世界のナゲット
これまでに発見されているナゲットクラスにはどのようなものがあるのでしょうか。世界を見渡せば、日本とは大違いのサイズの大砂金塊が発見されています。ただし、その多くは溶かされ、現物を見ることはできません。
最も有名な大砂金塊は、1869年にオーストラリアで見つかった「Welcome Stranger」(78キロ)です。
「発見について次のような話が伝わっている。ゴールドラッシュのとき、砂金堀り二人が馬車で砂金地へ向かう途中、車の片輪が路からはずれた。車輪を出すため土を掘って偶然に大金塊を発見した。人に知られると危険が大きいので二人はその上にテントを張り、人の通らないときに数日がかりで堀り上げ、テントに包み町へ帰ってきたという。」
このウェルカムストレンジャーは、木の下わずか3センチほどのところから見つかっています。なんて運の良い話なのでしょう。この他にも、オーストラリアでは69キロの「Welcome Nugget」、ブラジルでは60.8キロの「カナンナゲット」(現存)などが発見されています。
◆日本最大のナゲット
日本における判明している最大の砂金塊は、明治三十三年九月に枝幸ウソタン川の支流ナイ川で採掘されたもので205匁(769グラム)です。現存する日本最大の砂金塊は、ウソタン川産の248グラムであり、海外のようなキロ単位といきませんが、日本でもまだまだ大砂金塊が見つかる余地はあると考えます。なお、本格的な採掘の場合、法律に基づき試掘権の設定願いを申請しなければなりません。あくまで趣味の砂金採りは個人レベルで楽しむものであるため大目に見られている部分がありますが、本格的な採掘となると必要な法的手続きが必要となりますのでご注意ください。
北見枝幸では、過去に1125gもの大きな金塊が見つかったといわれています。しかし発見者が4人いたため、内緒で等分。換金しようとしたのですが、結局バレてしまったというエピソードも残っています。
砂金で稼ぐことは可能?
天然に存在する砂金には銀などの不純物が多く含まれているため、産地にもよりますが、金の純度は決して高くないのが普通です。純度の低い砂金を純金にするには精錬の工程が必要で、素人の手に負えるものではありません。
金の価格が世界的に高騰しているとは言え、川で採取してきた砂金を売ろうとしても1~2ミリ程度の小さな粒ではせいぜい数十円程度です。1g以上のナゲットクラスなら1万円以上の高値も期待できますが、そう簡単に見つかるものではありません。
砂金を普通に換金したのでは、時給換算で決して儲かるとは言えないのが現状です。最低賃金を大きく下回るのが当たり前で、普通にアルバイトの仕事をした方がよほど稼げます。事業としては採算が合わないからこそ企業が川での砂金採りにほとんど手をつけず、事実上放置されているとも言えるわけです。
砂金の価値は純金以上?
以上の計算は金を普通に買取した場合の話で、天然の川で採取した砂金には鉱物標本としての価値があります。金貨や地金などと違って自然に存在する砂金は形や色などが1粒1粒異なり、1つとして同じものはありません。
川で採れる砂金は不純物が多く含まれるからこそ独特の風合いが生まれ、小さな粒でもルーペで拡大して眺めることで1粒1粒違った個性を楽しめます。熱心に収集しているマニアも世界に多く存在するため、希少価値のある砂金はそういう人たちに高値で購入してもらえる可能性が大です。
そういう意味で言うと砂金の価値は相場で買取価格が決まる純金よりも、美術品などのコレクターズアイテムに近いと言えます。希少価値を重視する収集マニアにアピールするには、どの川で採れた砂金なのか産地を証明するラベルを付ける作業も欠かせません。
かつてゴールドラッシュで賑わった北海道の川や武田信玄の隠し金山が存在した場所など、歴史的なプレミアがついた砂金ほど高値で売れる可能性があります。1グラムあたりいくらという形で取引される地金より砂金が高値で取引されるのは、「一点物」としての価値を認められた場合の話です。
国内で砂金採りを楽しめるところ
初心者が自然の川でいきなり砂金採りを試みてもなかなかうまくいかないのが普通です。まずは砂金採り体験に参加し、パンニングの練習をして要領を覚えてから川での砂金採りにチャレンジした方が成功の確率が上がります。
屋内の施設で砂金採り体験ができるスポットは、初心者が腕を磨くのに最適な場所です。自然の川で採取するのと違って天候の影響を受けない上に水の事故の危険がないため、親子でも安心して参加できます。
施設内には天然の砂金スポットを再現した水槽が設置されてあり、水が張られた水槽の中に砂金の含まれた砂が紛れ込んでいるという仕掛けです。水槽の上から見ても見えない砂金を採取するために、前述のパンニング皿を使用します。
砂金採り体験をするには料金も必要ですが、自分で採取した砂金は持ち帰ることが可能です。テントを含めた屋内で砂金採り体験ができるスポットには、以下のような施設があります。
・北海道ウソタンナイ砂金採掘公園の水槽掘り体験場
・宮城県涌谷町の天平ろまん館
・秋田県鹿角市の尾去沢鉱山跡
・山梨県身延町甲斐黄金村・湯之奥金山博物館の砂金採り体験室
・新潟県佐渡市の佐渡西三川ゴールドパーク
・静岡県土肥金山の砂金館
砂金採り体験の料金は大人が700円前後で、小学生以下や中学生以下の小人料金が設定されている施設もあります。こうした体験施設を利用すれば初心者でも1回の砂金採り体験で平均5粒程度、中級者から上級者になると10粒以上採取することも可能です。
砂金を売る目的でこうした体験施設を利用する場合は、よほど大量に採取しない限り赤字になってしまいます。砂金採りで収入を得ようと思えば、料金を払わずに済む自然の川で探すのが常套手段です。
まとめ
体験施設や自然の川で砂金を採取しても、普通に買取してもらったのでは期待したほど稼げないのが普通です。費やした労力に見合わない収入しか得られないとすれば、副業の手段としては成り立たなくなってしまいます。
それでも砂金採りは自然を楽しみながら一攫千金の夢が見られるという点が、他の副業にない魅力です。フリマアプリやネットオークションなどをうまく利用すれば、思わぬ高値で砂金を購入してくれる人が現れる可能性もあります。天然の砂金には一点物の希少価値があるだけに、熱心なコレクターも少なくありません。砂金採りで収入を得ようと思えば、場所選びや保管方法もそうしたコレクターを意識する必要があります。
まずは砂金採り体験から始めてパンニングの基本をマスターし、慣れてきたところで自分なりの穴場スポットを探してみるといいでしょう。日本全国には無数と言っていいほどの川がありますので、砂金がまだ採り尽くされていない場所がまだまだ眠っているはずです。