目次
プラチナを表記する「Pt」とは?
「Pt」はプラチナの元素記号です。かつては「Pm」と表記されていた時期もありましたが、他の金属の元素記号となったため、現在は「Pt」を使用しています。
プラチナ製品には「Pt」という刻印が施されており、ジュエリーショップや貴金属業者の間では、この刻印が素材の真贋を判断する基準の1つとなっています。
プラチナの特徴
プラチナは、落ち着きのある白銀色の美しい輝きを持つのが特徴です。日常的な結婚指輪として選ばれることが多いですが、国内では人気が高い一方、海外ではそれほどではありません。
柔らかい性質を持つプラチナは、金や銀と比べて加工が難しいです。特に、純度100%になると、宝飾品など細かな加工には向いていません。
通常、ジュエリーに用いられるプラチナは、パラジウム、ルテニウム、銅、イリジウムなど、割金が混ぜられ、強度を高めています。これにより、傷や変形に強く、宝石をはめ込む加工も容易になります。
プラチナのジュエリーはシックな銀白色が魅力ですが、純粋なプラチナはやや黒みを帯びています。割金を加えることで、清楚で輝く銀白色が生まれます。
ハードプラチナとは
ハードプラチナとは、プラチナ以外の金属を配合して硬度を高めたものです。ジュエリーメーカーによっても配合する金属の比率も異なり、「スーパーハードプラチナ」などと呼ばれるものも販売されています。
加工が困難なため、取扱い業者も少なく、デザインも制限されることや加工にかかるコストも高額になることもあります。また、将来的に指輪が抜けなくなった際に、対応できる業者を探すのに苦労することはあるかもしれません。
プラチナの純度の違い
日本の造幣局で品位証明されているプラチナは、「Pt999」「Pt950」「Pt900」「Pt850」の4種類の純度になります。その他に、「Pt750」「Pt650・585・505」など純度の低いプラチナも市場に流通しています。こちらでは、プラチナの純度の違いについてご紹介します。
Pt999
Pt999とは、純プラチナのことです。千分率表記であれば、本来「プラチナ1000」や「Pt1000」となりますが、理論上100%純粋な金属を作ることはできません。プラチナの場合、現代科学では99.9%以上が限界とされています。
そのため、近年では純度表記もより正確に「Pt999」とすることが一般的になっています。
また、これはジュエリーよりも投資用のインゴットやコイン、工業用としての需要が高いです。プラチナ合金よりも傷がつきやすく、鈍い輝きを持つのも特徴の1つです。
純プラチナと金の違い
プラチナは金と同様に希少価値の高い貴金属ですが、その用途において大きく異なります。金は古くから通貨として使用され、世界的な資産価値が確立されています。
一方、プラチナは産出量の約6割が工業用途に依存しており、景気の影響を受けやすい特性があります。
投資対象としての金は、不安定な世界情勢での避難先としての価値が高まりますが、プラチナは工業需要の変動によって価格が左右される傾向があります。また、南アフリカとロシアが世界のプラチナ産出の9割を占めるという地理的偏りも金とは異なる特徴です。
純プラチナは各産業で重宝される
純プラチナは各産業で重宝される「レアメタル」の1つであり、特に自動車産業で需要が高いです。ディーゼルエンジンなどの排ガスを浄化する触媒として広く利用されています。また、近年では医療業界でもプラチナが大きな注目を集めています。
カテーテル治療は身体に負担の少ない手術法として技術が進化しており、X線を通しにくい純プラチナがカテーテルの先端や治療器具の位置をミリ単位で把握するのに非常に有用とされています。
Pt950
Pt950は、プラチナ含有量が95%で、他の金属が5%配合された合金です。純プラチナよりも硬く輝きがあり、ジュエリーとしての加工に適しています。純度が高いため資産価値も高く、アレルギーのリスクも比較的低いです。
ただし、完全にアレルギーを避けられるわけではなく、柔らかいため傷が付きやすいというデメリットもあります。
国際基準でPt950以上がプラチナと認められ、海外ブランドで主流ですが、日本ではメジャーではないため修理には注意が必要です。
Pt900
Pt900は純度90%のプラチナで、十分な硬さと手頃な価格のため、日本ではよく取り扱われています。修繕やサイズ直しに対応できる工房が多いのもメリットです。Pt950よりも割金が多く、強度が高く変形しにくいです。
ただし、金属アレルギーのリスクがあり、割金として使われるパラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)がアレルゲンとなることがあります。変色の心配は少なく、長期間使用に適しています。
結婚指輪にはPt900が人気
結婚指輪において、Pt950やPt900が人気ですが、特に日本ではPt900が主流です。Pt900は加工しやすく、純度のバランスが良い素材です。この特徴から、ジュエリーとしての耐久性や輝きを求める人々に好まれています。
一方、肌が敏感で金属アレルギーが心配な方は、Pt900よりも純度の高いPt950を選ぶとよいでしょう。
Pt850
Pt850は、プラチナが15%で割金と配合されており、硬度が高く加工しやすい素材です。Pt900より純度が低いため、価格も安価になります。ISO(国際標準化機構)や社団法人日本ジュエリー協会などの規格では、Pt850までがプラチナとして認められています。
また、プラチナのネックレス製品では、ペンダントトップにPt900を使用し、チェーン部分はPt850で作ることが一般的です。
ただし、割金の配合が増えているため、アレルギーのリスクはPt900よりも高くなります。Pt850が使われた商品を購入する際は、事前に確認しておくと良いでしょう。
Pt750
Pt750は、プラチナが75%含まれ、25%が割金で構成された素材です。この純度は金でいう18金に相当し、強度に優れています。しかし、日本では「プラチナ」として認められるのは純度が85%以上のものだけになります。
そのため、Pt750は厳密にはプラチナ製品として扱われません。また、Pt750は日本の規格である4つの品位区分に該当しないため、造幣局の品位証明を受けることができない点にも注意が必要です。
Pt650・585・505
Pt750よりも、純度の低いプラチナがあります。それは、純度が65%の「Pt650」、58.5%の「Pt585」、そして50.5%の「Pt505」です。以下でそれぞれの純度について解説します。
・Pt650
マイナーなプラチナのため、あまりジュエリーとして利用されておらず、立て爪などのパーツで使われていることがあります。
・Pt585
リーズナブルな素材として注目されつつあり、価格の安さがメリットです。しかし、プラチナジュエリー表記はありません。
・Pt505
京セラが開発したオリジナルの素材で「ファーストプラチナ」がこの純度です。非常にリーズナブルな価格で購入できるメリットがある反面、資産価値は低いです。
プラチナの純度の用途や基準の違い
プラチナ製品には通常、その純度が刻印されています。そして、純度によっても用途や基準が異なるのが特徴です。こちらでは、プラチナの純度による用途の違いと基準の違いについてご紹介します。
用途の違い
プラチナ製品は純度によって用途が異なります。まず、日本国内で一般的なPt900は、アクセサリーやジュエリーとして使用されることが多いです。特にパラジウム入りのPt900は需要が高く、Pt950よりも高値で取引されることもあります。
一方、Pt999など高純度のプラチナは、コインやインゴットなど投資用の他、酸化や変色に強い特徴を持つことからも、工業用途で幅広く使用されています。例えば、排気ガス浄化装置や医療機器、半導体、化学反応の促進剤、石油精製などが挙げられます。
基準の違い
プラチナジュエリーには「国際基準」と「国内基準」があり、それぞれ異なる基準が設けられています。
まず、国際基準でプラチナジュエリーとして認められるのは、Pt950以上です。実際、海外の高級ブランドのプラチナジュエリーでは、Pt950が多く使用されています。
一方、国内業界の基準でジュエリーとして認められるのは、Pt900です。Pt900は強度、加工のしやすさ、輝きのバランスに優れているため、さまざまなジュエリーに広く使用されています。
目的別おすすめのプラチナの純度
プラチナは目的によっても、おすすめの純度が異なります。例えば、プラチナ製品を購入するうえで、コストを抑えたいのか、高品質のものを手にしたいのかさまざまでしょう。こちらでは、目的別におすすめのプラチナの純度をご紹介します。
コストを抑えれるのはPt850
Pt850は、加工がしやすく、コストを抑えられるため、アクセサリーのチェーンやパーツとして広く利用されています。純度が高いプラチナに比べてお手頃な価格でありながら、耐久性や美しさを兼ね備えているため、ジュエリー業界で重宝されています。
十分な硬度があり傷つきにくいものはPt900
Pt900は、割り金の量が多く、十分な硬度があり、傷がつきにくい特性があります。特に、タングステンなどの非常に硬い金属を割り金に使用することで、さらに耐久性を高めることもできます。
一方で、純粋なプラチナであるPt999は比較的軟らかいため、傷がつきやすいという特性があります。この点を考慮すると、Pt900は日常的な使用においても優れた耐久性を持ち、長期間美しさを保つことができます。
修理しやすいものはPt900
Pt900は修理がしやすいプラチナです。多くのジュエリーショップや専門の工房が取り扱っており、修理やメンテナンスに対応しています。修理を考えている場合は、まずは購入した店舗に相談してみましょう。
一方、Pt999は非常に柔らかく、傷がつきやすいため、修理が難しい場合があります。また、ハードプラチナは硬すぎて加工が難しく、修理に高度な技術が要求されるため、修理可能な工房が限られます。
金属アレルギーが起きにくいのはPt950・Pt999
Pt950とPt999のプラチナは金属アレルギーのリスクが低い素材です。これらの高純度プラチナは皮膚への刺激が少なく、アレルギー反応が起こりにくい特性があります。
一方、プラチナジュエリーでアレルギーが発生する原因は通常、割り金にあります。
例えば、銅やパラジウム、コバルト、インジウムなどが使用されている場合、アレルギーのリスクが高まりますので、購入前に成分を確認することが重要です。また、「パッチテスト」で自分の肌に合う金属かどうかを事前に確認することができます。
プラチナの買取価格相場
年月 | 最高価格 | 最低価格 |
---|---|---|
2024年7月 | 5,730円 | 5,528円 |
2024年6月 | 5,715円 | 5,218円 |
2024年5月 | 5,877円 | 5,142円 |
2024年4月 | 5,233円 | 4,776円 |
2024年3月 | 4,843円 | 4,605円 |
2024年2月 | 4,757円 | 4,584円 |
2024年1月 | 4,815円 | 4,594円 |
2023年12月 | 4,861円 | 4,552円 |
2023年11月 | 4,923円 | 4,521円 |
2023年10月 | 4,854円 | 4,484円 |
2023年9月 | 4,914円 | 4,603円 |
2023年8月 | 4,762円 | 4,506円 |
2023年7月 | 4,762円 | 4,506円 |
※参考元:株式会社ネットジャパン
上記の表は、2023年7月から2024年7月9日現在までの1年間の純プラチナ買取参考価格を示しています。月ごとに最高価格と最低価格をまとめています。
1年前と現在を比較すると、純プラチナの価格は約1,000円上昇しています。これは、世界経済が回復基調にあり、プラチナの需要が高まっていることを示していると考えられます。
プラチナのお手入れ方法
プラチナの指輪やネックレスを美しく保つためには、定期的なお手入れが必要です。洗面器に水と中性洗剤を混ぜ、ジュエリーを浸し、柔らかい布や歯ブラシで汚れを優しく落とします。最後に水でよくすすいで、乾いた布で水気を拭き取ります。
特にジュエリーの細部や装飾部分は汚れがたまりやすいので、丁寧に洗いましょう。
お手入れ後は、個別の小袋に保管すると他のジュエリーとぶつからず安全です。また、温泉や入浴剤には注意が必要で、純度の高いPt950以上は比較的安全ですが、他の素材が使用されている場合は事前に外しておくとよいでしょう。
まとめ
今回はプラチナの純度について解説しました。投資を目的とするのか、ジュエリーが欲しいのか、ジュエリーでも修理しやすいものが良いのか、傷がつきにくいものが良いのかなど、自分の目的に合わせてプラチナの純度を選ぶことが重要です。プラチナ製品を購入する際には、ぜひ参考にしてください。