目次
バーバリーの歴史とブランドストーリー
1856年、バーバリーの歴史はイギリスのベイジングストークで始まります。創業者トーマス・バーバリー氏はリウマチを患い、医師からゴム製のレインコートを着用しないようにと勧告されます。これがバーバリーのアイコンであるコートが誕生するきっかけでした。
1880年、高い強度と防水性を備える生地ギャバジンを発明。この生地を採用したレインコートを、イギリス陸軍が第一次世界大戦中に着用。特に泥濘地での(トレンチ)塹壕戦においてその耐候性を発揮したため、「トレンチコート」と名付けられました。
1924年、白・黒・キャメルのスコティッシュタータンチェック「ノヴァ チェック」が登場します。英国女王エリザベス2世の公式サプライヤーに認定されました。
バーバリーチェックのトレンチコートにより、その人気は揺るぎないものでしたが、1990年代には革新不足からその輝きを失いつつありました。
クリストファー・ベイリーによるブランド再建
2001年、バーバリーはクリストファー・ベイリー氏によって窮地から脱却します。アーティスティック・ディレクションの責任者に就任したベイリー氏は、ブランドのアイデンティティを見事に再構築。ライブミュージックによるパフォーマンスなどで、ランウェイを斬新に演出。その模様をソーシャルメディアで展開しました。
2009年にはインターネット生中継、2011年にはTwitter(現 X)を活用した「Tweetwalk」を導入。5年後には「see-now, buy-now」のコンセプトを提案し、コレクションアイテムの即時注文プロセスを確立させます。
17年にわたる奉仕の後ベイリー氏は退任。そして2018年に後任としてリカルド・ティッシ氏が登場し、バーバリーは新たな時代を迎えました。
リカルド・ティッシによるエシカルモード
クリエイティブ・オフィサーに就任したリカルド・ティッシ氏は、前任者ベイリー氏と同様にブランドのアイデンティティを根本的に見直します。
最初のショーでは動物の毛皮の使用をやめ、売れ残った製品を破棄しないことを宣言。デジタル分野ではInstagramを通じて新しいビジュアル・アイデンティティを発表し、サスティナビリティへの取り組みを強化しています。
ティッシ氏の革新には、常にブランドのルーツが念頭に置かれていました。2019年春には創業者であるバーバリー氏に敬意を表し、「TB」のイニシャルをデザイン化したモノグラムコレクションを発表。
ゴシックをエレガントに表現できるデザイナーであったティッシ氏は、その手腕を2023年の春夏コレクションで遺憾なく発揮し、有終の美を飾りました。
ダニエル・リーの切り開く、バーバリーの新章
2022年9月、英国人デザイナーのダニエル・リー氏がクリエイティブ・オフィサーに就任します。リー氏はフィービー・ファイロ時代のセリーヌで活躍し、ボッデガ・ヴェネタのイメージ刷新など、37歳にして数々の実績を残しているデザイナーです。
2023年2月のロンドンファッションウィークで発表された、リー氏によるバーバリーでのファーストルックはトレンチコートでした。
ブリティッシュジョークを彷彿させるアヒルの柄や、バーバリーチェックを斜めに配したビビッドなモチーフ、そして、誇張されたアクセサリー使いや、鮮やかなブルーを象徴的に配した色使いなど、より若々しさを感じるスタイリングが印象的です。
ブランドの伝統的とルーツに忠実であるとともに、新たなテーマカラー、新たな客層へのアプローチとなりました。
日本でのバーバリーの展開
日本のバーバリーは、本国イギリスとは異なる物語が広がっています。同じ名前でも、その足跡はまったく異なるもの。では日本でのバーバリーの歩みを探ってみましょう。
中年層~シニア向けブランドとして根付いていた
日本でのバーバリーは、中高年やシニア向けのファッションブランドとして認知されていました。バーバリーの日本展開は約100年前にさかのぼり、丸善がレインコートを初めて輸入したことから始まります。
その約50年後に三陽商会が、日本人に合うサイズ感のバーバリーコートを輸入開始しましたが、あまり流行しませんでした。なぜなら、バーバリーはイギリスの格式高いブランドで、そのスタイルは堅苦しく、価格も手の届きにくいものだったからです。
「BLUE LABEL」の誕生で若者に大流行
バーバリーのイメージが変わったのは1990年代です。若者層へのアプローチを図り、日本オリジナルの「BLUE LABEL」を展開。安室奈美恵さんが着用し、急速に知名度と人気を獲得。当時バーバリーチェックのマフラーはトレンドのアイコンとなりました。
その後、「BLACK LABEL」をスタート。女子高生から若い世代の男女にとって、バーバリーはステータスとなりました。日本でのバーバリーは、本国イギリスとは違った独自の進化を遂げているのです。
バーバリーのライン展開と年齢層
英国発祥のバーバリーは、ルイ・ヴィトンやエルメスといったハイブランドと比べると、クラシカルで紳士淑女のイメージでしょう。そこで注意したいポイントがあります。実は複数のライン展開があり、それによってマッチする年齢層やトレンドが異なります。
BURBERRY LONDON(バーバリー ロンドン)
バーバリー ロンドンは、バーバリー本社が展開するブランドです。トラディショナルでベーシックなデザインが主流なので、30~40代の余裕がある層から好まれています。
イギリスで製造されたものは大きめのサイズで、三陽商会製造は小さめのサイズであることが特徴です。素材や品質に若干の違いがありますが、日本人に合ったサイズ感を重視するなら三陽商会製造がおすすめでしょう。
BURBERRY PRORSUM(バーバリー プローサム)
バーバリー プローサムは、バーバリーの中でも最高級のラインです。素材とデザインに徹底的なこだわりが込められています。近年ブランド名が「バーバリー ランウェイ」に変更されています。
10~20代の若い層に向けてストリートテイストにリニューアルされました。伝統的なバーバリーチェック柄とともに、新鮮味のある新ロゴを取り入れたデザイン。そしてカジュアルなTシャツやスニーカーなどのアイテムが増えたことで、高価格帯でありながら若者たちに支持されるようになりました。
BURBERRY BLACK LABEL(バーバリー ブラックレーベル)
2015年にバーバリー ブラックレーベルはライセンス契約を終了し、「ブラックレーベル クレストブリッジ」として独立。現在は三陽商会のブランドです。バーバリーの名称は外れましたが、ブリティッシュテイストやチェック柄は健在です。
20~30代のメンズをターゲットにしたブランドとして、変わらず高い人気があります。価格も本家バーバリーよりリーズナブルであり、特に10代の若い層から支持されています。逆に40代以降の層にはやや安っぽく感じられるかもしれません。
BURBERRY BLUE LABEL(バーバリー ブルーレーベル)
バーバリー ブルーレーベルもライセンス契約が終了し、新たに三陽商会の独自ブランド「ブルーレーベル クレストブリッジ」として独立。ブリティッシュテイストにキュートやフェミニンを取り入れたデザインです。
以前のブルーレーベルは大人の女性向けのスタイリッシュなテイストでしたが、ブルーレーベル・クレストブリッジに変わってからは可愛らしい系統に変化。しかし、シックで落ち着いたデザインのアイテムも充実しており、10~30代前半の年齢層を中心にマッチするでしょう。
既存のバーバリーのイメージを脱却し人気になった3つの理由
近年、バーバリーが急速に人気を博している理由は3つあります。実は2018年以降、ブランドイメージが一新されたことに起因します。その変化は若い世代に注目され、急速な人気上昇に繋がりました。
➀元GIVENCHYデザイナーが就任したこと
リカルド・ティッシ氏の就任が、バーバリーの急激な変革のキーポイントです。ティッシ氏はジバンシーでのデザイナー時代に、ラグジュアリーファッションにストリートの要素を取り入れ、世界的な成功を収めました。
2018年にバーバリーのデザイナーに就任し、クラシカルなイメージから脱却。若者を中心にラグジュアリーストリートの新たなスタイルを提示し、ブランドを急成長させました。ストリート要素と高級感の融合が、バーバリーの人気に大きく貢献したのです。
➁セレブや有名人が着用したこと
ラグジュアリーストリートファッションへの進化により、世界的なファッショニスタや海外セレブが積極的にバーバリーを愛用しています。ヴィクトリア・ベッカム、世界的シンガーのリアーナ、ラッパーのタイガやガンナなど。
彼らのスタイリングによりバーバリーは新たなスタイルへの期待と注目を集め、若い世代を中心にファッション愛好者から圧倒的な支持を受けます。そしてバーバリーの人気が急上昇することとなりました。
➂ブランドロゴを変更したこと
バーバリーの注目度が急上昇した背後には、ブランドロゴとモノグラムの大胆な変更があります。2018年からホースマークがなくなり、書体も変更。新たに導入されたTBモノグラムは、ブランドの新しいアイコンとなります。
最新のアイテムは、ブランドロゴやモノグラムを大胆に前面に押し出し、今やファッショントレンドの一翼を担う「ロゴ」重視のデザインです。これはシュプリームやバレンシアガと肩を並べ、世界中のトレンド感覚を持つファッショニスタたちに支持されています。
インポート製品とライセンス製品の違い
バーバリー製品はインポートとライセンスで異なる特徴を持っています。インポート製品は本家イギリスで生産され、高品質なものです。一方、ライセンス製品は他社が製造し、一部品質が異なっていました。
プライスラインの違い
バーバリーの製品にはインポート製品とライセンス製品の2つの異なるプライスラインがありました。インポート製品は高級で手の届かないものでしたが、ライセンス製品は手ごろな価格で若年層に親しまれました。
三陽商会のライセンス製品は、縫製や品質が高く特に評価されていたようです。衣類やバッグだけでなく、ハンカチや寝具、下着まで展開され、日本国内でのみ販売されていました。2022年にはライセンス製品の展開は終了しています。
タグの色の違い
ライセンス品は日本人向けに製造され、体型にフィットしやすいです。一方、インポート品は英国のバーバリーインターナショナルが企画製造し、フォーマルからカジュアルまで広くカバーしています。タグの色を見れば違いは一目で判断できます。
ベージュ系であればインポート品(バーバリーインターナショナル)、ネイビーならライセンス品(三陽商会)であると分かります。
バーバリーの人気アイテム5選
進化したバーバリーの人気アイテムをご紹介します。特に人気のあるアイテムを、5つのカテゴリーに厳選しました。ぜひチェックしてみてください。
キャップ&ハット
バーバリーの進化で顕著なのは、デザインのストリート感でしょう。ストリートアイテムといえばキャップ&ハット。これまでのイメージとは一線を画すカジュアルなアイテムです。ラグジュアリーとストリートが見事に融合し、特にロゴやモノグラム柄が際立つデザインがトレンド。
男女を問わず愛用され、その人気は衰えません。現代のアクセサリートレンドを牽引する、洗練されたキャップやハットに注目です。
ボディバッグ
バーバリーのボディバッグは、小さなサイズながら大きなファッションのインパクトを放っています。ヴィンテージチェックやロゴディテールのデザインが施され、これまでのバーバリーにはなかった新たな魅力です。
現代のキャッシュレス傾向に合わせ、コンパクトで軽量なサイズがファッショントレンド。持ち運びが楽でありながら、スタイリッシュで洗練されたデザインが多くの人を引きつけています。
グラフィックのアパレル
バーバリーではグラフィティプリントを採用したアパレルが注目を浴びています。シャツやシェルジャケットなど、グラフィティデザインに溢れたアイテムでファッションシーンを席巻しています。
不動の定番であるバーバリーチェックとグラフィティの融合は、他のブランドでは表現できない魅力でしょう。2018年の発表から根強い人気を誇り、アイコンであるトレンチコートも、グラフィティのアクセントでストリートスタイルに進化を果たしました。
ロング ケンジントン ヘリテージ トレンチコート
ロング ケンジントン ヘリテージ トレンチコートは、バーバリーの伝統的なトレンチコートの一つです。軍用コートとして誕生したバックボーンから、防水性、軽量性、通気性に優れた、まさにパーフェクトなアウターでしょう。
しっかりとした作りでありながら軽やかで動きやすく、着用時に漂うエレガントな気品が魅力です。定番のハニー(ベージュ)と、落ち着きのあるブラックも人気があります。憧れの名品としてワードローブに加えたいアイテムです。
バイフォールドウォレット
バイフォールドウォレットは二つ折り財布です。バーバリーの財布はトレンチコートやマフラーとともにメンズに広く愛されています。ブランドの象徴であるバーバリーチェックを用いたものから、好みを選ばないシンプルなデザインまで、幅広いラインナップが人気の理由でしょう。
もちろん機能性を兼ね備えているので使い勝手も抜群です。上品なカーフレザーや地球環境にやさしい素材を使用したサステナブルなモデルまで、実に幅広い選択肢が楽しめます。
まとめ
英国老舗ブランド、バーバリーの歴史をご紹介しました。アイコニックなチェック柄で老若男女から愛されているバーバリー。新たなクリエイターによって更なる進化を続けるバーバリーにこれからも注目です。