円高と円安
円高とは、円と円の他の通貨に対する相対的価値、言い換えると、円1単位で交換できる他通貨の単位数が相対的に多い状態のことです。逆に、円安とは、円の他通貨に対する相対的価値(円1単位で交換できる他通貨の単位数)が相対的に少ない状態のことです。
◆まず円高のメリットとデメリットについてです。
円の価値が上がり、他通貨が安くなった円高状態は輸入でメリットがあります。円高の時は日本に流通する輸入品や国外からの原材料が安くなるため、物価が下がる傾向があります。また、円高のほうが他通貨を多く換金できるため、円高の時期には海外旅行を安く済ませることができます。
一方デメリットですが、円高になって輸出品が値上がりすると、海外で日本の商品が売れなくなってしまう事態が起こります。輸出品の市場占有率低下による国際競争力の減少は、日本の景気に関わります。海外からの観光客が減ることも円高のデメリットのひとつです。
金の相場と円高の関係性
日本の金の相場に大きく影響するのは、ドルと円のレートです。
日本では「金1gあたり何円」で金の取引が行われます。グラムあたりの金額の算出方法は複雑です。
国際的な金の取引単位は「トロイオンス」という単位です。1トロイオンスは約31.1035gです。1トロイオンスあたりの価格は米ドルで表されることになっており、金を日本で売買するときはその際の為替レートによって、ドルを日本円に換算してからグラムあたりの値段を割り出します。そのため、円高でドルの価値が下がると金の値段は安くなるのです。
そのため日本国内で金を買うには、円高は買い時です。
反対に、日本で金を売りたい方は円安の時に利益を出しやすくなります。
ただ、金相場は為替のみならず各国の政治・経済状況や金利動向など複雑な条件で変わるため、そこは気を付けねばなりません。
例えば、円高ドル安のときは米ドルを手放してほかの通貨や資本へ投資する方が増えます。それに伴い、安くなった金の需要も高まります。そうなると金の価格が上昇するため、結果的に金相場が高くなる可能性があるのです。
金の投資について
◆金の地金の売買
金地金はインゴットとも呼ばれる金ののべ棒です。金地金は1gから販売されていますが500g以下のインゴット売買は手数料が加算されます。手数料のことを考えると500g以上の金地金を一度に購入したほうが良いのですが、その量の金を購入するとなると数百万円の出費になります。
元手があまりない方のために「純金積立」という小口の投資もあります。
◆純金積立
「純金積立」は、毎月少しずつ積み立てて、金を購入していく投資方法です。積み立て方は2種類あり、いずれも貴金属メーカー、地金商、証券会社や銀行などで購入できます。
・定額積立:毎月積み立てる金額を決めて購入する方法で、一般的に1,000円単位から積み立てることができます。ドルコスト平均法で購入するため、長期にわたって投資を続けると平均買付価格を平準化することができます。
・定量積立:毎月購入する金のグラム数を決める方法です。そのときの金価格によって積み立てる金額が変動します。
どちらもボーナス月などには、臨時で買い増しもできます。積み立てた金額は現金で引き出すか、受取手数料がかかりますが「金」現物での引き出し、またはジュエリーなどへ等価交換もできます。少額から投資ができて、紛失や盗難リスクがない点は投資信託と同じです。ただし買付時手数料が都度かかるので、取引を始める前に確認しましょう。
◆金貨の売買
金貨は他の呼称としては「地金型金貨」と言い、宝飾店や貴金属店で購入できます。金貨の特徴としては発行元、国、年によってさまざまなデザインが施されているため、金地金の小売価格よりも割高です。有名なものでカナダ王室造幣局発行の「メイプルリーフ金貨」があります。メイプルリーフ金貨のデザインが広く知られるのは、その信頼性の高さに由来します。純度99.99%のメイプルリーフ金貨は、国際的な信頼と評価が高く、カナダの国旗にも描かれているカエデの葉がレリーフされた気品あるデザインが特徴です。サイズは、1オンス、1/2オンス、1/4オンス、1/10オンスの4種類です。
もう一つ有名なところで言うと、ウィーン金貨があります。800余年の伝統を持つオーストリア造幣局発行、オーストリア政府が品質を保証する法定通貨です。純度は、99.99%。表面には、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会場の「楽友協会:黄金の間のパイプオルガン」、裏にはウィーンホルン、ハープ、ビオラ、バイオリン、ファゴットなどの管弦楽器をレリーフ。資産保全としてはもちろん、その美しさからも人気です。サイズは1オンス、1/2オンス、1/4オンス、1/10オンスの4種類です。
金地金も金貨も保管場所を設け、防犯に気を配る必要があります。保管料を払って管理会社に保護預かりをしてもらうサービスもあるようです。
◆金の先物取引
「先物取引」は、商品を将来の決められた日(期日)に、決められた価格で売買することを約束する取引です。証券会社や商品先物業者が取り扱っています。商品は金や原油のような資源や、大豆やトウモロコシといった農作物などさまざまですが、いずれも常に市場価格は変動しています。例えば、金先物の買いをした場合、最初に約束していた金価格が、期日時点の価格よりも低ければ、安い価格で金を購入して高い価格となっている時価で売却でき差額が利益になります(差金決済と言います)。一方で、反対のことが起これば損をしてしまうというものです。
先物取引は買い手、売り手どちらからも取引を始めることができます。金の現物購入と比べると少ない資金でレバレッジをかけた大きな取引ができるため短期間で多くの利益を得るチャンスがある一方、大きな損失を被ることもあるので、ハイリスクハイリターンです。リスクを理解したうえで取引しましょう。
金の売買方法について
金の現物を買うには、店舗での購入かネットでの購入があります。金を取り扱っているのは貴金属店や宝石商、銀行、鉱山会社、商社などです。ブランド力のある地金商から購入すると割高になる場合がありますが、ブランドものの金地金にプレミアがつくことを見越して購入する人もいるようです。
金は現物を購入した店で売ることができる他、お近くの中古品買取店でも売却可能です。金の価格は相場に加え、買取店によっても差が出るので、売却先は慎重に選んだほうが良いでしょう。
まとめ
今後の見通しとしては長期的にはアメリカの財政・金融政策に左右されることとなりそうです。アメリカでは国債10年債利回りが多少上昇の兆しを見せていることで、物価の上昇が示唆されています。この状況を受けて米国で早期利上げやテーパリングがあれば、ドル円は上昇(円安)に、逆に米経済がまた一段と落ち込んだ場合や日本の景気回復が追いつく場合は円高に進む可能性もあるといった状況です。現在、銀行・証券各社の予想では円安ドル高水準で米ドル円が動いていく見通しなので、これらを参考にして投資方針を立ててみてください。