よくある時計の故障の原因
腕時計は、常に肌に密着しているため、どうしても汗や皮脂、汚れが付きやすくなります。そのまま放置してしまうと、臭いや錆、傷みの原因にもなってしまうため、注意が必要です。ステンレスバンドや金メッキバンドだとしても、全く錆びないということはありません。また、夏場などで、汗をたくさんかいた時には、腕時計に付着している汗や錆が表面に出ることで、かぶれたり、衣服の袖を汚したりする可能性もあります。
さらに、汚れが細部にたまることで、時計自体の動きが悪くなったり、バンドが切れやすくなったりするため、大切な時計を長持ちさせたいと思うのであれば、毎日のお手入れは必須といえます。毎日磨けば、汚れが定着することもありませんから、優しくふき取るだけで汚れを除去できるでしょう。
時計の保管場所について
腕時計を長持ちさせるために、もう一つ重要なポイントとなるのが「保管場所」です。正しい保管場所を選ぶことがトラブル防止につながります。どういった場所を避けなければいけないのか?ズバリ“磁気”から遠ざけることです。何故、磁気に近づけてはいけないのでしょうか?
例えば、機械式時計の場合ムーブメントの部品が金属でできているため、磁気を近づけると部品そのものが磁気を帯びてしまいます。また、クォーツ時計では、モーター部分に磁石が使われています。そのため、強い磁気を受けることで、回転が早くなったり、遅れたり、止まったりします。その結果、時刻のズレが生じてしまうというわけです。
携帯電話やスマートフォン、ノートパソコンなどは生活や仕事の必需品ですが、腕時計にとってはあまり良い環境とはいえません。保管する際には磁気から遠ざけることが大切です。距離が2倍になると、磁気の強さは1/4となるため、5cm離すだけでも時計への影響は小さくなります。以下のような電化製品の近くで保管しないようにしましょう。
・携帯電話
・スマートフォン
・バッグ・家具などの磁石の留め金
・磁気ネックレス
・電磁調理器
・ノートパソコン
・ACアダプター
・テレビのスピーカー
どの時計にもいえることですが、落下を防ぐためにも、安定した場所に保存することをお勧めします。湿気や日光、水分から時計を守ってくれる腕時計専用の収納ボックスを利用すると、なおいいでしょう。
オーバーホールについて
オーバーホールは時計内部のムーブメント(機械)をパーツ毎に分解し、洗浄、摩耗パーツの交換、組立、注油、精度調整と一通りの作業を行います。オーバーホールを行う目安としては、時計の種類や年代、防水性能の違いなどで若干異なってきますが、機械式時計では「おおよそ3年前後」の期間毎と言われています。オーバーホールとメンテナンスは、どちらも時計の修理に関する用語ですが、大きな違いを簡単に説明すると、時計本体を部品単位まで分解するか・しないかの差です。
オーバーホールは、時計のムーブメントを分解して部品の一つ一つまで洗浄して状態を点検して、不良個所があれば修理し、パーツが摩耗や劣化をしていれば交換します。その後ムーブメントを再び組み立て、軸受け部分に注油し精度を調整します。“新品時の状態に近づける”ために徹底的に点検整備を行うので、完了までに時間と費用が掛かり、専門的な知識や技術が必要な作業となります。
「メンテナンス」は、時計を動作させるために行う日常的な軽作業です。分解して徹底的に整備する「オーバーホール」と違って、電池交換や不良箇所のみの作業や部分調整で完了するため、時間も短く費用も安く完了する軽作業です。そのため、長期間整備をしていない時計が止まるなど不具合がある場合は、「メンテナンス」ではなく、時計を分解して整備する「オーバーホール」が必要となります。
また、クォーツ時計にもオーバーホールは必要です。電気で動くクォーツ時計はオーバーホールとは無縁に思えますが、歯車を使用している時計はほぼすべてオーバーホールが必要です。歯車の軸や可動部に対して、潤滑の役割を果たす油が注されています。この油は時計が動き、歯車が回転することで微量ながら時間の経過とともに減少していきます。この状態を放っておくと制度不良や故障の原因となります。
自宅で手入れする際に必要な物
<用意するモノ>
・全体を拭き上げるためのクロス
・細部の汚れを除去する爪楊枝
・こびりついた固着汚れを落とす歯ブラシ
①乾いた清潔なクロスを使い、親指の腹で押すような感じでケースを拭きます。力を込める必要はなく、全体をもれなく拭きましょう。
②ケースと同じく、指の腹を使いクロスでガラス面を吹いていきます。力を込める必要はなく、サッと拭き上げるのがポイントです。
③皮脂汚れや汗が付きやすい裏蓋はクロスで全体を拭いた後、爪楊枝でケースの隙間やブレスレットの付け根などの汚れをかき出しましょう。木製の爪楊枝を使えば適度に柔らかいため時計に傷をつけるリスクもありません。
④ブレスレットのコマの隙間は、最も汚れがたまりやすい箇所です。爪楊枝や歯ブラシも使ってしっかり汚れを落としましょう。
⑤クロスを使ってブレスレット全体を拭き上げます。腕時計を保持するのに手で直に触ると、そこにも皮脂汚れが付いてしまうため、クロスを使って時計を包み込むように吹き取るのがおすすめです。
⑥汚れが固着してしまった場合は歯ブラシを使ってこすり洗いをしてみましょう。
まとめ
時計のメンテナンスについて解説させていただきました。普段のお手入れは、柔らかい布で皮脂汚れや埃などを落とすようにしましょう。ベルトやリューズの隙間などの細かい部分の汚れには、歯ブラシや爪楊枝がおすすめです。また普段の使用時は、磁気や水に気をつけて使うようにしましょう。また時計も車検と同じく、定期的なメンテナンスが必要です。オーバーホールは内部の機械を分解し点検・洗浄するメンテナンスで、3~5年に一度専門店で受けることをおすすめします。