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舞踏会で活躍したエナメルレザー
エナメルレザーとはもともとは鞣(なめ)した革に、油や溶かした樹脂を塗り重ねて天然皮革の上にエナメル質の層をつくったもので、現在はウレタン樹脂でエナメルコーティングを施すことが多いです。エナメルレザーは19世紀に登場したと言われています。エナメルレザーの開発者が特許を取得したため、「特許を取得したレザー」という意味の「パテントレザー(Patent leather)とも呼ばれます。」エナメルレザーは靴墨がいらないという理由で、舞踏会用の靴として重宝されました。というのも靴墨を塗った靴は、ドレスの裾を汚してしまう恐れがあったためです。エナメルレザーの靴を履くことは、ジェントルマンの粋な心遣いであったのですね。
エナメルレザーの特徴
メリット
光沢が長続きする
樹脂加工によって光沢感が長期的に保たれます。
独特の質感
革のしなやかさとエナメルの吸い付くような肌触りはエナメルレザーに特有のものです。財布やハンドバッグなど、手で持つようなものの場合、滑りにくいので便利なポイントかもしれません。
比較的手入れの手間がかからない
エナメルレザーの靴が靴墨いらずとして舞踏会でもてはやされたように、普通のレザーよりも手入れが簡単で扱いやすいです。
デメリット
高温多湿と乾燥に弱い
エナメルレザーは高温や湿気、乾燥に弱いです。高温では樹脂が溶け出し、べたつきや変質を興す可能性があります。また、湿気によって革がカビてしまうことがしばしばありますが、エナメルレザーの場合、皮革面とエナメル層の間にカビが生えてしまうと、取り除くことが困難です。また、極度の乾燥もエナメルレザーにはひび割れの原因となるため、注意が必要です。高温多湿を避け、乾燥時には保湿などのケアをしてあげることが長持ちの秘訣です。なお、エナメルは一見撥水力があるように見えますが、ベースは革なので、縫い目やひび・傷から雨などの水分が侵入すると、劣化やカビの原因になります。
修復ができない
傷やひび割れがおこってしまっても修復ができない、あるいはきわめて困難であるため高額となってしまいます。またひび割れの場合はひびから汚れが入ったり、カビが発生しやすくなる要因になります。
エナメルレザーのお手入れ方法
用意するもの
・クリーニングクロス:汚れとり用/保湿剤用/仕上げ用(着古したTシャツの切れ端などでも可)
・エナメルレザー用汚れ落とし(汚れがひどい場合)
・エナメルレザー用保湿剤
汚れ落とし
まず、埃、汚れ、べたつきを落とします。エナメルレザーはつるっとした表面のため、比較的汚れが付きにくく落としやすい性質のレザーなので、乾いたクロスで拭いてあげるだけで埃などは落とせます。しかし、油分を含んでいる指紋やシミなど頑固な汚れは、エナメルレザー専用の汚れ落としで落としてあげるとよりきれいに落とせます。
艶だし・保湿
前述の通り、ひび割れはエナメルの大敵です。とくに乾燥する冬にはひび割れをおこしやすいので注意が必要です。時々保湿クリームでケアすることで、より長く愛用することができるでしょう。使用に伴うシワも、ひび割れにつながるので、なるべく伸ばしてあげて、シワになりがちな箇所にはしっかり保湿剤を塗布しましょう。保湿剤にはローションタイプ、クリームタイプ、スプレータイプなどがありますが、財布のような小さいものであれば無色のローションタイプが量も調節しやすく、伸びも良く使いやすいかもしれません。また、防水スプレーはくすみの原因になる恐れがあるためあまりお勧めできません。
エナメルレザー製財布の大定番
ルイ・ヴィトン ヴェルニ
ヴェルニは2000年代にルイ・ヴィトンをバッグのブランドからファッションブランドに押し上げた立役者、マーク・ジェイコブスが生み出した、ルイ・ヴィトンのエナメル製素材のことです。ヴェルニVerniはフランス語で「光沢のある、艶出しをした、マニキュアやニスを塗った」という意味です。エナメル素材に型押しされたモノグラムは、定番モノグラムとは一味違ったブリリアントな遊び心が光ります。
シャネル エナメルマトラッセ
シャネルの大定番といえるキルティング加工のマトラッセにも、エナメルバージョンがあります。マトラッセは、クチュールメゾンとして長い歴史をほこるシャネルの職人技を感じさせる完璧な格子模様を縫い上げた、シンプルながらも高い技術を要するモチーフです。しかもマトラッセはクッション状に起伏がでるためエナメルレザーの光沢感が際立ちます。
まとめ
エナメルレザーについて紹介しました。レザー素材にはない光沢感ながらレザー素材の特性も兼ね備えるユニークな素材で、使い勝手もいいです。あまりケアを必要としない素材ではありますが、時折手入れをしてあげると、より長く愛用することができます。ひび割れや高熱によるべたつきを起こす可能性があるので、高温多湿や乾燥には注意が必要です。