目次
カルティエ「ベニュワール」の歴史
まずは、「ベニュワール」がどのような歴史を歩んできたのか振り返ってみましょう。誕生から100年以上も経ちますが、一般に販売されたのは、約50年前となります。
マリア・パヴロヴナ公爵夫人に名付けられた
ベニュワールの原型は、1912年ごろに製作されました。プラチナ製の横長の楕円形が特徴で、ベゼルにはダイヤモンドがあしらわれていたようです。
一説によると、このモデルはロシアのマリア・パヴロヴナ侯爵夫人に非公式で贈られたもので、夫人が「ベニュワール」と命名したといわれています。ベニュワール(Baignoire)はフランス語で「バスタブ」にあたる言葉ですが、その時計の形状が「西洋式の浴槽」に似ていることから思いついたのでは、という逸話があります。
1950年代後半から現在に近いデザインに
ベニュワールが現在のデザインに近づいたのは、1950年代後半のことです。『オーバル サントレ』というモデル名で販売され、楕円形で縦長の「オーバル型ケース」、ローマン文字による視認性を重視した「インデックス」、細い棒状で先端は尖っている「バトン針」が採用されました。
そして1973年、このモデルは一般販売を開始したベニュワールに引き継がれることになります。派生モデルも次々と登場しており、壊れた時計から着想を得たクラッシュウォッチ、大きく縦に引き伸ばされたベニュワール アロンジェなどがあります。
2009年にモデルチェンジ
1973年以降、オーバル サントレのデザインを継承してきたベニュワールですが、2009年に刷新します。ケースがシャープですっきりとしたデザインに変更され、控えめに印刷されていたローマンインデックスは、大きくなりました。ダイヤ巻きモデルは、ダイヤモンドの大きさがグラデーションのようにメリハリがつき、より洗練された印象となりました。
2023年以降は、ふっくらと丸みを帯びたケースが特徴的な、小型の新モデルが続々と登場しています。
カルティエ「ベニュワール」の特徴
カルティエのシグネチャーウォッチであるベニュワールは、どのような特徴が女性人気へつながったのでしょうか。その秘密を探ってみましょう。
優雅なオーバル型のデザイン
湾曲したオーバル型のケースは、曲線が手首に沿うように描かれており、美しさを徹底的に追求したものとなっています。女性本来の気品さや優雅さが、この曲線美で表現されているのです。
まさに、女性のためにあるドレスウォッチと言えるでしょう。
18Kゴールド素材のみのハイエンドライン
カルティエの腕時計は、ファン拡大のためステンレスモデルを展開しているコレクションが多くあります。しかし、ベニュワールにはそれが一切ありません。75%以上の純金を使用した、18Kゴールド素材のみを採用しているのです。
リューズにはブルーサファイアやダイヤモンドが施されており、カルティエの中でも、ハイエンドラインだと認識されています。
文字盤がどの角度からも見やすい
サファイアクリスタル製のドーム型ガラスと、文字盤に大きく印刷されたローマンインデックスの組み合わせは、視認性を優れたものにしています。インデックスが放射状に配置されているため、どの角度からでも見やすいです。
この実用性の高さも、ベニュワールの美点と言えるでしょう。
カルティエ「ベニュワール」のサイズ展開
ベニュワールは、サイズが幅広く展開され、お気に入りのものが見つかりやすいです。今回はその中から、「ミニ」、「SM」、「LM」と「ベニュワール アロンジェ」をご紹介します。
ミニ ベニュワール
ベニュワールの最も小さなモデルで、ケースサイズはおよそ縦25.3mm×横幅20.79mmです。
旧型モデルは裏蓋のボタンを楊枝などの細い棒で押す方式だったため、ケースサイドにはリューズがありませんでした。追加されたのは、2009年からのモデルとなります。ムーブメントはクオーツ式が採用されており、日常生活における防水性も備えています。
フェミニンな印象も与えるそのサイズ感は、日本人女性に人気が高いといわれています。
ベニュワール SM
SMサイズは、ケースがおよそ縦31mm×横幅23mmのサイズ幅となっています。クオーツムーブメントや日常生活防水が備わっている点は、ミニモデルと共通です。存在感を感じられ、ジュエリーのような華やかさを楽しむことができるでしょう。
ベニュワールの中では、スタンダードなサイズと位置付けられています。
ベニュワール LM
ベニュワールの中では最も大きいサイズの腕時計で、ケースサイズはおよそ縦44mm×横幅34mmです。手首にすっぽり覆うほどのサイズ感で、華やかな印象を与えます。機械式の手巻きムーブメントを搭載しており、裏蓋は中の機械を見ることができるシースルーバックが採用されています。
大きなサイズを好むファンからは支持を集めていますが、残念ながら、公式サイトに商品が掲載されていないようです(2025年2月現在)。購入したい場合は、中古サイトを確認してみましょう。
ベニュワール アロンジェ
アロンジェ(Allongée)は、フランス語で「細長い」という意味の通り、縦に引き延ばした楕円形が特徴的なモデルです。ケースサイズはおよそ縦47mm×横幅21.5mmとなっています。ベニュワール LMと同様に、手巻きムーブメントを採用しています。
公式サイトでは、日本国内での販売は受け付けていないようですが、アメリカなど、海外の一部には在庫があるようです(2025年2月現在)。
カルティエ「ベニュワール」の定価・価格帯
ベニュワールは、カルティエの中でもハイエンドラインとされているため、価格帯は他のモデルよりも高い傾向にあります。
2025年2月現在、公式サイトを確認すると、全体的におよそ120万円から300万円ほどの商品が多い印象です。ただし、ダイヤモンドがあしらわれたモデルであれば約300万円から800万円程度、ホワイトゴールドとダイヤモンドを組み合わせたものは、1,600万円以上の高額定価となります。
安価で購入したい方は、中古市場をチェックしてみると良いでしょう。プレミア品でなければ、100万円以下の価格で販売されていることがあります。
カルティエ「ベニュワール」を愛用する芸能人
世界五大ジュエリーの1つと数えられるカルティエだけに、ベニュワールも世界的な人気があります。ここでは、主にメディアで活躍する芸能人たちが愛用しているモデルをご紹介します。
河野景子さん
フリーアナウンサーの河野景子さんは、バラエティ番組で18Kイエローゴールドのベニュワールを着用していました。型番の詳細は不明ですが、見た目が現行モデルにあるRef.WGBA0013に近いです。18Kイエローゴールドの光沢感が、華やかな印象を与えています。
ケースサイドにあるリューズが確認できなかったため、旧型モデルと思われます。
ユン・ウネさん
韓国出身の女優であるユン・ウネさんは、過去にRef.WB520028と思わしきベニュワールを着用していたようです。
ケースには18Kピンクゴールド、ベルトはトワル素材のストラップが採用されています。ベゼルはダイヤモンドで装飾されつつも柔らかいストラップの質感で、フェミニンさを強調したモデルです。
ユナさん
韓流アイドルのユナさんは、テレビドラマのプレスカンファレンスで着用していました。型番は不明ですが、ダイヤモンドが埋め込まれたベゼル、そして、ストラップの素材がトワルに見えるため、Ref.WB520004と思われます。
2009年に発表されたクオーツ式時計で、リューズにあるダイヤモンドが印象的なモデルです。2025年2月現在は公式サイトに掲載されていないため、生産は終了しているようです。
エイミー・アダムスさん
アメリカの女優であるエイミー・アダムスさんは、Ref.W8000005と思われる腕時計を愛用しているようです。2009年にスイスのジュネーブで発表されました。
18Kピンクゴールドケースを採用しており、滑らかな曲線は非常にエレガンスです。アクセサリーとしての使用にもおすすめなモデルと言えます。
ララ・ストーンさん
オランダのファッションモデルであるララ・ストーンさんは、ファッション雑誌でベニュワールを身に着けていたようです。
小さく映り込んでいる写真しかないため判断が難しいですが、型番はRef.WB520008と思われます。このモデルは、18Kホワイトゴールドのケースを採用し、ベゼルにはダイヤモンド装飾されています。モデルらしく、一際、存在感のある腕時計です。
カトリーヌ・ドヌーヴさん
フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴさんは、1965年のカンヌ国際映画祭でベニュワールを着用していました。
白黒写真のため型番の特定は難しいですが、リューズのあるケースと黒いストラップが確認できるため、現行モデルのRef.WGBA0022に近いモデルであると考えられます。
ハイファ・ワハビさん
レバノンの歌手・モデルであるハイファ・ワハビさんは、Ref.WB520002のベニュワールを着用しているようです。18Kピンクゴールドのケースとベゼルに装飾されたダイヤモンドのコントラストが美しいです。
着用者の魅力を最大限に引き出す時計といえるでしょう。
ロミー・シュナイダーさん
ロミー・シュナイダーさんはオーストリア・ウィーン出身の女優で、ベニュワールの愛用者として有名です。
白黒写真が多いため正確な型番は不明ですが、ケース周りにはダイヤの装飾がなく、暗い色のストラップを確認できることから、Ref.WGBA0022のようなモデルと思われます。
アイシャ・ブハリさん
ムハンマド・ブハリ元大統領夫人のアイシャ・ブハリさんは、2015年にベニュワールを購入したことがSNSで紹介されました。詳細な情報は不明ですが、らせん状のような文字盤から「ベニュワール フォル Ref.WB520034」と思われます。
18カラットのダイヤモンドがちりばめられた機械式の手巻き時計で、他のモデルとは一線を画すデザイン性が魅力的です。
エラ・フィッツジェラルドさん
アメリカのジャズシンガーであるエラ・フィッツジェラルドさんには、「時計愛好家」としての顔があり、たくさんある時計コレクションの中に、ベニュワールが含まれていました。
現存する資料が白黒写真しか残されておらず、型番の特定が難しいですが、宝石の装飾がないベゼルとリューズ、そして黒いレザーストラップが確認できます。現行モデルのRef.WGBA0017に近いモデルと思われます。
廃盤となった「ベニュワール アロンジェ」は復刻された?
廃盤となっていた「ベニュワール アロンジェ」は、2019年ごろに復刻し、公式サイトなどで展開されていました。しかし、2025年2月現在、日本国内の公式サイトでは受け付けていないようです。ただ、海外の公式サイトでは、一部、アロンジェの在庫を確認することができます。
購入することも可能ですが、課税額や為替レートの影響で高額な金額になる恐れもあるため、再販されるのを待つのがよさそうです。
まとめ
カルティエのベニュワールは、優雅さとモダンさを兼ね備えたコレクションです。時代や国境を越えて愛されていたそのデザイン性は、100年以上経過した今でも著名人やセレブたちを虜にしています。ぜひ一度お手に取っていただき、洗練された『美』を肌で感じてみてください。