保するためにも有効です。
ただ、相続財産の早急な売却には心理的な負担も伴います。特に、相続した金が故人の思い出を持つ場合、心理的に売却しづらいかもしれません。
金の売却で税金以外に注意するべきポイント
金の売却に際しては、税金以外にも注意すべきポイントがあります。以下に、具体的な注意点を紹介します。特に売却のタイミングと買取店の選び方は重要で、場合によって買取金額が減ってしまうので注意しましょう。
売却前に買取相場を把握しておく
金を売却する際には事前に買取相場を把握しましょう。金は1グラムあたりの買取価格相場が決まっており、日々変動する価格から売却のタイミングを見極めなければいけません。
例えば、金の価格が高騰している時期に売却することで、より高い売却益を得られます。世界情勢や経済状況の変化、テロや戦争などの問題で相場は変動しており、リスクヘッジとして金を購入するのです。
売る際には正確な価格を知るために、インターネットや買取業者の情報を確認しましょう。
買取手数料も確認する
金の売却時には、買取手数料が発生する場合があります。買取手数料は買取業者によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
例えば、買取手数料は買取金額の約10~30%の手数料を設定しています。1グラムの買取価格相場9,260円で50グラムを売却する場合、買取総額が463,000円で手数料10%なら46,300円です。しかし、30%かかると138,900円で92,600円ほど差額が生じます。
複数の業者を比較して手数料が低い業者を選ぶことで売却益を最大化しましょう。
売却のタイミングを見極める
金の売却タイミングを見極めることも重要です。金の価格は市場の動向や経済状況によって変動するので、最適なタイミングによる売却で高い売却益を得られます。
例えば、ドルや日本円が下落した際に金の価格は高騰する傾向があるので、タイミングを見極めれば売却益を最大化できます。
数年間や数カ月単位での動向を注視して、適切なタイミングでの売却が重要です。
必要な書類を確認する
金の売却時は事前に必要書類を確認しましょう。
例えば、金の購入時の計算書や領収書、運転免許証かマイナンバーカードなど身分証明書が必要となる場合があります。
これらの書類を事前に準備しておくことで、スムーズに売却手続きを進められます。
特に、高額な金の売却時には書類に不備がないよう注意しましょう。
信頼できる買取店に売却する
金の売却時は信頼できる買取店を選びましょう。信頼できる買取店を選ぶことで、公正な価格で売却できます。
例えば、金の買取参考価格や鑑定士のスキルが高い、査定方法の説明が丁寧で顧客からの評価が高いなど、評価の高い買取店を選ぶと良いでしょう。
また、金の専門鑑定士が在籍している買取店を選ぶことで、正確な査定を受けられます。
信頼できる金買取店の選び方
金の売却を成功させるためには、信頼できる買取店を選ぶことが重要です。実際の買取金額はお店によって異なり、金の買取価格相場がそのまま買取金額として貰えるわけではありません。ここでは、信頼できる買取店の選び方を紹介します。
買取参考価格が豊富で公開している店を選ぶ
買取参考価格が豊富で実績を公開している買取店を選びましょう。買取参考価格が豊富な店は多くの顧客から信頼されている証拠です。
例えば、ホームページや店舗で買取参考価格を公開している店を選ぶと良いでしょう。実店舗があり、10年以上の運営実績があるなど確認できれば安心して売却できます。
金の専門鑑定士のいる店を選ぶ
金の専門鑑定士が在籍している買取店を選ぶことで、正確な査定を受けられます。専門鑑定士の強みは、金の価値を正確に評価する知識と経験です。
例えば、専門鑑定士が在籍している買取店を選ぶことで、公正な価格で売却できます。
買取査定を無料で行っている店を選ぶ
買取査定が無料の場合は査定費用を節約できます。
例えば、複数の買取店で無料査定を受け、最も高い価格を提示した店で売却するのが得策です。
鑑定士の実績もあるので一概に無料査定が良いとは言えませんが、一つの判断基準として、考えておきましょう。
サポートやサービス面がしっかりしている店を選ぶ
サポートやサービス面がしっかりしている買取店を選ぶことで、安心して売却手続きを進められます。
例えば、売却手続きの説明が丁寧で、顧客対応が良い店を選ぶと良いでしょう。持ち込んだ金の取り扱い方が雑だったり、査定方法の説明があいまいだったりする場合は、誠実な買取専門店とは言えません。
事前に調べて判断が難しい場合は、来店前に電話で疑問点を尋ねて、丁寧さや対応力を確認してみましょう。
売却時の書類を作成してくれる店を選ぶ
売却時の書類を作成してくれる買取店を選ぶことで、手続きがスムーズに進みます。
例えば、売却契約書や領収書などの書類を作成してくれる店を選ぶと良いでしょう。書類の作成をサポートしてくれる店を選ぶことで、安心して売却手続きを進められます。
売却契約書や領収書を受け取った際は、実際の売却内容に間違いがないか確認しましょう。
まとめ
金の売却に伴う税金の問題は、適切な知識と対策を持つことで、負担を最小限に抑えられます。譲渡所得や雑所得、事業所得の違いや特別控除の適用条件を理解し、適切な節税対策を講じることが重要です。信頼できる買取店を選び、適切なタイミングで売却することで、最大の利益を得られるでしょう。