ポータービルからパリへ
カリフォルニア州ポータービルで生まれ育ったリック・オウエンスは、ロサンゼルスのアートスクールであるOtis College of Art and Designで美術を2年間学び、その後転向してパターンを学び、服作りの地盤を固めました。
コレクションを始動
1994年に設立された彼自身の名を冠したブランドRick Owensは、すぐにアメリカで多くのフォロワーを獲得しました。リック・オウエンスのスタイルは、マダム・グレやマドレーヌ・ヴィオネなど伝説的なクチュリエールに影響を受けた、たっぷりとした布遣いのドレープや、建築的フォルム、モノトーンのカラーパレット、ヴィンテージ加工などによる独特の素材感です。リック・オウエンスはアメリカでの成功に勢いをつけ、2001年からコレクションアイテムを世界で展開するために、イタリアの代理店であるEo Bocci Associatiとビジネス契約を結びます。その後、プレタポルテ(既製服)の生産ラインはイタリアに移管されました。2002年9月米国版ヴォーグとその編集長アナ・ウィンターのバックアップを受けて、ニューヨーク ファッション ウィーク中に初のウィメンズ プレタポルテ コレクションを発表し、国際的な成功を収めます。
ブランドはすぐにメンズプレタポルテの最初のコレクションも立ち上げ、2003年春夏コレクションではメンズ・ウィメンズ両方のプレタポルテを発表しました。ニューヨークでの2回目のショーの後、リック・オウエンスはデザインスタジオをロサンゼルスからパリへ移し、コレクションもパリ・ファッションウィークで発表します。彼が2007年に最初の回顧録の出版を祝ったのもパリでした。「L'ai-Je Bien Descendu?」と題されたこの回顧録には、芸術的かつ挑発的なイメージ作品が数多く含まれています。彼はまた、2011年に「Rick Owens」、2017年に「Rick Owens Furniture」を出版しました。そして2019年9 月には4冊目の本「Legaspi: Larry Legaspi, the 70s, and the future of fashion」が出版されます。Rick Owensのスタイルは、少し挑発的で、ダーク、生きたミニマリズムがあるとよく言われますが、リック・オウエンス自身は「ルー・リードが音楽をつくるように、私は服を作りたいと思っています。つまり率直だけれどもコードの変更は最小限に抑える。そしてエレガンスは少しの野蛮さ、怠慢、そして無頓着さを伴うべきだと考えます。」と語っています。
アート的なアプローチ
リック・オウエンスは、2002年の新進気鋭のデザイナーに贈られるペリー・エリス賞、優れたファッション・デザインに贈られるクーパー・ヒューイット賞、2007年のファッション・グループ・インターナショナルからのルール・ブレーカー賞など、多くの権威あるラグジュアリー業界の賞を受賞してきました。さらに2017年には、CFDA賞を受賞しました。
2005年には「Rickowenslilies」と呼ばれる、若年層に向けて手頃な価格のセカンドラインも立ち上げました。またジーンズを中心としたライン「DRKSHDW」と、ユニークでエクスクルーシブなレザーグッズのライン「Hunrickowens」も展開します。2006年にはパリのパレ ロワイヤルに彼の最初のブティックをオープンします。そして2008年、リック・オウエンスは自身のルーツに立ち返り、ニューヨークに2番目の旗艦店をオープンします。
リック・オウエンスは、そのキャリアを通じて、ファッションだけでなくインテリア デザインにおいても、その独特の美学を展開してきました。リック・オウエンスは優れた職人と協力することで、カット、ボリューム、フォルムなど、彼の服作りと共通する美学を反映したアートピースともいえる家具のコレクションを展開します。ローマ教皇庁の儀式用チェアから着想を得た椅子や、掩蔽壕(えんぺいごう:戦闘機を守る防空壕)がインスピレーションソースとなったベンチなど、ユニークでミニマルなデザインの家具が揃います。
まとめ
ユニークな世界観でコアなファンをもつファッションブランドRick Owensは、デザイナー リック・オウエンスによるブランドです。その世界は服を超えて、ファニチャーやコンテンポラリーアートの世界でもクリエーションを展開しており、リック・オウエンスの旗艦店は空間としてその美学を表現しています。リック・オウエンスの服は、衣服のフォルムや新しい装いのアイデアを提案するとともに、古典的な既製服の構造や固定概念に風穴を空けるような挑発的な問題提起も孕んでいるといえるでしょう。