Goro's(ゴローズ)というブランド
高橋吾郎がゴローズの名のもとにクリエーションを行うまで、インディアンジュエリーは日本で知られる存在ではありませんでした。吾郎氏は日本におけるインディアンジュエリーのパイオニアであり、アーティストであり、生粋のクラフトマンでした。1960年代後半から亡くなる2013年まで、吾郎氏は独自のクラフトマンシップと、伝統的なネイティブアメリカンの技法を組み合わせて、ゴローズという独自の世界を創り上げました。彼のクリエーションはSMAPの木村拓哉氏やアーティストの藤原ヒロシ氏、ギタリストのジョン・メイヤー氏など多くの愛好家に愛されています。
ゴローズのクリエーションにおいて、数あるモチーフの中でも、鷲というモチーフは、吾郎氏自身にとって特別なものであり、その背後にあるストーリーはもはや伝説です。吾郎氏はサウスダコタ州のネイティブアメリカンの部族、ラコタ族と特に親しくなり、ラコタ族以外の人間で初めて「サンダンス」の儀式に参加します。サンダンスとはネイティブアメリカンにとって最大の儀式であり、自然復活の祈りをささげるものです。
ネイティブアメリカンは、夏から冬に至る季節の移ろいを自然の盛衰と捉えており、冬の後に大自然が再び隆盛の夏を迎えることをサンダンスで祈念するのです。このサンダンスの後、吾郎氏はラコタ族より「イエローイーグル」の名を授かります。イーグルは東の鳥であり、黄色はネイティブアメリカンの世界観を示した輪「メディスンホイール」上の東を表しています。つまりイエローイーグルとは東の国日本から来た吾郎氏への、ラコタ族からの最大の敬意を表した名前なのです。
そんな吾郎氏のモノづくりのルーツは幼少期まで遡ります。学生時代、進駐軍のアメリカ兵から革の彫り方を教わります。このアメリカ兵は母国に帰る際、吾郎氏に別れの印としていくつかの革の加工道具を贈ります。吾郎氏はそうしてレザークラフトに魅了され、皮革製品の製作に没頭します。1956年、彼は東京の駒込でベルトの販売を開始し、その後、青山に最初の店をオープンし、ベルトやバッグなどの革製品を製造しました。
その後、吾郎氏は一層腕を磨くため、アメリカへ発ちます。旅先で偶然にもアメリカ先住民の銀の彫刻を発見します。そしてラコタ族と運命的な出会いを果たし、「イエローイーグル」の名を拝命すると、吾郎氏は1966年に東京に戻り、1972年に原宿にブティックを設立します。吾郎氏の唯一無二の世界観が流行に敏感な原宿の人々に受け入れられるまで時間はかかりませんでした。「フェザー」と呼ばれるゴローズの羽のモチーフはブランドのアイコンとも言え、彼の後に続く多くのインディアンジュエリーアーティストの模範的な存在でもありました。
今日、ゴローズには50年の歴史をもつ老舗ブランドであり、上質な素材と職人技で生み出されるジュエリーは決して安くはありません。そしてゴローズの店舗は全世界で1つしかありません。ファンは日本中、世界中から原宿の店舗を目指して押し寄せ、何時間も根気強く入店を待ちます。ショップには、吾郎氏のジュエリーやバッグ、財布などがあります。ゴローズというブランドは、創業者が亡くなってからほぼ10年近く経つ現在でも活気にあふれています。ゴローズの精神は吾郎氏の家族やゴローズを愛するスタッフに脈々と受け継がれています。
ゴローズのネックレス
芸能人の愛好家も多いゴローズのネックレスですが、様々なモチーフがあり、人それぞれ“組み方”とよばれる様々なパターンの組み合わせを楽しみます。ここではとくにマストなアイテム達を紹介します。
フェザー
鷲の羽根をモチーフにしたものです。フェザーはイエローイーグルの名前を持つ吾郎氏にとって特別な存在です。もっとも基本的なアイテムといわれ、単体でもアイコニックな存在感を放ちます。
メディスン・ホイール
メディスン・ホイールは宇宙の摂理や大自然の循環を表した、いわばネイティブアメリカンの世界観を形にした輪です。チェーンの間につなげたりして絶妙な“遊び”を演出してくれます。
メタル
ファンの間で「タタキ」とも呼ばれるプレート上のモチーフです。太陽を象徴しており、単体でも組んでも映える万能な定番アイテムです。なおゴローズ店内でタタキと呼ぶのはご法度といわれております。
スプーン
ネイティブアメリカンの伝統では、銀の匙を新生児に持たせると、その子は生涯食べ物に困らないとされました。狩猟民族であるネイティブアメリカンにとって、豊富な食糧は豊かさの象徴でもありました。
グラス
マリファナの葉をモチーフにしたものです。こちらもアイコニックなモチーフなので、シンプルに単体でも、小さいグラスをちりばめた組み方もかわいいです。
イーグル
イエローイーグルこと吾郎氏のインカーネーションともいえる鷲のモチーフです。ファンの間でも神聖化されていて、入手も困難であると言われています。
まとめ
インディアンジュエリーにおいて、カリスマ的存在として知られるゴローズ。創業者高橋吾郎氏のネイティブアメリカンへのリスペクトと、クラフトマンシップが一体になった作品たちは、アートピースとしてだけでなく、精神的な次元でも非常に深いものがあります。そうした意味を理解して組み方をアレンジするのもまた一層面白味が増すことでしょう。