目次
プラチナとはどんな金属?
プラチナは、重みのある落ち着いた白い色と輝きを持つ貴金属です。金と比べると年間の採掘量は、その1/20程度の「レアメタル(希少金属)」です。
採掘されたプラチナの約3割は、自動車の排ガスを浄化する触媒に、また宝飾品にも同程度の割合で利用されています。投資用はわずか数パーセント程度だといわれています。
その気品高く清らかな印象から、日本では婚約指輪の92%、結婚指輪の82%に使用されています。実は「日本での消費量は世界最大規模」で、これほどジュエリーとしてプラチナが好まれる国は他にはありません。
プラチナとホワイトゴールドの違い
プラチナは和名で「白金(はっきん)」と呼ばれるため、そのまま英訳するとホワイトゴールドとなります。そのため混同されやすいですが、プラチナはホワイトゴールドとは異なる貴金属です。
どちらもジュエリーで人気のある金属ですが、いくつかの違いがあります。プラチナは天然の白色と輝きを持ち、重みがあり耐久性が高く変色しません。
一方、ホワイトゴールドは金にパラジウムやシルバーなどの白系金属を混ぜた合金です。そのままだと黄やグレーがかっているため、より白く見せるためのロジウムコーティングが施されています。
プラチナは鉱山の中から産出される
プラチナは「南アフリカ共和国・ロシア・ジンバブエ・北米」などの鉱山から採掘されます。しかも1トンの原鉱石からわずか3グラム程度しか採れず、精錬に時間がかかります。加工も難しいため必然的に高価になります。
近年では「都市鉱山からのリサイクル」が重要視されており、日本では電子機器や基板からのプラチナ回収が行われています。「都市鉱山」とは、地上に蓄積された工業製品を資源とみなし、そこから積極的に再生する概念です。
都市鉱山の埋蔵量にはついては複数の見解がありますが、リサイクル技術の向上は、持続可能な社会貢献に繋がるのではないかと期待されています。
プラチナの特徴
プラチナから連想するのは、ジュエリーやアクセサリーなど宝飾品かもしれません。しかし、プラチナは高い耐久性があり、化学的にも安定しているため、産業的用途など多岐にわたって重要な金属です。
ではその化学的な特徴について詳しくみていきましょう。
化学的な安定性が高い
プラチナは化学的に安定した金属です。酸や塩素などの腐食性物質に対して強い耐性を持ち、錆びにくい特徴があります。変色や性質変化もしにくいため、化学反応における触媒として広く利用されています。
自動車の排ガス浄化装置や石油精製装置で重要な役割を果たし、また、プラチナの高い耐久性と美しい光沢は、宝飾品にも理想的な貴金属です。
これらの特性からプラチナは、産業から日常生活に至るまで、さまざまな分野で重宝されています。
融点が高く熱に強い
プラチナは融点が高い金属です。金属には固体が熱によって液体になる「融点」が低いものもあります。それらの融点が低い金属は、過酷な環境では溶け出すことがあります。
しかし、プラチナの融点は1,768度と非常に高いため、厳しい環境下でもその形状と機能を維持することができます。
この特性により、高温環境での用途においても、信頼性の高い素材として役立てられています。
加工がしやすい
金属の中でも柔らかいプラチナは、加工がしやすい特性を持っています。しかも化学的に安定しており、融点が高いにもかかわらず、展性や延性が高いため比較的簡単に形を変えることができます。
一部の金属は展性や延性が低いため、加工には高熱や強い力が必要ですが、プラチナはそのような条件を必要としません。この特徴から、彫金など精密な加工が求められる宝飾品や工業用途においても、プラチナは非常に適しています。
密度が重い
密度とは、「一定の体積に対する物質の重さ」のことで、「密度 = 質量 ÷ 体積」によって求められます。
プラチナの密度は「21.45 g/cm³」と、自然界に存在する元素の中で最も高い値です。そのため、プラチナ製のジュエリーやアクセサリーは、身に着けると重みを感じやすく、さらに高級感を演出する効果もあります。
参考までに、金の密度は「19.32g/㎤」で、プラチナと比べるとわずかに軽いのです。しかし、金も金属の中では密度が大きな部類に入ります。
プラチナ | ゴールド | シルバー |
---|---|---|
21.45 g/cm³ | 19.32 g/cm³ | 10.49 g/cm³ |
白く輝く
プラチナが白く輝いて見えるのは、その上品な光沢と高い反射率によるものです。プラチナの表面は滑らかなので、周囲の光を効果的に反射し、洗練された輝きを生み出します。
その他に白い輝きを放つ貴金属といえば、プラチナ・パラジウムやホワイトゴールド(金とパラジウムまたはニッケルの合金)などが挙げられます。プラチナは、その気品あるビジュアルから、アクセサリーやジュエリーに欠かせない素材とされています。
王水以外では溶けない
プラチナが王水以外では溶けない理由は、その高い安定性にあります。プラチナは多くの酸や溶液に対して不活性であり、他の金属が溶けるような化学反応が起こりにくい特性を持っています。
一方、王水は、プラチナを溶かせる唯一の溶液であり、金や銀などの貴金属も溶かします。これは、王水が強力な酸化剤であり、金属を酸化して塩化物イオンとの反応により溶解させるためです。
しかし、プラチナの結晶構造は非常に堅固で、原子同士の結合が強力です。王水を除けば通常の状況下で、プラチナが溶解や腐食することはありません。
価値が高い
プラチナの価値が高い理由は、その希少性と需要にあります。地球上のプラチナ採掘量は限られているため希少性が高く、そして、自動車用を主とした高い工業需要があります。
このような背景からプラチナは、残念ながら景気が悪くなると、価格が下がりやすい傾向にあります。実際に、リーマンショック後には自動車の売上が落ち、プラチナの価格は下がりました。
金は投資や宝飾品としての需要が高く、対照的にプラチナは希少性が高いのですが、価格は金に劣る傾向があります。これはプラチナと金が持つそれぞれの価値が、価格に大きな影響を与えているからです。
■2024年のプラチナ最高相場価格<同年6月段階>
2024年5月20日 | 買取価格(税込) | 販売価格(税抜) |
---|---|---|
プラチナ | 5,877円 | 5,487円 |
金 | 13,281円 | 12,168円 |
参考先:NET JAPAN
プラチナの純度の特徴
プラチナの原子番号は78、元素記号は「Pt」です。プラチナの純度は、「Pt + 数字」で表され、指輪などのプラチナ製品に刻印されています。この刻印からプラチナの純度や含有率を確認できます。
「Pt950」という刻印があれば、そのアイテムにはプラチナが95%含まれています。残りの5%は「割金」であり、プラチナ以外の金属が混ざっています。
国際基準では、純度がPt950以上の場合にのみ、その金属を「プラチナ」と呼ぶことができます。
純度 | 含有率 |
---|---|
Pt999 | 99.95% |
Pt950 | 95% |
Pt900 | 90% |
Pt850 | 85% |
プラチナの使用用途
プラチナは、その化学的で物理的な特性から、さまざまな場所で広く活用されています。それでは現代社会において、私たちの生活で活躍をする非常に重要なプラチナの使用方法をご紹介しましょう。
医療器具
プラチナは体内に入っても、アレルギーや拒否反応を起こしにくい性質を持つ金属です。そのため医療現場で広く利用されています。
主な用途の一つに、心臓疾患の患者さんの体内に設置するペースメーカーがあります。プラチナは人体に無害であり、電気伝導度も高いため、ペースメーカーの電極にも使用されます。
また、手術で使用するメスやピンセット、カテーテル、歯科用具などにも使われています。
触媒
プラチナは、自動車や各種工場の排気ガスを浄化する触媒として利用されています。排気ガス中の有毒物質(一酸化炭素・窒素酸化物・炭化水素など)を、無害な物質(二酸化炭素・窒素・水など)に変換する役割を果たすのです。
「触媒」とは、それ自体は変化せず、他の物質の化学反応を促進させる物質を指します。そのため、触媒には化学反応を促進する性能だけでなく、自身が変化しないことが求められます。
プラチナは、その化学的安定性と、反応を促進する機能を兼ね備えているため、触媒として最適な金属だといえるでしょう。
宇宙開発
プラチナは、その耐久性と安定性から、宇宙船や宇宙ステーションにも採用されています。宇宙は過酷な環境であり、数百度にも達する高温下での最適な動作が求められます。
特に、プラチナは融点が1,768度と非常に高いため、過酷な環境下でも形状や機能が変化せずに、使用し続けることができます。
そのためプラチナは、宇宙開発技術には欠かせない素材として、重要な役割を果たしています。
結婚・婚約指輪
婚約指輪や結婚指輪といえば、日本ではプラチナ製が圧倒的に人気です。意外かもしれませんが、日本は世界で最もプラチナジュエリーを愛用している国です。その消費、には婚約指輪や結婚指輪に用いられていることも、大きく影響しているでしょう。
また、プラチナ製の指輪が人気な理由は、その白い輝きが「純潔・純粋・純真」を連想させることにもあります。さらに変色・変質しにくい特性を持つため、「永遠」という意味も含まれているのです。
自動車
プラチナの工業用途で、主な割合を占めるのは自動車部品です。近年の排ガス規制対策により、自動車メーカーは排ガス浄化装置の開発を進めています。そのため、従来のパラジウムから、耐久性に優れたプラチナに切り替わるケースが増えています。
プラチナコーティングにより触媒効果が向上し、さらに燃料電池の電極板にも適しています。しかし、1台あたり約100gのプラチナが必要なため、コストが高くなるという課題があります。
世界的にプラチナを使用した自動車は増加しており、トヨタのプリウスやホンダのシビックなどに採用されています。
燃料電池
プラチナは燃料電池技術において重要な役割を担っています。近年では、地球温暖化の防止に向けた脱炭素社会への移行が進んでおり、そのため、燃料電池がクリーンエネルギーとして注目されています。
燃料電池では、水素と酸素から、水と電気を生成する化学反応が行われます。この反応を促進するために、プラチナが用いられています。
プラチナはその化学的安定性から、耐酸性・耐食性が求められる燃料電池の電極触媒として利用されています。
工業用品
プラチナは、私たちの生活に欠かせない、身の回りの機械製品にも利用されています。たとえば、パソコンやテレビのハードディスクなどの部品に、プラチナは採用されているのです。
ハードディスクは情報を記録するために微小な磁石を使用しますが、この磁石部分にプラチナが使われています。液晶テレビの基板などにも使用されています。
IT化やテレビの地デジ化により、今後プラチナは需要が増加すると見込まれています。
美容器具
美容の分野でもプラチナは注目され、「白金ナノコロイド」として利用されています。この白金ナノコロイドは、プラチナをナノ単位に超微細化したもので、驚異的な抗酸化作用を持ちます。
白金ナノコロイドは肌への浸透性が高く、化粧品や美容液に配合され、美容器具にも採用されています。期待される効果は、肌の弾力性やハリ、髪質の改善、アンチエイジングなどです。
また、厚生労働省の認可を受けており、安全性が確認されています。金属への抵抗を感じたとしても、安心して利用できるでしょう。
万年筆
プラチナは万年筆の装飾だけでなく、ペン先にも使用されています。創業100年を超える日本のメーカー『プラチナ萬年筆株式会社』などが有名です。
プラチナ合金を使ったペン先は、耐食性が高く、柔軟性にも優れています。しかも、滑らかな書き心地を提供し、インクの流れをスムーズにします。
また、耐久性があるため、長期間の使用にも耐え、書き味が一定に保たれます。プラチナ合金のペン先は、高品質な筆記具として、多くの人々に愛用されています。
まとめ
今回はプラチナについて解説しました。さまざまな分野で使用され、私たちの日常に密接に関わるプラチナ。きっとこれからは、プラチナをより身近な存在に感じられるのではないでしょうか。