180年以上の歴史を持つ老舗
ジャガー・ルクルトの歴史は1833年、アントワーヌ・ルクルトが家族の小さな納屋を時計製造工房に変え、時計を製造したことに始まります。彼は優れた知性と豊かな想像力を持ち、高精度な時計の製造に情熱を注ぎました。精度に魅了されたアントワーヌは、非常に高度な機械を生産するために、微細な部品の開発に必要なツールを作り出すことに専念しました。
ジャガー・ルクルトはジュ―山脈に拠点を構えた最初の時計製造工房(マニュファクチュール)です。当時、ほとんどの時計職人は自宅で働いて、それぞれが独自の専門分野を持ち、独自のノウハウを守っていました。一方ジャガー・ルクルトの工房では、時計製造のためのあらゆる技術がひとつの屋根の下に結集しました。これは時計業界を革新したアプローチでした。
1888年、このマニュファクチュアはスイス・ヴォー州の工業統計によっても証明されるように、地域最大の企業となりました。この当時にして既に480人の女性と男性職人を雇用していました。精度の高いジャガー・ルクルトのムーヴメントは、カルティエやエルメスをはじめとする数々の高級時計にも搭載されてきました。そして1903年、フランス人のエドモン・ジャガーとスイス人のジャック=ダヴィッド・ルクルトが出会います。この二人の出会いはフランスのスタイルとスイスの技術を結びつけることとなり、ジャガー・ルクルトのスタイルの根底にあるものです。
レベルソ:アクティヴなスポーツのための時計
そんなジャガー・ルクルトを代表するコレクションが、「レベルソ」です。現在、シックで洗練された時計として知られるレベルソ、元はといえば本格的なスポーツウォッチとして構想されました。もっと言えばそれはポロ競技のための時計でした。第一次世界大戦後、イギリス上流階級の間ではポロが流行していました。ポロは馬に乗ってボールをゴールに打ち込むゲームで、ハンマーの打撃、落馬、衝突など、想像以上に激しいスポーツです。腕時計が普及し始めていた時代、ポロ競技によって腕時計のガラスや文字盤が壊れてしまうことは想像に難くありません。
ジャック・ダヴィッド・ルクルトは1931年に、このポロ競技の激しさに耐えられる時計を顧客から要望されます。こうして誕生したのが、レベルソです。そのケースは180度回転して、ハードなケースバックを表にできるようになっています。この画期的な特徴がこの腕時計の名前になりました。Reversoとは、ラテン語で「反転する」という意味です。この言葉は英語のReverseの語源にもなっているのでなんとなく想像しやすい言葉でもあります。
その“背中”は多くを語る
1930年代初頭にレベルソ最初のモデルが英領インドでポロプレーヤーによってテストされ、その堅牢性が確認されました。それ以降、レベルソは商業的にも社会的にも高く評価されてきました。レベルソの大きな魅力の一つは、ケースバックを様々にカスタマイズできることです。エナメル装飾や彫刻を施したり、自分や愛する人のイニシャル、様々なメッセージ、ときには金庫の暗証番号(⁉)などを刻むこともできるので、その“背中”には無限の可能性があります。
意外と知られていないのが、レベルソは、今までに最も多く贈られた「婚約時計」でもあります。しかし、第二次世界大戦の終結は、レベルソが完全に忘れ去られる時代の幕開けとなりました。時計のトレンドは丸型に移行し、時計愛好家たちはロレックスのサブマリーナーやオメガのスピードマスターなど、新世代の時計をフォローし始めました。
このレベルソの不遇の時代は、ジョルジョ・コルヴォというイタリア人の無謀ともいえる賭けによって終わりを迎えます。イタリアにおけるジャガー・ルクルトのディストリビューターであったジョルジョは、当時ジャガー・ルクルトが在庫していたレベルソを全て(約200個)買い取り、レベルソをイタリアの富裕層に向けて改めて訴求しました。
彼の手腕によりレベルソの人気は再燃し、これ以降現在に至るまでジャガー・ルクルトを代表する存在になりました。さらに1990年代にはレベルソは次のステージに進みました。新しい複雑機能(GMT、ミニッツリピーター、カレンダー、ムーンフェイズ等)の導入や、新しいムーブメント(クォーツ、自動巻き、トゥールビヨン)の登場がその証です。
ユニークで多機能的なデザイン
レベルソがこれほどまでに年を重ね、今日でも色褪せぬスタイルを保ち続けているのは、間違いなくそのユニークなデザインのおかげです。この時計は1931年の登場以来、オリジナルのデザインを大きく変えることなく、アールデコのデザインコードに忠実です。ケースは長方形で、縦と横の比率が黄金比によって定められています。モデルによっては、エンボスや装飾模様が施された文字盤にローマ数字やアラビア数字が表示されています。
レベルソが現在の成功を収めているもう一つの理由は、あらゆるシーンに適応できるということです。レベルソはカジュアルなスタイルにも合わせられますし、改まった場でのエレガントな装いにもふさわしく、クラシックな気品を腕元に添えてくれます。控えめでありながらも視認性が高く、小さなサイズにもかかわらず存在感があります。コンパクトながらも使い勝手が良く、一生モノの腕時計として活躍してくれます。
まとめ
レベルソは特別な時計であり、これからも唯一無二な腕時計であり続けます。そのデザイン、歴史は時計界においても色褪せることなき輝きを放っています。それは90年以上にわたり進化し続け、様々な顧客のニーズに応えるために新しいバリエーションが誕生してきました。ヴィンテージ時計愛好家、ラグジュアリーウォッチファン、ジュエリーラヴァー、そして世界を飛び回り活動するビジネスパーソンまで、多くの人々がレベルソの魅力に惹かれています。ジャガールクルトのレベルソは、あらゆる腕時計の中でも際立つ存在です。